2人のクリスマス
文化祭のあと、陽翔と咲はすっかり「クラスの特別な二人」になっていた。
冷やかされることもあったけど、ふたりとも笑って受け流すようになった。
そして、十二月。
校庭の木々に白い息が重なるころ、咲が言った。
「ねえ陽翔、クリスマスの日、空いてる?」
「え? うん、空いてるけど」
「じゃあ、一緒に見に行こうよ。イルミネーション」
咲の声はさらっとしていたけど、耳の先がほんのり赤かった。
約束の日。
陽翔は緊張しながら駅前で待っていた。
そこに、赤いマフラーを巻いた咲が現れる。
「お待たせ!」
「……似合ってる、そのマフラー」
「ありがとう。お母さんに借りたんだ」
街はクリスマスの飾りでいっぱいだった。
電飾がきらめき、屋台からはホットチョコレートの甘い匂いが漂う。
ふたりは手袋をしたまま、肩を寄せ合って歩いた。
広場の大きなツリーの前で、咲が小さな袋を差し出した。
「はい、これ。クリスマスプレゼント」
「え、俺に?」
袋の中には、シンプルなボールペン。
「勉強のとき使って。陽翔、宿題でよくペンなくすでしょ」
「……ありがとう。大事にする」
陽翔は照れながら、自分のリュックから小さな箱を取り出した。
「俺からも。……これ」
咲が開けると、中には小さな星型のキーホルダー。
「ランドセルにつけてほしくて」
咲は顔を輝かせて、キーホルダーをぎゅっと握った。
「めっちゃかわいい! ありがとう、陽翔」
ツリーの灯りが瞬く中、咲がぽつりと言った。
「来年も、再来年も、こうして一緒にクリスマス過ごしたいな」
陽翔は、少し間を置いてから答えた。
「うん。俺もそう思う」
冬の夜空に、小さな星がひとつ流れていった。
ふたりの願いを、そっと連れていくように。