配信
プロローグの続き。
「エリ(恵里、槍持ち):ドローンカメラおっけー?」
「ミオ(実音、ナイフ持ち):おっけー!もう回してるよー!接触まであと…一分くらい?」
「ヒナ(日向、戦斧持ち):了解!あーテステス、怪異が来たから緊急で回してるよー!今回は獣一匹と蠱毒持ち虫一匹!」
…余裕そうだな、って思った?これ、探索者活動の映像記録の提供が義務化されているから、この配信も必要なことなんだよね。
あっ、探索者ってのは私たちみたいに怪異に立ち向かう人たちのことね。怪異の巣潰しの様子から命名されたらしい。
『蠱毒持ち!?』『自己強化系統か他者弱化系統かで対処法変わるから面倒なやつ』
「くろのす:って思うじゃん?」
『初心者:What?』『あっ見えない子だ』
どういう訳か、カメラ越しだと私が見える人と見えない人が居るらしい。霊感とかそういうのが関わっているんじゃないか、っていうのが今の私たちの持論。
「蠱毒って毒でも呪いでもあるから、解毒と解呪を両方やっちゃえば解除できるんだよ。一つずつ解いても問題ないけど、両方同時に出来るに越したことは無いから、うちでは対蠱毒キットを用意してるよ」
『引退した元ベテラン支援役:普通それできないんよ』『すごい学者:それ学会に提出してくださいよ』『知識だけはある一般:ノーベルもんだよ』
後で提出しとくか。それはさておき、そろそろ…
「接触まで五…四…三…二…一…!」
「犬と大百足か…」
「蠱毒は自己強化系統…虫型用対蠱毒シリンダだね。各自、ヒト用対蠱毒シリンダ用意!」
『現役ベテラン:その片手で持てるけど割と大きめの機械、もしかして使い捨て…?』
「んなこた無い無い、回収すればまた使えるよ」
『現役ベテラン:良かった…ε-(´∀`*)ホッ』『カコ:※必ず回収できるとは言ってない』『あっ、くろのすちゃんの妹さんたちだ』『って事は加勢?』『ミライ:このコメントから約一分三十秒後に到着予定。削れる分だけ削って!』『その台詞かっこいい』
なんて言っている間に、対蠱毒シリンダがぶっ刺さる。相手の舐め腐った態度が変化する。
「くろのす:ヒナとミオは犬やって!私とエリで百足対処する」
「「「了解!」」」
さて、読者のために、この世界の大百足の特徴でも言っておこうかな。
蜘蛛とかの八足くらいまでだったら脚破壊がいい感じだけど、ここまで脚が多かったり、或いは植物系や触手系みたいに脚が何回も生えてくる奴らの場合、脚破壊は時間のムダ。
しかもこの百足、胴体を切断したところで頭の無い百足が増えてくだけ。頭を破壊すれば身体が全部動かなくなるから(仕組みは知らない。脳にテレパシー器官が存在するから、それで遠隔操作してると思う)、そこを集中砲火すればいい。ただあちらもそれは分かっているのか、頭を滅茶苦茶に動かすから当てづらい。加えて近づきすぎると普通に喰われる。
「…ってところだねぇ」
『助かる』『けどしれっと第四の壁越えないでもろて』『オマエモナー』『オマエラモナー』
「フェンリルはこないだも戦ったから大丈夫だけど…そっちどう?」
「殻固い。新しい槍作った方がいいかもしれない」
『今の槍も相当いいやつじゃなかったっけ…?』『くろのす謹製、時間固定ゆえに切れ味少々犠牲にして大抵のものを突ける』
無駄話をしていると、百足の顎がエリの方を向く。
「おっと。そうは問屋が…っやば
「卸さないよ。お待たせ」カコちゃん…!」
『きちゃあああああああ!!!』『かっこいー!』『なんか一瞬色反転して百足が苦しみ始めた?』『色反転はくろのすたちの異能発動の目印。異能一覧で使う異能見てこい』
「どうやら蠱毒の操り方を忘れたみたいだね」
「おー、丁度いい。一気に殺っちゃおう」
ドシュッ。エリが槍で突く。私が愛刀で相手の時を止める。
『必殺ムーヴだあああ!!』
最後に、カコの時空切断。ズドオオオオオン!と轟音が…鳴らずに、キンッ、と刃の音だけが鳴り響く。
それと同時に。
「ん、ミライちゃん、ようやく来たか」
「待たせてごめん。さっさと片すよ」
「了解!確定演出来るかな〜?」
『演出来い来い来い来い』
「脚潰しに集中するから、ミライちゃんトドメお願いしていい?」
「いーよー!」
「ありがと〜!」
『って言ってる間に脚が潰れてる定期』『早くね?』
「眉間に二発、両目に一発ずつ。お、演出行ける!」
「「『『『きたあああああ!!!!!』』』」」
瞬間、周囲の色彩が反転する。ドガンッ、ドガンッ、最初の二打撃で頭蓋を砕き、ドドチュンッ!即座に二発撃ち込む。
ずぅぅぅん…と、二つの巨体が地に伏せる。
「犬は血抜きして昼飯にしよ。百足は毒をカコが解呪の上使うはず」
「ん、ありがとね〜」
『ちょちょ、何故にシリンダを…?』 「このシリンダ、毒回収もしてくれてるんだ〜」
『便利だねぇ…一般に流す予定は?』
「もうちょい落ち着いたら」
『『『『『探索者一同:ぃやったぁぁぁ!!!!!』』』』』
「暫くはヒト用だけかな。怪異用はサイズの関係上、運用に癖があるから」
「じゃ、そろそろお開きかな。みんなおつかr」
ビーッ!ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「規格外!?凄い勢いでこっち来てる!接触まで三十秒!」
『おいおいまじかよ…』
『『『よぞら&さくら&ユキ:今すぐ行く。十秒あれば着く』』』
「ありがたや、だけどそれどころじゃないね…何が来るんだか」
なにがくるかな