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第103話 隠れ聖女とおはようの朝

 あの戦いから2日後、私は学園の医務室で目を覚ました。

 体を起こすと丁度カーテンの隙間から木漏れ日が顔を射す。体を見ると、包帯などが巻かれてはいるものの外傷はない。恐らくマナ様か教会から聖女が派遣されたのだろう。イザヤといい今回といい、戦闘の度に倒れていては駄目だ。


(もっと鍛えないと....)


 そんな事を思っていると、ガラガラと音を立てて戸が開く。部屋の中に入ってきた人物と目があった瞬間....


「ライラ様ぁ〜!!!!」

「えっ、ちょ....むぐっ!」


 私を見た瞬間高速でダイブしてきたセレナ様に抱きつかれる。目が覚めたとはいえ、一応私は怪我人なんだけ....イタタタタ!!

 外傷は無くとも、内部に残った傷は完全には癒えていない。嬉しさのあまり抱きついてくれるのは懐かれてる証拠だからいいが、だとしても内部の傷が痛いっ....イタタタタ!!


「セレナ様っ....く、苦し....」

「あっ、ごめんなさい!」


 パッとセレナ様が離れる。大慌てだったからか乱れた髪を直し、すぐ側にある椅子を引っ張って来て座った。

 目元が薄っすらと赤くなっていることから泣いていたのだろう。私はそっとセレナ様の涙を拭った。


「あ....ありがとうございます....」

「おはようございます、セレナ様。お見舞いに来てくれたんですか?」

「そうです....ってそうじゃなくて!今回の件、リムから聞きました」

「あ〜....」


 そっかぁ....リムから....

 あのお喋り精霊はセレナ様にだけ存在がバレている。それでセレナ様に話をしたのだろう。今回の件の話を聞いたのなら、その報告という事だろうか?


 そう思った瞬間、セレナ様は急に立ち上がって私にグイッと顔を近づける。目元に涙が残っているが、その顔は心配ではなく怒りの表情。え....心配されてるんじゃないの....?


「ライラ様!」

「は、はいっ!」


 セレナ様はスッと人差し指で私を指し....


 ビシッ!!


「痛っ!」


 おでこを強烈に突かれた。普段のセレナ様からは考えられない行動、そして何より思ったより痛い。成長してるなぁ....と思うが、そんなことを口にする暇もなく2撃目を食らう。


「また!」

 ビシッ!

「一人で!」

 ビシッ!

「無茶を!」

 ビシッ!

「しました!」

 ビシッ!

「ね?!」


 最後の一撃が入った瞬間、私はベッドに倒れる。額から少し煙が上がってるのは気のせい、気のせいですよね?!

 ヒリヒリと痛む額を押さえながら、私も目に涙を浮かべてセレナ様を見た。まだ確かに怒りの感情は含んでいるが、段々とその顔が悲しそうに崩れていく。


「心配....したんですから....」


 セレナ様は恐らくあの戦いの最中は眠りの中にいたのだろう。殿下ですらそうだったのだし、何よりあの夢郷の中で自由に動けたのは私とギャレンだけだったのだから。


「ごめんなさい」

「ホントのホントに心配したんですから!!」

「....心配かけてごめんなさい」

「イザヤの時も、私は前線に立てなかった....今回は、事情を知っているうえで何も出来なかった!折角鍛えてもらってるのに....成長したと思ってただけで何も出来なかったんです!」

「....」

「すみません....つい悔しくて声を荒げてしまいました」


 吐き出しきったセレナ様がはぁ....はぁ....と息を切らして言う。今回、私を除いて自分だけが全部を知っていたのに何も出来なかった悔しさでいっぱいだったのだろう。

 セレナ様で言えばファナの件もある。余計に思うことが色々あったようだ。


「でも、心配したのは本当です!なので....これからはもっと、私達を頼ってください....」

「っ....!はい....ありがとうございます、セレナ様」

「ホントにもう....ライラ様からまだまだ学ぶことが多いのに、生徒をおいて一人で行かないでくださいよ」

「それで思い出したんですが、ギャレン先生はどうなりました?」

「あぁ、あの方なら....」


 セレナ様から語られたことの顛末はこうだ。

 夢郷が崩壊し、現実世界に戻ってきた私とギャレン。そして、学園を覆っていたドーム状の謎の結界も消滅し、外で待機していた騎士達が学園へと入ってきた。それと同時に、学園内部で眠っていた生徒達も目を覚まし始めたようだ。

 外部からは謎の結界が目視できる形で学園を

覆い、その異変に気づいた王がすぐに騎士を派遣してくれたらしいのだが外部からでは壊す手段が無かったらしい。

 学園内部では集団睡眠事件、外部では騎士が出動するほどの大騒ぎとなっており、鉢合わせた際は両者の間に何とも言えない温度差があったようだ。

 そんな中、唯一学園内ではなくグラウンドにて倒れている私とギャレンを騎士が発見。お互いにボロボロだったこともあり、一時的に学園の医務室へと運ばれた。その後、目を覚ました学園長は何らかの手段で眠っている間の事を聞き、それがそのまま真実として騎士に報告されたのだ。

 結果、ギャレンは魔族と共謀し学園を危機に陥れたとして捕縛。現在は牢獄の中でおとなしくしており、質問にも素直に答えているらしい。


(まぁ、多分学園長先生に顛末を伝えたのはムーバでしょうね)


 同じように倒れている私に一切疑いがかけられなかったのは、恐らくムーバが学園長にそう説明したからだろう。でなければ、もしかしたら私も捕縛されていたかもしれない。


「ギャレン先生は素直に取り調べに応えてるそうですよ。罪を認めているそうです」


 ギャレンが罪を認めるとなれば、今回の一件に限らずレサル村の件も解決するだろう。

 レサル村といえば....


