6/20
夏休みの約束
「陽翔、夏休みになったらさ……水族館、行かない?」
終業式の日の帰り道、咲が突然そう言った。
告白してから数日。ふたりは前よりも近くなったけど、まだ少し照れくさい距離感だった。
「いいよ。行こう」
咲はぱっと笑って、「じゃあ来週ね!」と手を振った。
夏の朝。駅前で待ち合わせたふたりは、いつもと違う私服姿に、なんだか落ち着かない。
「陽翔、そのTシャツ似合うね」
「え、あ、ありがとう…咲も、なんか大人っぽい」
「えっ!? ほんと?」
咲は嬉しそうにスカートの裾をちょっとつまんだ。
水族館の中は涼しくて、青い光に包まれていた。
クラゲがふわふわと漂い、ペンギンが元気に泳ぎ回っている。
「見て見て! あのイルカ、ジャンプしそう!」
「ほんとだ!」
イルカショーのとき、咲が興奮して陽翔の腕をぐいっと引っ張った。
その距離に、陽翔の耳まで赤くなる。
お昼は水族館のカフェで。
ソーダフロートを半分こしながら、咲がぽつりと言った。
「なんか…デートみたいだね」
「……デートだよ。俺は、そう思ってる」
咲は少しだけ目を丸くして、それからにっこり笑った。
「じゃあ、これからも、たくさんデートしよ」
帰り道。駅に向かう途中、咲が立ち止まった。
「ねえ、夏祭りも、一緒に行かない?」
「うん、もちろん」
真夏の青空の下、ふたりの約束はまたひとつ増えた。




