水の恋人
或森の奥の奥。
そこには、洞窟がある。
私は満月の夜、導かれるようにしてその洞窟に行く。
洞窟の中はひんやりしてて、
青と白銀がキラキラと揺らめく。
その洞窟を歩き進めると、ちいさな泉がある。
その泉は、とてもとても透明度が高くて綺麗で。
その泉に向かって私は「来たよ」と声をかける。
すると───
泉の中から、透明なものがふるふると伸び出てくる。
その透明なものはだんだん人の形になり、そして。
「…待ってたよ。僕の愛しい人」
その透明なものは、まるで王子さまのように美しい男になる。
その人は私の、愛する人。
水の精霊。
満月の夜だけ会える、愛しい人。
私はその人に抱きつき、涙を溢す。
その人は私を見てくすりと微笑むと──
私の唇に…透明な唇をあてる。
冷たいけど、微かな体温が唇に感じる……