表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

クモをつつくような話 2021 その8

作者: 山崎 あきら

 この作品はノンフィクションであり、実在したクモの観察結果に基づいていますが、多数の見間違いや思い込みが含まれていると思われます。鵜呑みにしないでお楽しみください。

 10月24日、午前11時。

 歩道の片隅には黄色いカタバミが咲いていた。春なんだなあ。〔まだ10月だ!〕

 ナガコガネグモのナガコちゃんはイナゴをもぐもぐしている。さすがにこの季節では24時間でイナゴを完食というわけにはいかないようだ。

 ナガコガネグモのジョーちゃんがいた場所には体長17ミリほどの新顔のナガコガネグモが現れた。またハズレだ。作者にはギャンブルの才能はないらしい。

 それにしても、ジョロウグモさえ姿を消していく季節にこれくらいの体長のナガコガネグモが狙うような獲物などそう多くはないだろう。細身のガとかイトトンボ、ハエくらいか。ああっと、雄が残っているかどうかも問題だろうな。とりあえず、そこらを歩いていた体長10ミリほどのアリをあげておく。


 午後2時。

 車道で頭を潰されたヘビを3匹見かけた。この季節、陽の当たったアスファルトは温度が上がりやすい。変温動物であるヘビが暖を取っているうちに車に轢かれてしまったのだろう。百年くらいではアスファルト舗装や車の存在に適応しきれないのだろうな。合掌。

 光源氏ポイントにもナガコガネグモの新顔が2匹現れた。予想が外れ放題だ。越冬できないクモは産卵することを目指す以外の選択肢はないんだろうけど。

 今日もトンボを4匹捕まえたので、円網に穴が開いていない(空腹である確率が比較的高い)ジョロウグモ3匹にあげてみた。結果は、獲物の頭部に牙を打ち込んだ子が2匹、胸部腹面が1匹だった。というわけで、余裕がないジョロウグモは手当たり次第に翅の付け根付近に牙を打ち込んでしまうようだ。慎重に何回もチョンチョンするだけの余裕があるとか、獲物が大きくて危険だと判断したとかいう場合には、より安全な腹部後端とか脚とかを狙うのだろう。

 なお、トンボの残り1匹は持ち帰った。明日の朝にでもナガコガネグモの17ミリちゃんにあげようと思う。


 10月25日、午前8時。

 ナガコガネグモの17ミリちゃんは大穴の開いた円網とぐるぐる巻きにされたアリを残して姿を消していた。どうやら引っ越しの途中でキャンプしていただけのようだ。わざわざ円網を張っていたのはおやつを食べたかっただけなのかもしれない。

 トンボは近くにいた体長20ミリほどのジョロウグモにあげた。この子が牙を打ち込んだのも胸部腹面だった。

 ナガコちゃんは体長25ミリほどになっていた。立派なお尻におまけのような頭胸部が付いているという体型である。円網には大穴が開いているから食欲はなさそうなのだが、イナゴをあげてしまう。ナガコちゃんはイナゴに気が付いていないふりをしているのだが、こういう時は獲物をツンツンすればいい。獲物が逃げようとすると捕帯を巻きつけずにはいられないのがナガコガネグモなのだ。食べるか食べないかは別のようだが。


 10月26日、午前11時。

 作者の行動範囲に限定しての話になるが、今年はゴミグモの成体は現れないようだ。今のところ、最大の個体でも体長5ミリほどでしかない。これは円網にゴミを付けているとそれに気が付いた獲物が円網を避けていくので、その分成長が遅くなって1年ではオトナになれないということだろうと思う。早く成長することよりも安全を優先するタイプのクモなのだろう。


 10月27日、午前11時。

 ナガコちゃんが円網を張り替えていた。こんなこともあろうかと冷蔵庫から出してポケットに入れておいたイナゴをあげる。かなり弱っている獲物なのでツンツンしないとナガコちゃんをその気にさせられないのがやっかいだ。ナガコちゃんもお尻が重すぎるらしくて、獲物の下に入り込んでも水平の姿勢を取れずにいる。それでも捕帯を投げ上げる様にして獲物に巻きつけるナガコちゃんだった。

 冷蔵庫のイナゴの在庫はあと1匹になってしまった。もしかして……ナガコちゃんはもう産卵する能力を失っているんじゃないだろうか? 卵巣内の卵がなくなったか、貯精囊の精子を使い切ったかして、いくら食べても産卵できないのに食べることをやめられずにいる、とか? いずれにせよ、明後日までには最後のイナゴをあげることになりそうだ。


