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第94話 隠れ聖女とギャレンの計画

 ギャレンの首元に剣を突き付けている状態だが、ギャレンは汗一つかかずこちらを見ている。私も人殺しになるつもりはない。ギャレンが大人しく投降してくれればそれで解決するのだが....


「ライラ、恩師の首元に剣を突き付けるとはどういう了見だ?俺はそんな教育をした覚えはないぞ」

「でしょうね。私も、敵の正体を知った時は嘘であってほしいと思いましたから」

「なら話は早いな。俺はお前の敵だ。その剣を退けろ」

「嫌です。ギャレン先生、大人しくとうこー」


 その瞬間、私の腹から激痛が伝わってくる。そのまま私は吹き飛ばされ、壁に激突した。


「かはっ....!」


 一瞬息が出来なくなる。唐突なことに驚いたのと、腹に喰らった攻撃の衝撃で呼吸を忘れそうになった。ギャレンの方を見ると、どうやら私は蹴り飛ばされたらしい。それもヤクザキック、女性の腹にだ。

 驚きのあまり何も言わずギャレンを見ると、彼は何も言わず腕をこちらに伸ばす。


「もう一度言うぞライラ。俺はお前の敵だ。そして....子供はおねんねの時間だ」


 パチンッと指を鳴らした瞬間、先ほど学園中に響いたものと同じ鐘の音が響き渡る。ゴォーン....ゴォーン....と鳴り響く鐘の音は私の意識を奪って....

 だが、私は無事だった。特に眠りにつく様子もなく、体は元気なまま。平然と立ち上がる私を見て、ギャレンは初めて怪訝な表情を見せる。


「なぜだ?なぜ眠りの魔法が効かない?」

「おいギャレン、恐らくそいつのせいだぞ」

「なるほど」


 ギャレンの背後にいた魔族がリムを指差して言う。その瞬間、ギャレンは全てを理解したようにリムに向かって手を伸ばした。

 マズイ....!そう思った瞬間私は飛び出し。伸びたギャレンの腕に向かって剣を振り下ろす。だが、ギャレンは”身体強化”と”硬化”を使った腕で攻撃をガードする。何とかギャレンとリムの間に割って入った私はそのままギャレンが腕を振り払うノックバックに合わせてリムと共に後方へと下がる。


「大丈夫?リム」

「ええ、大丈夫よ」


 リムの無事を確認して再び剣を構える。ギャレンは何もせずただこちらを見ているだけだった。


「さて....どう処理するか....」

「ケケケ!そんなの一択だろ?眠りは効かねぇ、俺達の正体もバレてる。なら後はもう....」

「殺すか。ったく....大人しく寝ててくれよ....」

「しょーがねぇんじゃねぇの?俺だってまさか精霊と契約して”強制昏倒”の魔法が破られるとは思ってなかったんだし」


 今、目の前の魔族は何て言った?”強制昏倒”の魔法?

 その瞬間、やはり私の憶測は間違ってなかったのだと証明された。『幽霊騒動』に『死者と会うことのできる夢の噂』、そしてラインハルト殿下が対応していたという『村の集団昏倒事件』....その全ての元凶が目の前にいる。


「やっぱり....全部あなた達の仕業だったんですね!」

「そうだ。それが分かったからここに来たんだろう?」

「何故....こんなことを....?!それに何故魔族と手を組んでいるんですか?!」


 事件の原因、そして敵の正体は分かった。だが肝心な動機がまったくもって分からない。彼らが何を企んでこの事件を起こしたのか、その理由だけが浮かんでこないのだ。

 私の問いにしばらく無言を貫いていたギャレンだったが、スッと体を半分引く。

 何かされるのではと警戒して剣を構えるが、なんとギャレンの奥には私達が探し求めていた人物が横たわっていた。


「イアン殿下....?!」

「惜しいなライラ。俺が起こした行動はもう1つある。それがイアン殿下の留学だ」

「その全部が....一体どう繋がるんですか?」

「なるほど、計画までは分からなかったのか。まぁ聞かずともお前の意識は無くなる。知ったところで、お前の行く末は変わらない」


 そう言って再び指をパチンッと鳴らす。再び眠りの攻撃か?!と身構えた瞬間....