「カレンちゃんのお墓参り....行きたいな」


 気づいたらボソリと呟いていた。心の中で思っただけのつもりが、自然と口に出ていたらしい。

 だが、今回の一件が終わったら一度顔を出したいとは思っていたのだ。たった数日....厳密に言えばたった数時間の関わりしかなかったが、ギャレンとの戦いを経て一度お墓参りをしようとは考えていた。


「....良いですね。行きましょう!ライラ様っ!」

「あ、え?!セレナ様も付いてくるんですか?!」

「勿論です!カレンは私とファナを繋げてくれた存在です。ファナの感謝を、彼女にも伝えないと....」


 既に消滅してしまったファナの為に、彼女の幸せな時間『シンデレラ·ティータイム』の成功と彼女からの感謝をカレンに伝えたいのだろう。理由は違えど、目的は一緒だ。


「次の休日、馬車を借りて行ってみましょうか」

「はい!楽しみです!」


 お墓参りに楽しみも何も....とは思うが、セレナ様が楽しそうならそれでいっか。

 こうして、次の土日はレサル村への日帰り旅行が決まったのだった。


 そして翌週。学園の授業が再開し、私は目が覚めた翌日には歩けるようになった。私の下には騎士やら王宮のお偉いさんやらが来て事情聴取された為授業を受ける暇は無かった為時間の流れが早く感じ、セレナ様と約束した翌週はあった言う間にやってきた。

 騎士に交渉してみた所、一度だけギャレンとの面会が認められた。学園に行けない期間を利用してギャレンと面会し、カレンへのお供え物やお墓参りの件について話をしてみた。ギャレンは驚いたような顔をしていたが、ぶっきらぼうな顔で素直に答えてくれた。

 ギャレンの顔は戦闘のときのような執念などを含んだ顔ではなく、憑き物が取れたようなスッキリした表情をしていたのがわかった。最後に笑った微笑みは、学園でも見たことのあるギャレンそのものである。


 寮を出て校門まで歩いていくと、その道中でとある人物に出会った。

 この学園とは違う制服を着た男子生徒。彼は私に気づくと気さくに話しかけてきた。


「やぁ、ライラ嬢じゃないか」

「イアン殿下!」


 偶然であったのはイアン殿下。ギャレンに誘拐された後、特に何もされて無かった為か開放は早かったらしい。だが、イアン殿下がこの国に来た理由である根本の事件は解決してないようだ。


「休日だけど、どこかに出かけるのかい?」

「はい。日帰りで少し」

「そっか。気をつけてね。そういえば、僕はしばらくこの国に残ることにしたよ」

「そうなんですか?」

「うん。まだ僕の光属性魔法は完璧じゃない。浄化の力を物にしないと、姉さんを起こすことは出来ないから....それに、教会にも通い始めたんだ。聖女様に教えてもらいながら光属性魔法を習得していくつもり」

「頑張ってください!応援してます!」

「ありがとう。頑張るよ。気をつけて行ってらっしゃい」


 イアン殿下に見送られ、私はセレナ様の待つ校門まで歩いて向かった。少し歩くと見えてきた校門。既に馬車は待機しており、その側に立つ少女の姿も確認できた。

 セレナ様に声をかけようとしたのだが....


「何で殿下がここに?」

「なんだ?俺がいたらマズイのか?」


 セレナ様のすぐ側に立つレオンハルト殿下。予想外の人物に動揺してしまうが、レオンハルトはそんな動揺した私に対して少し寂しそうな顔をした。

 あっ....何かワンちゃんに見えた気がする。


「セレナがレサル村に行くと聞いた。あそこはまだ事件解決の後処理で騎士が常駐してる。王家の馬車であれば特に疑われるは無いだろうが、あの村で何かあっては困る。騎士である俺が同行すればその心配もないだろう?」

「それは....まぁ確かに」

「そういう事だから俺も付いていく。ほら、馬車に乗れ」


 そう言って殿下が扉を開けて中に入るよう促してくれる。だが、私はあくまでも貴族令嬢で殿下は王族。王族に扉を開けさせるなどしてはいけない。そう考えて慌てて殿下を止める。


「殿下、私が扉を....」

「いや、大丈夫だ。乗れ」

「ですから殿下....」

「レディファーストだ」


 むむ....今日は随分と頑固ですねぇ....!

 少し悩んだが、セレナ様が私の手を引いて馬車に乗り込む。それに連れられて私も馬車に乗り込んだ。


「レオお兄様は言い出したら止まらないですから。ライラ様、私の隣で一緒におししてください!」


 ニコニコ顔でそう言われては断れない。殿下も乗り込み、そしてゆっくりと馬車が動き始めた。

 向かうはレサル村。カレンのお墓参りへと私達は向かったのだった。


当作品が面白い!気に入った!という方は評価やいいね、感想などお待ちしております。


次回更新日は1月27日AM 7:00の予定です。


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