別れと未来への希望
いろいろあり、卒業式前日。
夕暮れの教室そこには。
黒板には「ありがとう 6年2組」の大きな文字。
机の上には花や色紙が並んでいた。
陽翔は窓際に立ちながら、校庭をじっと見ていた。
(明日でここともお別れか……)
その横に、咲がそっと並んで立つ。
「なんか、実感わかないね」
「うん……でも、明日になったらきっと泣くんだろうな」
咲は少しだけ笑ってから、真剣な顔になる。
「……陽翔、中学が違っても、ちゃんと会いに来てくれる?」
「当たり前だろ。修学旅行のときに約束したじゃん」
「……うん。信じてるからね」
夕陽がふたりの影を長く伸ばした。
それはまるで、離れても繋がり続ける絆のようだった。
卒業式当日の朝。
体育館には、保護者や先生たち、そして在校生がいっぱいいた。
紅白の幕に囲まれた会場は、いつもより静かに見えた。
緊張で胸が苦しい中、陽翔はふと観客席を見た。
そこには、目をうるませながら笑っている咲の母親の姿があった。
「……なんか、泣きそう」
隣に立つ咲がつぶやく。
「泣くなよ、まだ始まったばっかりだぞ」
陽翔も声を震わせながら笑った。
卒業生代表として、陽翔と咲はそれぞれ旅立ちの言葉を一文ずつ声を合わせて読み上げることになっていた。
「六年間、たくさんの思い出をありがとうございました!」
「私たちは、中学生になっても夢に向かって歩き続けます!」
声が重なり、体育館に響き渡る。
その瞬間、ふたりの目が合った。
涙をこらえながらも、お互いの笑顔を確認する。
それから数十分後、卒業式が終わった。
式が終わると、あちこちで記念写真やお別れのハグが始まった。
校庭の桜はまだ咲き始めたばかり。
冷たい風が吹く中、陽翔と咲は校門の近くで立ち止まった。
「……これで、小学生最後だね」
咲の声は少し震えていた。
陽翔はランドセルから、小さな袋を取り出す。
「これ……最後のプレゼント。お守り」
袋の中には、小さな木彫りの星型チャーム。
咲は驚いて目を見開いた。
「これ……手作り?」
「うん。咲が元気でいられるように、作ったんだ」
咲は目に涙を浮かべながら、ぎゅっとチャームを握りしめた。
「……ありがとう。宝物にするね」
校門を出る前、ふたりは向き合った。
「中学が違っても、ちゃんと会いに行く」
陽翔の声は力強かった。
「私も……絶対に陽翔を忘れない」
咲も涙を拭いながら答える。
「じゃあ、また春休みにここで会おう」
「うん、約束だよ」
ふたりは小指を絡めて、ぎゅっと結んだ。
その指先は、春の風よりも温かかった。
そして、桜のつぼみが膨らみ始める校庭を、ふたりはそれぞれの道へ歩き出す。
振り返れば、まだ幼かった2人の2年間の思い出がいっぱいに広がっていた。
――でも、未来はまだ続いていく。
陽翔と咲の小さな恋は、卒業しても消えないまま、
新しい物語へと静かに踏み出していった。
おわり。