 10月28日、午前7時。

 冷蔵庫の中の最後のイナゴがだいぶ弱っているようなので円網を張り替えなかったらしいナガコちゃんにあげてしまう。ナガコちゃんは珍しく積極的に飛びついてきた。

 スーパーの周辺で観察できたジョロウグモは体長12ミリほどの子が1匹だけだった。なお、この子の円網には体長10ミリほどの雄が同居している。天候にもよるだろうが、ジョロウグモであっても産卵までのタイムリミットはせいぜいあと2ヶ月半である。冬が来る前にオトナになれるんだろうかなあ……。

 気になったのでジョロウグモが多い廃屋ポイントもチェックしてみると、雄が同居していない雌が13匹に対して同居しているペアは2組だけだった。雄が必要とされる季節は終わりつつあるようだ。


 10月29日、午前11時。

 ゴミをほぼ水平に取り付けているゴミグモを見つけてしまった。今日は風が強いのだが、風で糸が切れたのなら他にも30度とか60度くらい傾いたゴミ付きの円網があってもいいだろうと思って探したのだが、そういうものは見当たらなかった。つまりこの子は意識的に水平に近い角度にしたということになる。ゴミグモにはたまにいるんだ、こういう変わり者が。


 午後2時。

 光源氏ポイントには4匹のナガコガネグモ(いずれも体長20ミリ以下)がいた。そのうちの1匹は円網を張り替えた様子がなかったし、もう1匹はすでに体長20ミリほどの細め体型のバッタを食べていたので、残りの2匹に体長30ミリほどのイナゴをあげてみた。

 おそらくこの2匹にとって30ミリのイナゴは想定外の大物だったのだろう。イナゴが暴れる度に円網の糸が切れて落ちていってしまう。それでも片方の子は右の第二脚の爪だけを円網に引っかけた状態で捕帯を巻きつけていたし、もう1匹はほとんど糸1本だけで宙吊りになったイナゴにDNAロールを仕掛けていた。円網から外れて落ちるまで放っておかなかったということは食欲はあったのだろうと思う。


 午後3時。

 ジョロウグモポイントには第四脚2本を失って6本脚になっている体長20ミリほどの子がいたので、あえて体長50ミリほどのトンボをあげてみた。獲物に駆け寄った6本脚ちゃんはトンボの脚を咥えたのだが、トンボの細い脚に牙を打ち込むことはできなかったらしくて、いったん間合いを取ってからまたトンボに近づいて、今度は羽の付け根辺りに牙を打ち込んだ。

 さて、問題はここからだ。通常クモが獲物に捕帯を巻きつける時には第四脚を使う。それが2本ともないのだから他の脚を使うのだろうと予想していたのだが……6本脚ちゃんは捕帯を巻きつけなかった。トンボの羽にお尻を押しつけてしおり糸を固定すると、そのままホームポジションに持ち帰ろうとしたのだ。またまた大外れである。

 しかし、やはり無理があったのか、トンボの片方の翅が円網に引っ掛かってしまった。すると、いったんホームポジションに戻った6本脚ちゃんは何事もなかったかのように、またトンボに近寄ってその場で食べ始めたのだった。うーん……作者には脚を失った場合にどういう対策を採るかは各自で考えているように見えるんだが、プロの研究者はこういうのまで「本能にプログラムされている」で片付けるんだろうかなあ。

 ジョロウグモのアケビちゃんは姿を消していた。産卵だと思う。

 アケビちゃんの隣の子の円網の糸は無色に戻っていた。なんだ、これは? 糸を黄色くするような体長ではないのに変えてしまったので、「やだ。間違えちゃった」とか言いながら元に戻したのか? あるいは、季節と体長以外にも糸の色を変化させる要因があるのか? わからん。


 10月31日、午前11時。

 ナガコちゃんは今日も円網を張り替えていない。

 スーパーの南側にいるジョロウグモが2匹に増えていた(体長はどちらも12ミリクラス)。この2匹の円網には雄が同居しているからまだ交接していないんだろう。それに対して廃屋ポイントのジョロウグモたちのほとんどが同居していないのは、すでに交接を終え、他の雄がやって来ることもなさそうだから同居を続ける意味はなくなったということだと思う。


 午後2時。

 小雨がパラついている。

 光源氏ポイントの近くで行き倒れらしい体長30ミリほどのスズメバチを拾ってしまった。触角に触れるとわずかに反応するからギリギリ生きているようだ。急げば間に合うかもしれない。そこらにいるジョロウグモにあげてしまおう、と思ったのだが……。

 一時期姿を消してから戻ってきて、今は角度で90度、半径約15センチの扇形という、いかにも食欲がなさそうな円網(?)を張っている体長25ミリほどの子は身構えるだけで近寄って来なかった。スズメバチは体重があるので、重さに負けた糸が次々に切れていく。ここまでだと判断してジッパー付きのポリ袋に入れ、ジョロウグモポイントに向かう。

