プロローグ
「……見つけた、見つけたぞ」
その声はまるで地の底から聞こえてくるような低く、重い声だった。だが、その声は歓喜に満ち溢れていた。それは長年探していたものが、見つかったかのように。
しかし、私は声の主を見つけることができないでいた。
何故なら、ここは闇しかない真っ暗な空間だったからだ。
私は、そんな闇の中を、あたかも暗い海の中に浮かんでいるような、そんなふわふわした感覚で漂っていた。
「見つけた、見つけたぞ」
「…誰だ……?」
私は声の主に問いかけた。
「私に名はない。しかし、お前にとって救世主となりえるだろう」
「…どういうことだ?」
「どうもこうもない、言葉のままだ。ふふふふふふふ」
私は次第に恐怖を抱き始めた。さっきまでのふわふわした気持ちが、だんだんと覚め始めているのを感じる。この声を聞いてはいけないと体が、心が、反応している。しかし、声の主はそんな私に気付いているのかいないのか、さっきよりもまして低く、重い声で、しかも優しく問いかける。
――お前の願いをかなえてやろう…と。
相手の姿は見えないのに、それは耳元でささやかれたような感覚だった。心が揺れているのを感じる。まるでそれは悪魔のささやきだ。声の主が何者なのかもわからないというのに、私はその魅力的な提案に惹かれている。それほど私は欲しているのだろう、自分の願いがかなえられることを。
「さぁ、望め!望めばその願いかなえよう」
「……はい…」