第一話 悪役令嬢、何度もリトライをする。
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「ふぅ……」
俺はデジタルの時間が動かなくなったのを確認してため息をつく。
またこの時が来てしまったか。
ふわふわと宙を漂う自分の綺麗なクリーム色の髪を見ながら憂鬱な気分で身体を後ろに逸らす。
そのわずかな反動で俺の身体はゆっくりと後方へ回りはじめ、その動きに逆らうことなく身体を少し丸める。
胸元の大きな脂肪が視界に入ってくる。
そのまま世界はゆっくりと回りはじめる。
「無重力空間も最初は新鮮で楽しかったんだがな……」
俺は一人ぼそりと呟く。もう聞き慣れた少し低めのソプラノヴォイス。女の子らしい声だ。
ゆっくりと空中を一周しながら現実逃避を辞めて視界に見えるウィンドウを見る。
3/31が終了しました。
プロローグを開始しますか?
▷ Yes No
の文字を見る。
俺はうんざりしながら指でウィンドウを横にずらす。
ちなみにこのウィンドウは俺にしか見えてない。
いや、正確には俺の脳内で俺が見ているというべきなのか?
ずらしたウィンドウが横にスライドして別のウィンドウが正面に来る。
そこにはステータスの羅列。
ガイアシュナン領 バスターゼ星系
開拓 100
治安 99
生産力 100
交通 100
流通 100
区画 80
幸福度 99
民忠 99
軍事力 60
市場 100
人口 1489535784
モラル 80
都市成長度 80
それを眺めて
「……パーフェクト」
それを見ている時だけが幸せだ。一人でにやけながら呟く。
そしてもう一度デジタル時計に目をやる、
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「ハァ……」
俺はウィンドウをさっきの表示に戻して
3/31が終了しました。
プロローグを開始しますか?
Yes ▷ No
に移動させ決定を念じる。
すると画面が進み
3/24日に戻ります。
ステータスは初期値に戻りますがよろしいですか?
▷ Yes No
ここでyesを押せば日付が戻りまた数字上げに戻れるわけだが……
「ステータス的にはこれ以上上げようがない……」
思考錯誤の末、たどり着いた最高数値をほぼ100%叩きだせるようになった。
「すでに25回も戻ってるからな……」
画面を一つ前に戻す。
3/31が終了しました。
プロローグを開始しますか?
▷ Yes No
俺はもう20回以上ここから進めていない。
理由は簡単。ここでプロローグを開始すれば俺、いや、いま俺の身体となってる伯爵令嬢ラフィリア・ガイアシュナンは死ぬ運命に向かって進み始めるからであった。
「ハァ……」
俺は今日何度目か分からないため息をつく。
小さな青いライトだけが照らすこの薄暗い部屋の窓に映るアニメの自分の姿を見る。
はっきり言って美少女だ。
綺麗なクリーム色の髪。毛の一本一本が見たことないほど美しい。
ふわっとかかっているウェーブの感じがイイ感じだ。
この世界では手入れは機械がやってくれて簡単だ。
顔は整っており15歳にしては大人びている。
身体のプロポーションもボンキュッボンのセクシースタイル。でも着るものによってはあまり主張しないいわゆる「着やせするタイプ」なのは一人ファッションショーをやってみて理解した。
手足も指も細くてしなやか。やや筋力には劣るがそんなもんこの世界には関係ない。
引き金やボタンが押せれば、ムキムキマッチョな暴漢も3秒で黒焦げにできる。
そうここは遠い未来。
宇宙帝国歴1401年。西暦になおすと……えっと15998年だったか??
そんなゲームの世界で俺は主人公の少女の邪魔する悪役令嬢としてのスタートを切れずにいた。