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少年の体から切り離された魂は地面へと投げ出され、ぺたぺたと跳ねていたが、そこに一斉に無数のカラスが襲いかかり、それは霞となってその場から姿を消してしまう。魂が闇の世界へと運ばれたのだ。
「全部、思い出したわ。姉さん」
動かなくなり、瞳孔の開いた目を空へと向けている少年を見下ろしながら、キリエが言う。
「わたしがあいつを見た時は、ちょうど土砂降りの雨の中でね、本当に死にたがっていたようにしか見えなかったから、手を差し伸べたの。あいつはずっと優しかった。優しいまま、冷たかった。気づくと喉を絞められていて、わたしはそのまま消えてしまったわ」
キリエは光の粒子に包まれていた。
「姉さん?」
「キリエ、あなたの宿願が叶ったのよ」
宿願。それは死神にとって一番大切なものだと、姉から教わっていた。でもどんな宿願を持っているのか、姉は決して教えてくれなかった。
「わたしの宿願って」
「そう。あいつの魂を刈り取ること」
「そっか」
宿願を叶えた死神は、死神という役割から解放される。
「姉さん」
「さよなら、キリエ。また、新しいあなたを、生きなさい」
微笑む姉に抱きつこうとしたキリエは、その手が届く前に光の中に消えてしまった。
※
その夜、新しい生命が誕生した。
「名前は決まっているのよ。ね、あなた」
イザベラはその夫婦の様子を見守る。何故なら彼女の宿願は妹が大きくなり、愛した人と幸せになることだからだ。(了)