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学校に着き、自分の席に座る。早く学校に来てしまったということもあり、夢野さんはまだ来ていない。僕は少しがっかりしたが、仕方がないので待つことにした。夢野さんと話がしたいということしかその時は考えてなかった。待っていると続々とクラスメイトが教室に入ってくる。
そこでやっと夢野さんが来た。僕は、彼女に話を聞きたくて後ろを振り向こうとした時、そこでやっと気付くこととなる。教室にいる生徒の数が、昨日に比べて極端に少ないことを。三分の二いるかいないかという具合である。これだけ欠席するのは、冬のインフルエンザぐらいだろう。僕は驚き、自分の席に再び座る。すると、女子生徒が数人話をしているのが聞こえてきた。
「ねぇ、今日休み多くない?」
「多いね。何か知ってる?風邪かな?風邪っていう季節じゃないけどね」
「ねぇねぇ、この休みってただの風邪とかじゃないんだって」
「どういうこと?」
「さっきちらっと聞いたんだけど、目が覚めないんだって、休んでいる人たち」
「はぁ?どういうこと?」
「起こしに行っても全然起きなくて、体ゆすっても起きないんだって。医者に見せたけど原因不明なんだってさ」
「なにそれ、怖くない?」
ガタン!
いっせいにクラス内の視線が集まる。僕は驚き、立ち上がってしまった。みんな何事かと僕を見つめる。
「すみません」
僕は謝り、倒れたイスを直して席に座る。
今の話はどういうことだ。目覚めない人が出ていると言ったが、それは悪夢のせいなのだろうか。僕はわけもわからず混乱する。その時、夢野さんが言った言葉を思い出す。『エネルギーを奪われて死んでしまう』まさしく、それが目覚めなくなっている人の状態なのだろうか。エネルギーを奪われすぎてしまったのか…そして思い出す、保健室で眠る目覚めない女子生徒たちを…
すると硬い表情で龍臣がやってきた。
「想像以上にやばいぞ…」
その言葉がすべてを物語っているようだった。確かにやばいとしか言いようがない状況ではある。
さまざまなことを思案するが、答えは出るはずもない。僕は夢野さんが気になり、そちらのほうに目を向ける。夢野さんの表情はいつもより硬いような気がする。この状況をどう思っているのだろうか。そんな夢野さんはさっきから隣の川島君のほうをじっと見つめている。僕はその視線をいぶかしむが、分かるはずもなかった。
そして、今更ながら僕は気付いてしまった、雨宮さんも休んでいることに……