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第13話 隠れ聖女と盗賊討伐

「はい、確かに受け取りました。王都のギルドにはいつも助かっています」

「いえ、取ったのは私ではなく彼なので」

「そうなんですか!ありがとうございます....!!」

「いや、俺は別に何もしてないが....」


 ローブのフードが壊れ、白銀の髪と金色の目が露わになったリオが遠慮する。確かに場所を教えたのは私だが、これは彼の依頼だ。私はその手助けをしたにすぎないため、途中の吸血鼠の討伐も含め彼の手柄と言えるだろう。


(それにしても....何度見ても似てますね。王族の血縁者でしょうか?)


 顔立ちは何度見ても第2王子であるレオンハルトにそっくりだ。だが、仮に本人なのだとしたら私の聖女紋が反応しないわけがない。

 無論、聖結晶を持っていないだけかもしれないが、そこまで深く考える必要もないだろう。


(それに....今はこの村の状況を考える方が優先です)


 パッと見ただけで分かる村の人口の少なさ。異様に見かけない若い女・子供たち、物資の少なさ、怪我人の多さ、入ってからぐるりと見回しただけで何となく状況は察した。

 目の前にいる村長も、セシリアの花束を手に感謝の言葉を述べているが、セシリアの花は()()()使()()()()()()()()()


「村長さん、少しお聞きしてもいいですか?」

「はい、何でしょうか?」

「村の後方....主にあの雑木林に近い方の家、見せてもらっても?」


 驚いたような表情で私を見る村長。やはり、私の勘は当たっていたようだった。


 案内されて見た家の中、外見は全くと言っていいほど普通だったが、仲は酷く荒れていた。何も丘が入った跡、荒らされた跡、所々ついている血....これはまさしく、争った跡だった。


「盗賊、ですか」

「!!....はい、いかにも」

「盗賊....?この村は王都から近いはずだ。そう簡単にことを起こせるような大物がいるとも思えないが?」

「どうでしょうね?その首謀者がどんな人かにもよるんじゃないでしょうか?」


 そう話していると、村長が土下座して頭を下げる。


「冒険者様!恥を忍んでお願いでございます!!我々村の民衆では、奴らに適うことは出来ません!報酬は倍額、いえ、それ以上出すことをお約束いたします!何卒....!!」


 頭を擦りつけた地面が若干濡れていることから、涙を流しているのだろう。これほど必死になってお願いされるということは、少なからずこの村長も被害を受けたということだ。

 娘か孫か....誰か家族がさらわれた可能性がある。


「リオさん、ちょっと寄り道しても?」

「構わない」

「村長さん、頭を上げてください。私たちはこの村に『セシリアの花を届ける』という依頼を遂行しに来たまでです。

 そのついでに、近くにいる盗賊を懲らしめていくだけですから。村の依頼とは何の関係もありません。報酬なんて、いらないですよ。

 ですから、村長さんは捕らわれた皆さんが帰ってきたときの為に、温かいスープと布団を用意して待っててください」

「....!!あぁ....ありがとう、ありがとうございます....!!!!」


 村の人たちから話を聞き、盗賊の拠点と思わしき場所・大体の人数・傭兵の数、それらを聞き出して準備する。


(ま、このくらいならすぐ終わりそうですね)


 それよりも、終わった後の周辺の村を含めた警備の強化が最優先だ。帰ったらメルトさんに報告しなければ。


「それでは、行ってきます」

「はい、お気をつけて。あなた方の無事を祈っています」


 村の人たちに見送られ、私たちは村の裏手にある雑木林に入っていった



***



「ガハハハ!!おら酒をもっと寄こせ!!」

「うるせぇーよ!ったく、ほらよ!」

「ぎゃー!また負けた!!」

「弱すぎんだろおめぇーよ!そんなんじゃ、王都のカジノでも勝てねーぞ?!って、王都なんて入れるわけねぇか!」


 ぎゃはははは!!と下品な笑いで高らかに酒を煽る盗賊たち。村から聞いた情報通り、30人ほどはいそうだ。


「30人近くいるな。これだけの人数を束ねられるのは、相当優秀な奴なんだろう」

「お尋ね者の可能性特大ですね。どうします?奇襲か、正面突破か」

「多勢に無勢だが、行けるのか?」

「見た感じ魔法が使えるのはほぼいません。仕えても初級レベルのものがいいとこでしょう。

 ならば、負ける要素はありません」


 コクンと頷いたリオを確認し、雑木林から堂々と立ち上がって盗賊たちの前に歩み寄る。

 林の中から出てきた謎のローブに気づいたのか、武器を片手にぞろぞろと盗賊たちが寄ってきた。


「おいおい、何だてめぇ?」

「魔法使いか?冒険者か?どちらにせよ、こう堂々と出てきたんじゃ何されても仕方ねぇよな?」

「おっほ!こいつ、女だぜ!顔は良く見えねぇが、女の香りがする!!」

「マジかよ!!じゃ、じゃあ俺らで食ってもいいんだよな?!」


 急に士気が上がったのか、立ち上がると同時に色々勃ち上がっている盗賊たち。


(汚らわしい....全部焼き滅ぼしたいですね)


