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自分の部屋。
いつもと変わらない部屋で、僕は寝る準備をしていた。
あの後、保健室から出た後は、みんなで帰ることになった。帰り道は、僕と龍臣がバカ話に花を咲かせているのを、夢野さんが黙って見ているという感じだった。夢野さんは、僕が夢管理委員会に入ったのが相当不満だったらしく、口を聞いてはくれなかった。龍臣もお手上げといった状態だった。そんな帰り道だったのだ。
ベッドを整えながら僕はそれを思い出し、深くため息をつく。整え終えると僕は、カバンから夢野先生にもらったお守りを取り出した。大事にそのお守りを持ち、ベッドのわきに移動する。そしてベッドに腰掛け、枕の下にお守りを入れた。
「これでよし!」
さぁ、これで準備万端だ。僕は電気を消し、ベッドの中に滑り込んだ。ひんやりとしたシーツの温度が皮膚から伝わってくる。僕は軽く身震いをした。
そして、寝ようと目をつぶる。
しかし……
寝られない!
夢野先生を信用してないわけではない。このお守りがあれば悪夢を見なくて済むのだろう。それでもあの夢のことが気になって寝付けない。それほどあの悪夢は、人に恐怖心を与えるものなのだ。ましてや人のエネルギーを吸うと聞けばなおさらだろう。あの夢は見たくない。
僕は枕の下に置いたお守りを手に取り、ぎゅっと握りしめる。それと同じようにまぶたもぎゅっと閉じた。
「…ひつじが一匹、ひつじが二匹…」
僕は寝付けない自分に言い聞かせるようにひつじを数え始めた。しかし、このひつじを数えて寝るという方法は、案外数えることに集中してしまい眠れなくなるものである。だが、僕は疲れていたのだろうか、ひつじを十匹数えたところで、意識を失ったのだった。
もちろんその日は、悪夢を見ることはなかった。あのお守りが効いたのだろう。夢野先生には感謝である。そして僕は、清々しい朝を迎えることができたのだった。