初詣でのお祈り
クリスマスから数日がたち、街は正月を迎えようとしていた。
陽翔が家のポストを開けると、そこには咲からの手紙があった。
《元日の夕方、一緒に神社に行きませんか?》
陽翔はすぐに返事の手紙を書いた。
《行く!楽しみにしてる。》
そして元日の夕方。
神社の参道は、屋台の匂いと人の声でにぎわっていた。
白い息を吐きながら待っていた陽翔の前に、咲が現れた。
「おまたせ! ……あけましておめでとう、陽翔」
「おめでとう。今年もよろしく」
ふたりは少し照れくさそうに笑い合い、並んで鳥居をくぐった。
拝殿の前で鈴を鳴らし、手を合わせる。
目を閉じながら、陽翔は心の中で祈った。
(今年も、咲と一緒にいられますように)
横を見ると、咲も真剣な顔で祈っている。
(陽翔と、これからも仲良くできますように)と。
「ねえ、陽翔、一緒におみくじ引こう!」
箱を振って棒を出し、番号を渡すと、二人とも同じく「小吉」だった。
「おそろいじゃん!」
「なんか、縁起いいな」
おみくじには“恋愛:焦らずゆっくり進めよ”と書いてあった。
読んだ瞬間、ふたりは顔を見合わせて赤くなった。
帰り道、境内の端にあるベンチに腰かけて、甘酒を分け合った。
手が冷たくて、湯気がとても温かい。
「今年もいっぱい思い出つくろうね」
咲がそう言ったとき、陽翔は小さくうなずいた。
「うん。来年も、その次も」
ふたりの声が、冬の夜空に吸い込まれていった。
頭上には、まだ新しい一年の星が静かに瞬いていた。