いよいよ、6年生!
ホワイトデーのお返しから数日後。
陽翔と咲は、近所の公園で会うことが増えた。
まだ肌寒い風の中、ブランコに揺られながら話す。
「ねえ、もうすぐ6年生だね」
「うん。6年生か……なんかドキドキする」
咲は少し考えてから言った。
「クラス、また一緒だといいな」
「絶対一緒になるよ」
陽翔が笑ってそう言うと、咲は安心したようにうなずいた。
そして四月の始業式。
桜が満開の校庭で、6年生としての新しいクラスが発表された。
「やった! 陽翔、私たち同じクラスだよ!」
咲が嬉しそうに手を振る。
陽翔もホッと胸をなでおろした。
(これでまた、隣にいられる……)
そして始業式の次の日、委員会決めが始まった。
6年生になると、委員会活動も本格的になる。
「放送委員にしようかな」
咲がそう言うと、陽翔もすぐに手を挙げた。
「じゃあ、俺も放送委員にする!」
「え、マネしないでよ!」
「いや、咲と一緒がいいから」
からかわれた咲は顔を赤くして下を向いた。
でも、その口元は笑っていた。
ランドセルを並べながら帰る途中、咲が小さな声で言った。
「6年生って、最後の一年じゃん。だから、いっぱい思い出作りたいな」
陽翔は空を見上げた。
桜の花びらがひらひらと舞い降りる。
「じゃあ、全部一緒に作ろう。最後まで」
咲はうなずき、花びらをそっと手のひらで受け止めた。
その手は、春の光より、あたたかく感じられた。