雨
「珍しいね、ユキの天気予報が外れるの」
「…そうかもね。けど、いつか来ると思ってた」
「ユキ?」
「カコ、ちょっとだけ手伝って。ミライから末を借りるのをオススメしとく、立体機動カートリッジをフルで」
「…分かった」
…やっと、会える。
「時雨…あとどれくらい持つかな」
愛用しているアンカーショット――大抵の人はフックショットと呼ぶけど、オレは「フックと言うより錨じゃね?」って思ってる――が、だいぶボロくなっている。持ってあと5発もないだろう。
あ、オレって言ってるけど、性別は女だからな。この作品、女子率高いな…
「…最悪。オレは何もしてねーっつの」
よく分かんない理由から、ってか冤罪で、オレは闇組織から命を狙われてる。
バキッ。
「…あっ」
…あー。もう素材自体が寿命だったもんな。下手に触れない代物だから、修理もできないし。とりま破片は回収っと。
慣性はそのまま活かすとして、そっから先のムーヴは…
「…詰み、か」
パリィィィン!
慣性を活かしたら、建物のガラス窓に激突した。そのまま中に転がる。幸い無人だ、けど…動けない上に、そのうち彼奴等が来る。ここで死ぬのか。あーあ、呆気ない最期だな。
にしても色々思い出しちまうな。走馬灯ってやつか?
『…もし、どうにもならないことが起こったら、雨でも降らせて教えてよ』
…まさかコレを思い出すとはな。最後の賭けだ、やってみよう。
来なかったらオレの勝ち、もし来たなら―――
「―――テメェの勝ちだな、ユキ。来てくれてありがとよ」
「人で賭けるとかいい趣味してんね、アメ。にしても口悪くなったね」
「うっせ、しばくぞ」
「はいはい。こいつらどーにかするのでおっけ?」
「裏社会の人間だ、殺しても多分大丈夫」
「了解。…ようやく全力を出せる。カコ、お願い」
「了解」
カコと呼ばれた真っ黒が、銃で空を舞いナイフで敵を倒していく。ユキは、物理法則歪めてそうなガントレットとブーツで、文字通り脳天をかち割っていく。
蹂躙シーンを丁寧に描写したら忠告入れられそうだし、この辺で留めておこう。
にしても、ぶつりのほうそくがみだれる!をリアルで見ることになるとは…何あの立体機動。
「アメ、もっかい降らせて」
「お、久々に『落とす』か?」
「あのヘリ全部」
「了解」
直後、鳴り響くは―――
どおおおおおぉぉぉぉぉん!
―――クソデカい雷鳴。
「ヤバっ、カコ巻き込んじゃった」
「はぁ!?それ大丈夫なのかよ!?」
「あー、大丈夫。気絶はするけど、その間は―――」
「髪チリチリなんだけど…何があったの?大体のことは見てたけど」
「ごめん、雷落としたら巻き込んじゃった。アフロにはなってないから安心して、むしろいい感じのパーマになってるよ」
…誰?この灰色。
「…どちら様?」
「精神体のみ存在する、カコの妹だね。もう一人の妹とフュージョンしたり、今みたいに気絶したりすると出てくる。」
「なるほど…事情説明は要るか?」
「大丈夫。敵は全員殺った」
「助かる」
「ん。…っと、カコがそろそろ起きる。現状は説明しとくから」
「起きるの早えな…」
一瞬、妹さんがふらっとすると、灰色になっていた部分が…再び、でいいのかな?黒く染まり、意識がカコさんのソレになる。
「…雷落とせるんだ」
「無差別攻撃にはもってこいだよ」
「物騒だねぇ…そだ、アメって言ったっけ。何がどうなって今に至るの?」
「それはオレの過去を教えろってことでいいのか?この一件に関わる部分」
「うん」
「分かった。つっても彼奴等がピリピリしてた頃に事故ってアジトに突撃しちまったくらいだけどな」
「そりゃまた不運な事故だこと…」
「彼奴等が全員バカだから余計に苦労したさ…そうだ、今ちょっと行く当て無くてよ、少しの間でいいから泊まりたいんだが…いいか?」
「いいよ。何なら住む?」
「え、いいのか?いいならありがたく住むことにするが」
「どーぞ」
「ありがと」
裏話
物語の描写ではアメが雨を降らせて直ぐにユキとカコが来たように描写されていますが、実際その通りで、カコがユキにオーバークロックを掛けてます。
以下、微グロ注意
「カコ!もういいから!解除して!ここまで来れば十分間に合うから!これ以上続けたらカコが保たない!」
「大丈夫大丈夫、これくらい平気平k…ぉぇ…」
オーバークロックの負荷は秒数×人数×圧縮率で大体計算可能。今回掛かった時間は体感180秒、現実1.8秒(圧縮率100)。
1人・圧縮率100の場合、体感25秒で軽い頭痛、50秒で耳鳴り、75秒で目眩、100秒で吐き気、125秒までに今までの症状が中等症と言えるくらい悪化、150秒で耳からの出血、175秒で血涙。
体感3分もぶっ通しで続けていたなら、頭の割れるような痛みと周りの音が聞こえなくなるレベルの耳鳴り、平衡感覚の致命的な乱れ、筆舌に尽くし難い気持ち悪さ、及び後遺症として数時間、酷くて数日間の視力・聴力低下は免れられないだろう。
「…ほらね、平気だったでしょ?」
「それ平気って言わないから!」




