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君へのお返しのホワイトデー

三月に入ってすぐ、陽翔は母に頼んでお菓子作りを教わった。

「チョコのお返しなら、クッキーがいいんじゃない?」

「うん。でも、普通のじゃなくて……特別にしたいんだ」


陽翔は夜遅くまでラッピングを悩み、最後に小さな手紙を添えた。

『いつもありがとう。これからもずっと、よろしく』


書き終えた瞬間、胸が熱くなった。


ホワイトデー当日の昼休み。


教室では男の子たちが「これ返すー!」とにぎやかにお菓子を渡していた。

けれど陽翔は、なかなか動けなかった。


(みんなの前じゃ、恥ずかしい……やっぱり二人きりで渡したい)


放課後。帰り支度をする咲に声をかけた。

「咲、ちょっと放課後公園によって帰ろう」


夕暮れの公園。ベンチに腰かけると、陽翔はカバンから小さな包みを取り出した。


「……咲これ、ホワイトデーのお返し。」


咲は目を丸くして、両手で受け取った。

「わ、かわいいラッピング! 開けてもいい?」


中には手作りのクッキーと、小さな手紙。

咲は手紙を読んで、そっと笑った。


「……陽翔、ありがとう。すっごく嬉しい」


陽翔の耳は真っ赤だった。

「バレンタインのとき、本命って言ってくれたから……俺も、返したかったんだ」


咲は少し照れながら、でも真っ直ぐに言った。

「じゃあ、これでおあいこだね」


ふたりは顔を見合わせて笑った。

まだ幼い恋だけど、手紙とクッキーには、確かな気持ちがこめられていた。


公園を出るころ、風が少しやわらかくなっていた。

桜のつぼみがふくらみ始めていて、季節がまた変わるのを知らせていた。


(もうすぐ六年生か……でも、咲と一緒なら大丈夫だ)

陽翔はそう思いながら、咲と並んで歩き出した。

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