2学期と運動会
九月のはじめ。
夏休みの間は会えない日もあったけど、教室で「おはよう」と言い合った瞬間、ふたりの距離はすぐに戻った。
そして、あっという間に運動会の練習が始まった。
咲は赤組、陽翔は白組。
立場的にはライバルなのに、練習の合間にこっそり話す時間が増えていた。
「リレー、どの順番?」
「アンカーだよ」
「えっ、すご! じゃあ絶対負けられないじゃん」
「咲こそ玉入れがんばれよ。」
「もちろん!」
咲が笑うたび、陽翔は胸の奥が軽くなるような感覚を覚えた。
そして運動会当日。
朝から快晴で、青空の旗が揺れている。
午前のプログラムが終わり、昼休み。
咲が家族のテントから手を振って陽翔を呼んだ。
「これ、一緒に食べよ!」
差し出されたのは、咲の家のおにぎり。
陽翔は一瞬ためらったけど、結局受け取った。
「……うまい」
「でしょ? うちの母ちゃんの自信作」
ただそれだけの会話なのに、心の中があたたかくなる。
午後のリレー。
最後の直線で陽翔は全力で走った。
ゴールテープを切った瞬間、白組の歓声が響く。
その声の中で、真っ先に目に入ったのは、ゴール横で手を振っている咲の姿だった。
「陽翔、すっごかった!」
「ありがとう。でも、咲も玉入れ、勝ってたじゃん」
「ふふ、見てたんだ」
ふたりは少し照れくさく笑い合った。
閉会式が終わって夕方。
片づけの合間、咲がぽつりと言った。
「……やっぱり、陽翔ってかっこいいね」
陽翔は顔を赤くして、言葉に詰まった。
でも、心の中では、この言葉を、一生忘れたくないと思っていた。