「そういうことだ嬢ちゃん。攫ってきた村人は奴隷商に売るってんで味見もろくに出来なかったんだよ。色々溜まってるもんを、嬢ちゃんで発散させてくれや。拒否権は無いけどな」

「そうですか。では.....」

「?」


 スゥ....と息を吸い、掲げた杖を地面にコツンと当てる。


「沈みなさい、空重域(キログラビティ)


 その瞬間、とてつもない重さの空気が盗賊たちに襲い掛かる。

 空重域(キログラビティ)、これは空間魔法の1種であり、対象に対して重力による引力を強大化させて空気を当てる魔法である。

 空気の塊を人間は感じ取ることができず、魔法を喰らった者は重力の塊に押しつぶされるように沈む。

 また、この魔法は段階的には第一段階に過ぎない。更に上の魔法が存在する。


「何....を゛っ....!!??」

「重ッ....!?」

「んがぁッ?!」


 悲鳴を上げて倒れていく盗賊たち。範囲魔法の為、自分が指定した対象以外には効果がない。つまり、私とリオさんには何のダメージもないのだ。


「しばらく寝ててください。その内騎士が来ますから」


 樹魔法“ウッドウィップ”を使い、盗賊たちの体を縛り上げる。

 盗賊たちが痛い痛いと悲鳴を上げるが、お構いなく強めに縛り上げた。


「親玉はあの奥ですね。あの仰々しい廃墟の中に、人質もいるはずです」

「あぁ。....何というか、凄まじいな魔法というのは」

「あれでも優しい方ですよ」


 そう言いながら廃墟の中に入る。

 やはりというべきか中にも盗賊がいたが、リオさんが率先して討伐してくれた。


 そして廃墟の一番奥、扉を開けた先にその男はいた。


「あぁん?おっと、お客さんじゃねぇか。奴隷商....じゃなさそうだな」


 顔に深い傷を負った大男。剥き出しの腹筋と両手につけた棘付きのグローブ。荒々しさを前面に出したその男は、歯茎をむき出しにして待ち構えていた。


「おおかた村の奴らを助けに来たってところか?」

「話が分かっているようでしたら返していただけますか?」

「嫌だね。あれは俺らの大切な資金源だ。俺達のようなハブられ者が、生活していくためには必要な犠牲なんだよ」

「お前たちがどうこうというのは俺達には関係のない話だ。次期に騎士たちがここに来る。残念だが、王都に近い位置で事を起こしたのは失敗だったな」


 その言葉にチッと嫌そうな顔をする男。だが、そこそこの規模を纏めていただけのことありすぐさま冷静になったようだ。


「まぁいい。騎士たちが来る前にお前らを倒してついでに売ればいいだけの話だ」

「そう簡単にやられるとでも?」

「思っちゃいないさ。だが少なくとも魔法使い、お前は何も出来ねぇよ」

「ふぅん....」


 舐められてるな、そう思う。魔法使いだから?女だから?小柄でひ弱そうとでも思われているのだろうか?

 ....ムカついた。秒殺する。決定事項。私を怒らせた報いはその血で贖ってもらおう。


「リオさん、人質の解放をお願いできますか?」

「お前はどうするんだ....って、聞かなくても分かり切っていることだな。1人で大丈夫か?」

「元々、これは私の独断で受けた依頼です。私が終わらせなければ」

「わかった。死ぬなよ」


 そう言い残してリオは男の背後にあるドアに向けて駆け出した。


「させるかよ!!」

「いえ、通してもらいます」


 男がリオに向かって拳を振り上げた瞬間、私は“身体強化”と“硬化”の魔法をかけて2人の間に入り、その拳を杖で受け止めた。

 あまりの速さと、華奢な体格からは想像できないような硬さの防御に驚いたのか、一瞬力が緩んだ瞬間に後ろに弾き飛ばした。


「へぇ、やるじゃねぇかお前」

「魔法使いだからって、舐めない方がいいですよ」

「中々に骨のありそうな相手で嬉しいぜ。俺の名はグランデス、知ってるか?」

「あぁ、どこかで見たことのある顔だと思ったら....指名手配犯じゃないですか」

「流石は冒険者。知っているよなぁ?」


 王都で見た指名手配書に描かれていた人物画と同じだ。

 この男はかつて隣国で、10人もの騎士を殺したとされている“人界指名手配犯”の1人。圧倒的すぎるその体格と破壊力で全てをなぎ倒してきたと言われている。

 1度はエキドナ王国の騎士団によって捕らえられたものの、死刑執行前に“何者かの手助け”により脱走。それがつい1か月前の話だ。


(丁度私が帰省していたころですね。もっと遠くに行っているものと思っていましたが、まだこんなところにいたとは)


「楽しもうぜ!せっかく会えた強者様だ!もっとも、勝つのは俺だと決まっているがな」

「まだ言いますか。体格や性別だけではその人の強さは分からないですよ」

「それはどうかな?」


 にやりと笑うグランデス。

 その笑みに不穏な物を感じつつ、私たちは睨みあった。


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