音楽
「最後にアメリカで復興支援、これで海外の依頼は終わりだ」
「了解。ちぃも来るんだっけ?」
「あぁ」
「良かった。復興支援なら、あの子…ちぃが1番上手く立ち回れるだろうから」
「…あの子?」
「不老不死の悪い癖だよ」
「…そうか」
アメリカ合衆国。かなり有名な大都市…だった地区に、私たちは居る。
瓦礫が散乱し、怒号と同等の指示が飛び交う。はっきり言って、劣悪な環境だった。
「エリ:…酷い」
「くろのす:全員、精神切り詰めて働いてるからね。余裕なんて無いんだよ」
此処は、数日前に大規模怪異災害…通称スタンピードが発生した場所。
スタンピードとは、大量の怪異が襲ってくる現象のこと。被害総額は、少なくても数億ドルでは足りない。
「くろのす:…兆は行きそうだね、この様子だと」
「ヒナ:ニュースにもなってたね…」
因みに、自然発生的スタンピードは過去に一度しか起こっていない。殆どのスタンピードは狂人により引き起こされる。
そして、今回もその例に漏れない。
「ミオ:あの屑共…ちょっとでも甘く見たのが間違いだった。そろそろ本気で根絶やしにしないと」
今回の原因はミオを産んだ2人が始めたカルト宗教の残党だ。ネットに流れた映像では新時代とか何とか言ってたな。
兎に角、何かしらアクションを起こさないとどうにもならない。近くの比較的地位が高そうなおじさんに声を掛ける。
「くろのす:そこのおじさん、ここの現場監督みたいな人って居る?」
「おじさん:ああ、と言うか俺が現場監督だ。お前等が禍ヰ者で間違いないか?」
「くろのす:間違いないよ。優先的にやって欲しい事とかある?」
「現場監督:瓦礫撤去を手伝って欲しい。人員が増えれば多少士気も向上するだろう」
恐らく、本題は後者だろう。丁度いい。
「くろのす:了解。ちぃ(千晴のこと)、どうにかできそう?」
「ちぃ:発電機借りれれば何とかなる」
「現場監督:発電機なら余裕は少しあるが…何する気だ?」
「くろのす:即席の野外フェスだよ」
「群衆:おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」
今回のような荒れ方は今まで何度も見てきた。こういう時は大抵、娯楽が足りていない。
という訳で即席野外フェスを開催することにした。初手ジャズは割と成功だったと思う。その後もいくつか大衆受けのいい曲を披露していく。
――そして。
「シエル:歌いたいヤツ居るー?居るならステージに登れー!早い者勝ちー!」
「テラ:自前の楽器も大歓迎ぇ!下手でも全力で楽しく歌えば様になる!遠慮せず来ーい!」
聴衆をアーティストにする。知ってる歌は全員で歌い、知らない曲は手拍子と歓声で乗る。
会場全体が、ひとつになる。
こうすることで、みんなに溜まっていたストレスを、音楽という形で解消させることができる。
「おい!折角だし日本の歌を聞かせてくれ!」
「くろのす:んぇ、マジ?まぁいいけど」
取り敢えず知ってる歌を適当に選んで歌う。割とウケるもんなんだな。
結果、ライブは大成功。少なくとも雰囲気は改善した。
「くろのす:…ごめん、ちょっとやることあるから離脱する」
「シエル:ん、了解で〜す」
…皆から見えなくなったところで、瞬間移動を発動する。
そこには、巨大な樹があった。
「…さくら」
「ん、くろのす。悪いね、急に呼び出しちゃって…」
「全然大丈夫だよ。様態は?」
「良好。このまま日本に持ってく。ちょっと手伝って」
「ん」
再び瞬間移動。
「…よし、様態の変化無し。ありがとね、くろのす」
「どういたしまして。あとどれくらいで目覚めそう?」
「もうあと数日ってとこかな」
「そっか。私はそろそろ戻るよ」
「おけ」
「…待ちくたびれたよ、ウメ」
巨木に触れながら、さくらはそう呟いた。
CheckPoint#7:Musica




