新たな行事の幕開け
運動会から数日。
教室では、もう次の行事、文化祭の話題でいっぱいだった。
五年生の出し物は「劇」と「展示」。クラスごとに劇をやることになり、配役を決める話し合いが始まった。
「王子様の役は男子から、姫様の役は女子から」
担任の川島先生が言うと、教室がざわついた。
「陽翔くんが王子様似合いそう!」
誰かがそう言った瞬間、クラスが「たしかにー!」と盛り上がった。
「え、俺!?」
「王子様顔だし!リレーでもかっこよかったし!」
陽翔は真っ赤になった。
そして、そのとなりで咲も真っ赤になっていた。
「……じゃあお姫様は咲ちゃんだ!」
「ええっ!?」
みんなが楽しそうに決めていく中、陽翔と咲は顔を見合わせ、同時にため息をついた。
放課後の練習が始まった。
「……なんであたしたちが、王子様とお姫様なんだろ」
「わかんない。でも、やるしかないよな」
劇の練習で、王子様役の陽翔がセリフを読む。
「――姫を、守ります」
その言葉に、咲は思わず笑ってしまった。
「陽翔、真顔で言うと、ちょっと照れる」
「お前が笑うから余計に照れるんだろ!」
ふたりは顔を見合わせて、同時に吹き出した。
けれど、帰り道、咲は胸の奥で思った。
(もし本当に、陽翔が王子様だったら……あたし、きっと嬉しいんだろうな)
秋の風が、少し冷たく頬をなでた。
運動会のときよりも強く、咲の気持ちは膨らんでいくのを感じていた。