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無限のナイトメア  作者: 高月望
五日目―眠り姫の夢
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1-(4)


 お母さんの後に着いて二階に上がる。奥の部屋に通された。そこは雨宮さんの部屋だった。女の子らしくベッドカバーやカーテンはピンクで統一されたかわいらしい部屋だった。雨宮さんのイメージと違ったので僕と龍臣は物珍しそうににあたりを見渡す。まぁ、女の子の部屋に入るのが初めてだったということもあるが…

 そして見つけたのだ、奥のベッドに横たわる雨宮さんを。その姿は本当に眠っているだけで何ら変わらなかった。ただ少し顔色が悪いかなということだけで。

「目を覚まさないんです。お医者さんにも見せたんですけど、眠っているだけでどこもおかしいところはないとおっしゃって。私もどうしたらいいか…」

 僕たちの後ろから、お母さんが悲しそうに言う。その声には覇気がない。当り前だろう、自分の娘が目を覚まさないのだから。どんな親でも心配でたまらないはずだ。

 僕たちは雨宮さんに近づいていった。ベッドのそばに行き、しゃがみこむ。そして雨宮さんの顔を覗き込む。スースーという鼻息だけが聞こえてくる。本当に眠っているだけのようだ。

 夢野さんはというと、険しい顔で雨宮さんの顔を見つめている。

「どうかした?」

 僕は夢野さんにだけ聞こえるような声で、彼女に問いかけた。

「まずい、これはまずい」

「まずいって、まさか」

「えぇ、あまり時間がないわ。このままだと…」

「じゃあ、どうするの?」

「そうね、作戦を実行するわ」

「作戦?」

 僕たちはあまりこそこそしゃべるのも失礼だと思い、ここで会話を止めた。そして、夢野さんはさりげなく、ごく自然に雨宮さんの枕元から何かを取ったのを僕は見た。

「ありがとうございました」

 こうして僕たちは、お母さんにお礼を言い。雨宮さんの家を後にしたのだった。

 その帰り道、僕はどうしても気になっていることを夢野さんに聞いた。

「さっき、雨宮さんの枕元から何か取ったけど何だったの?」

 すると、夢野さんは立ち止まり、こちらを振る向いた。そして、目の前に腕を突き出してきた。よく見ると、その手には一本の長い髪の毛が握られていた。

「髪の毛?」

「そうよ、雨宮さんの髪の毛よ。きれいな髪ね」

「そんなものどうするの?」

「作戦に必要なものよ」

「さっきから作戦、作戦って言っているけど何なの?」

 もったいぶらすかのように、すぐには夢野さんも答えない。まるで今から重大なことを言うかのような間である。そして、夢野さんは僕を見据えて、言った。

「雨宮さんの夢の中に入るわ。彼女は今とても危険な状態だから、早く救出しないといけない。そのためには、彼女が囚われているだろう夢の中に入る必要がある。そこで必要になって来るのが、この雨宮さんの髪の毛よ。特定の人物の夢の中に入るには、道しるべ的なものが必要なの。その道しるべには体の一部が、一番ふさわしいのよ。そこで手に入りやすいのは髪の毛ってわけ。分かったかしら?」

「よ、よくわかったよ」

 夢野さんは話し終えると、また前を向いて歩きだした。僕もそれに黙ってついていく。

「俺も行っていい?雨宮さんの夢の中に」

 龍臣が夢野さんに聞く。夢野さんは振り返り、龍臣を見つめる。まるで値踏みするかのごとく。



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