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烙印の寵児:性を喰らう髑髏と白銀の少年  作者: TANAKA


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1話

 〜とある日記よりの抜粋〜


「美しさは、猛毒だった」


 両親に売られ、狂気の彫り師によって背中に『性を喰らう髑髏』を刻まれた少年、リオン。

 彼が歩く後に残るのは、欲望を吸い尽くされ、抜け殻となった男たちの山。

 少女エナとの出会いが、復讐と捕食に染まったリオンの運命を狂わせていく。

 襲い来る帝国軍、謎の追跡者、そして背中で囁く髑髏の意思。

 これは、地獄の底で「人間」であることを捨てかけた少年が、ひとつの愛によって己を取り戻すまでの、残酷で美しい再生の記録。


 ○●○


 脱走から数日後の宿屋。


 リオンが鏡で自分の背中を見る。


「……また、食べてしまったんだね」


 背中の髑髏は、満足げに赤く光っている。リオンを狙う男たちの欲望が強ければ強いほど、髑髏の力は増し、リオンの身体はより艶やかに、毒々しく美しくなっていく。


『クカカカカッ……。嘆くな、小僧。俺が喰らわねば、お前は今頃あいつらの腹の中だ。……さあ、次の『皿』が来たぞ。軍幹部共の執着は、さぞかし美味だろうな』


 宿の扉が蹴破られる。剣を抜いた追っ手の男たちの目に宿る「熱」を見て、リオンは吐き気を堪えながら、静かに服の肩を落とした。


 宿屋から逃げ延びたリオンは、郊外のあばら屋を見つけた。しばらくはしのげるとそのあばら屋に入ると先客が居た。


「「誰」」


 リオンと先客はほぼ同時に言う。先客は女性だった。その女性の首にも奴隷の首輪が嵌められていた。


「もしかして?リオン……なの?」


 女性がリオンだと気付いた。

 リオンはドキッとした。自分自身がお尋ね者だと知っているからだ。

 しかし、リオンは女性の顔に見覚えがあった。


「えっ?あっ?ユマ姉さん!?」

「リオン!!」

「ユマ姉さん!!」


 2人は再会を喜び抱き合った。


「ユマ姉さんはどうしてこんな所に?」

「うん。私、奴隷商から逃げて来たのよ。誰だってあんな場所には居たくはないでしょう⋯⋯」


 リオンも頷いた。


 奴隷商の奴隷部屋の環境は最悪だった。

 リオンの場合は短時間しか居なかったが、このユマは違っていたのだ。


「ハッ!ね、姉さん!ボクから離れて!!」


 リオンは逃げるようにユマから距離を置いた。そうしないと、骸骨がエマの性を喰らってしまう。


「えっ」

『クカカカカッ⋯⋯惜しかったな。もう少しでこの女の性を喰らう事が出来たというのにな。クカカカカッ……クカカ……クカカカカ……』


 あばら屋に骸骨の笑い声が不気味に響いた。


「リ、リオン?リオンの他に誰かが居るの?」


 ユマはおそるおそるリオンに訊ねた。


「居るよ」


 リオンは着ていた服を脱ぎ捨てて、背中をユマに見せた。

 骸骨の入れ墨が笑い、目が赤く光っていた。

 ユマは息を呑んだ。ユマは以前にリオンの背中の骸骨の入れ墨を見たことがあった。その時は確かにただの骸骨の入れ墨だったが、今見ているのは入れ墨の筈の骸骨がリオンの背中で動いていた。


「こ、コレは……」

「意思を持つ骸骨だよ。しかも、人間の性を喰うんだ。喰われた人間はただ生きているだけの廃人と成るんだ。ユマ姉さん。もうボクに近付かない方が良い!!この骸骨に喰われてしまうから⋯⋯⋯ボクはもう行く。ユマ姉さん、元気でさようなら」


 リオンは脱ぎ捨てた服を拾い、あばら屋から出て行こうとしたが、ユマが止めた。


「リオン!待って!私はあなたを本当の弟だと思っているわ。あなたはこの入れ墨があった為に他の奴隷仲間からも疎外されていたのを知っているわ。私はあなたを庇うことしか出来なかったわ」


 ユマは寂しそうに言った。リオンが奴隷商の館にやって来た日に、全員が知る事だった。少女のような容姿に華奢な身体をしているのにその背中には毒々しく禍々しい骸骨の入れ墨が入っていた。そのギャプが相まって、同じ奴隷の筈なのに疎外を受ける羽目になったのだった。


「それで十分だったよユマ姉さん。ボクはこの入れ墨があった為に両親からも粗末に扱われて来た。もう慣れているよ」


 リオンは感情無く言った。もう自分はユマとは関わらず、ユマには平穏無事に生きてもらいたいとそう願って。

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