「ライラ!危ない!!」


 横から上がったリムの声に反応して咄嗟に剣で左側を斬る。その瞬間、どこからか飛んできた槍を私の剣が弾き落としていた。

 一体どこから....?!と思うのも束の間、再び鳴った指の音と同時に今度は無数に展開された炎魔法が飛んでくる。私はすぐさま風魔法”風魔弾”で炎魔法を撃ち消した。

 そして再びパチンと指が鳴った瞬間、今度は私の頭上からパラパラと土くれが振り始める。そして嫌な予感がした瞬間、私の頭上のみ天井が崩れて無数の落石が私に降りかかってくる。私はそのまま落ちてくる落石に飲み込まれた。


「これでどうだ?」

「うーわ、ギャレンお前....教え子にも容赦ねぇな~」


 魔族がギャレンに言った瞬間、積もった落石に無数の斬撃が走る。そして落石がものすごい勢いで弾かれ、飛び出した私がギャレンに襲い掛かる。まさか私があの程度の攻撃で死ぬとでも思っていたのか?

 飛び出してきた私に驚いた様子のギャレンだったが、すぐさまメカガントレットをどこからか召喚し嵌める。ギャレンは私の剣をガントレットで受け止める。流れるように連撃を繰り出すが、ギャレンは冷静にその全てをガントレットで弾き返した。

 だがその程度で終わるわけがない。私の剣をギャレンが受け止めた瞬間、先ほどの落石地帯に仕掛けた置いた魔方陣を起動する。発射された無数の水の槍がギャレンを狙う。私ごと狙った攻撃だが、被弾直前に私は飛び退く。水の槍はまっすぐギャレンを狙うが、当たる直前に魔族が飛び込んで翼でガードする。


「ケケケ、危なかったなギャレン」

「ああ。助かったガミジン」


 私が飛び退いた瞬間落石地帯から次の攻撃が放たれる。


「”雷魔法の記憶(サンダーメモリー)”!!」


 リムが放った雷魔法がバチバチと音を立てて空中を奔る。雷魔法は魔族を避け、そしてそのままギャレンに襲い掛かった。さすがにギャレンもこれを受けるのはマズいと判断したのか、バックステップで回避する。

 お互いに2対2で睨みあっている状況。お互いに膠着状態で武器を構える。


「中々本気だな、今までこれほど熱いお前を俺は見たことが無い。というか、魔法を使えたのかお前」

「諸事情ありましてね。でも出し惜しみしていたら負けそうなので」

「いい判断だ。教育者として誇らしいよ」


 こうは言うが、ギャレンの目は全く笑っていない。明らかに余裕を残している状態でこちらを見ているギャレン。対して私は剣戟に魔法を使ってなお有効打を与えられていない。おまけに先ほどの連続攻撃....土の槍に炎魔法、そして急な落石とどんな手品を使ったのかも分からない。

 情報戦では圧倒的に後手だ。


「一体なぜこんなことを....?」

「なんだ、この状況でまだ聞きたいのか?」

「どうせやられるにしても、全部聞いてからの方がすっきりしますからね」


 もちろん負ける気なんてさらさらない。これは相手の隙を見つけるための情報戦を仕掛けているのであり、ついでに言うと時間稼ぎでもある。ここから相手を倒すために取れる最善の手段を模索するための時間稼ぎ。


「確かにな。どうせならもやもやしたままじゃなく、すっきり倒れて欲しいものだ。いいだろう。話してやる」


 ギャレンはゆっくりとイアン殿下に近づきベッドの空いている場所に寄りかかった。そして背後にある培養液に浸かった魔道人形の方を見た。


「俺の目的はこれだ。()()()()()()()()()()

「なっ?!生命の蘇生....?!でもその研究は人界間で禁止されているはず....!」

「勿論、ただの生命蘇生ではない。これは魔道人形にあの子の”記憶体”を定着させ、夢郷の中でのみ疑似的に生き返らせる蘇生方法。俺が長年の研究の末行きついた、生命蘇生の方法だ」


 魔道人形に記憶を定着させて蘇生する....?話だけでは何を言っているのか微塵も分からない。だが彼の言っていることが理解できるとしたら、『夢郷』と『記憶体』という単語。それは恐らく、あのお茶会の時に言っていた話に繋がる事実....

