放課後のすれちがい
次の週の委員会で、咲と陽翔は図書カードづくりの担当になった。
図書室の隅っこに並んで座って、おすすめカードの見本を書いていく。
「ねえ、陽翔、これ見て! 『ねこ探偵ミケ』めっちゃ面白かったから紹介カードにしてみた!」
「へえ、ミケって猫が事件解決するやつだっけ? いいじゃん」
いつも通りのやり取り。だけど――その日の陽翔は、どこか元気がなかった。
咲は気づいていた。でも、どう声をかけたらいいか、わからなかった。
次の日のお昼休み。咲が陽翔を探して教室を出ようとしたとき、後ろから友達の美月が声をかけた。
「咲~、一緒に給食食べよ! あ、そういえばさ、陽翔くん…」
「え、なに?」
「さっき、図書室で女の子と話してたよ~。あれ、隣のクラスの綾乃ちゃんだったかも」
「……そっか」
咲は笑って「べつにいいけど?」と強がった。でも、胸の奥が少しチクッとした。
なんでだろ。
陽翔がほかの女の子と話してただけで、こんなにモヤモヤするなんて。
放課後。委員会の時間。
咲はいつもより少しだけ口数が少なかった。陽翔も、どこか落ち着かない様子で。
「……咲。なんか怒ってる?」
「べつに」
「本当?」
「うん、本当に」
でも、咲はうまく笑えなかった。
陽翔も、何も言えなくなって、静かな時間だけが流れていった。
その日の帰り道は、ひとりだった。
となりにいたはずのランドセルの音も、今日は聞こえない。
(どうしてこんなに気になるんだろう)
咲は思った。
委員会が終わったら、陽翔と話す時間は減っちゃうかもしれない。
それが、少しこわかった。
でも、本当の気持ちは、まだ言えないままだった。