 ベアやメイルゥが言っていたカレンという少女霊の異質さ。彼女が完全なる死霊ではなく、”別の何か”であると彼女達は言っていた。そしてそれが、夢郷の中でのみ存在できる”記憶体”だというのなら納得できる。


「夢郷に存在する記憶の泡。ここから娘に関する記憶のみ抽出しイアン殿下に集結させる。彼の固有魔法は記憶のストックが無限になり、そして人や物の記憶を読みとることのできる能力だ。そして彼に集結させて完成したカレンの記憶体を、魔道人形に移して蘇生させる」

「でも、イアン殿下の固有魔法では記憶を読み込むことはできても取り出せないと本人は言っていました。そこはどうやって解決を?」

「そのためにあの神獣から学園夢郷の権限を奪ったんだろう。夢郷の中に存在する記憶の泡、あれはイアン殿下に読み込ませた記憶も例外ではない」


 つまり、カレン・アルドノトスという人間の記憶のみをイアン殿下に集結させ、記憶体となった彼女を学園夢郷の力で取り出し魔道人形に定着させる。言われてみれば理に適った方法である。

 だが、だとしたら1つ疑問が浮かぶ。私が昨夜出会った彼女(カレン)は一体....?


「そして俺は計画のパーツを揃えるために事件を起こした。レサル村の住人は俺やカレンのことをよく知っているからな。基本的な記憶情報を抜き取るならあの村の住人は外せない」

「それが集団昏倒事件の真相....」

「そして次に夢の噂。この学園に存在する夢郷を表面に引っ張り出すためにあえて噂を拡散させた。結果、神獣と妖精による学園夢郷が表面化してガミジンによる権限のダッシュが成功した」

「夢の噂の真相....!すべてはムーバを奪うための....!」

「1つ誤算だったのは幽霊騒ぎだ。夢郷を表面化し、意図せず様々な記憶を集めすぎたせいか無数の魂が構成されていった。結果、本物の死霊までも発生してしまう羽目になった。だがどういうわけかある日を境に全てが消えたんだ。実に都合がよかったよ」


 最後が幽霊騒ぎの真相....これで全てが判明した。自分の娘を蘇らせるそのためだけに、様々な人を巻き込み、あまつさえ亡くなっているベアやメイルゥ達の魂も弄んで....!

 この男は許してはならない。魔族と繋がっているとか、イアン殿下を誘拐したとかそんなことではない。この男は....人の”夢”と”魂”を弄んだのだ。人として、そしてこの世界に生きる聖女として、そんな蛮行を許してはならない。


「なるほど....ギャレン先生、あなたの計画はよくわかりました」

「なんだ?ようやくやる気になったか?」


 小さく笑うギャレンに対し、私は闘志が燃え上がる。剣を握る力を強くし、真っすぐに剣先をギャレンに向けた。


「あなたを止めます。私の全力を持って、人の記憶と魂を弄んだあなたを許さない!!」

「それはお前がまだ子供だから分からないだけだ。子を失う悲しみ、そしてどうにもならないこの世の理不尽を経験していない子供になど、俺は止められない」


 ガントレットをガチン!!と鳴らし、ギャレンも立ち上がった。

 睨みあう両者。明確な殺意の籠った空気が、この地下部屋を支配したのだった


当作品が面白い!気に入った!という方は評価やいいね、感想などお待ちしております。


次回更新日は12月12日AM 7:00の予定です。


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