 ジョロウグモポイントでは、まず体長20ミリほどでお尻がソーセージ形の子にあげてみたのだが、この子も寄って来ない。またまた回収である。

 その隣の6本脚ちゃんは駆け寄って来て何回かチョンチョンしたものの、ホームポジションへ戻ってしまった。大きすぎて危険だという判断らしい。その上、体長5ミリほどの羽虫が円網にかかると、それには牙を打ち込むのだった。

 しばらく待ってみようかということで、古書店で本を四冊買ってから戻ってみても6本脚ちゃんは羽虫を食べている。そこでまたまたスズメバチを回収する。

 3匹目は光源氏ポイントから少し外れた所にいた体長25ミリほどの子だ。この子は慎重にスズメバチに近寄ると牙を打ち込んだ。ビンゴ! しかし、そこはスズメバチの翅だった。これはまずい。ほとんど力尽きているスズメバチがゴミ認定されたら捨てられてしまいかねない。そこで、スズメバチを抱え込んでいる25ミリちゃんの脚の間から枯れ草の茎でスズメバチをツンツンして抵抗しているように見せかける。これはやり過ぎると避難されてしまうので加減が難しいのだが、今回はうまくごまかせたらしくてスズメバチの胸部背面にも牙を打ち込んでくれたのだった。〔空腹だっただけだろ〕

 命が無駄にならなければそれでいいのである。


 11月1日、午前11時。

 ナガコちゃんの円網はほとんど縦糸だけになっている。

 ゴミを水平に付けていたゴミグモは垂直に戻していた。単なる気まぐれだったようだ。


 11月2日、午前11時。

 ナガコちゃんがいなくなっていた。産卵だと思いたい。


 午後2時。

 光源氏ポイントで90度の扇形の円網を張っていた子は姿を消していた。やはりジョロウグモは一生に一度しか産卵できないような気がする。

 2日前にスズメバチをあげた25ミリちゃんはスズメバチの頭部を外して胸部に口を付けていた。硬い外骨格を食い破るよりも外して食べた方が楽なのだろう。

 もしも成体のオニグモに元気なスズメバチをあげたらどんな食べ方をするんだろう? 機会があったら実験してみたいものだ。〔危険です。スズメバチに手を出してはいけません〕

 これだけ硬い頭部だと外して食べるのが多数派になるだろうと思うが、お向かいちゃんのような大型のオニグモなら頭部まで噛み砕いて肉団子にしてしまうかもしれない。

※クモの牙は折りたたみナイフのような収納式になっているのだが、この牙が収まる部分に突起が付いている種があるらしくて、これが歯のように噛み合わせられるようになっているんだそうだ。お向かいちゃんはこれでコガネムシの外骨格を噛み砕いていたのかもしれない。


 午後3時。

 ジョロウグモポイントでは体長20ミリほどの翅の長いバッタを捕まえたので6本脚ちゃんにあげてみた。6本脚ちゃんはバッタの腹部背面に牙を打ち込んで、しばらく待ってから捕帯を巻きつけたのだが、その時には第一脚で円網からぶら下がり、第二脚でバッタをホールドして、第三脚で捕帯を巻きつけたのだった。

 まあ、だいたい予想通りではある。しかし、第四脚を失った時には第三脚を代わりに使うことができるというのなら第三脚も他の脚と同じ長さにしておけば楽だろうに……。なぜ第三脚だけが短くなっているクモが多いのだろうか? わからん。

 余談だが、一部の水田の周囲ではホトケノザが満開になっている。手元にある図鑑ではホトケノザの花期は3月から6月になっているのだけどなあ……と思っていたら『LOVEGREEN』というサイトには「ホトケノザの花期は春ですが、日当たりが良い場所では通年花を咲かせます。猛暑の頃は少し休みますが、秋にまた花が咲くのはそんなに不思議なことでもありません」と書かれていた。要するに、他の草が伸びていない時を狙って花を咲かせるのらしい。春に咲く花にはこういうしたたかな生き方をする子が多いのである。


 11月3日、午前5時。

 ナガコちゃんが帰って来た。お尻が細くなっているから産卵したんだろう。円網も張り替えたようだから、後で産卵祝いのイナゴをあげることにしよう。


 午前9時。

 ナガコちゃんにイナゴをあげた。

 廃屋ポイントでは太陽に対して横向きの姿勢を取る子が現れ始めていた。投げれば届く所に円網を張っている体長20ミリほどで鉛筆形のお尻のジョロウグモにも力尽きていたイナゴをあげておく。


 午後7時。

 ジョロウグモの鉛筆お尻ちゃんは食べた様子のないイナゴをバリアーに取り付けていた。こんな行動は初めて見た。引っ越して来たばかりなのでバリアーに付けるゴミが欲しかったのかもしれない。しばらくの間観察を続けようと思う。ただ、この時期にこの体型ではお婿さんが現れないかもしれない。それが気がかりだ。


 11月4日、午前9時。

 鉛筆お尻ちゃんはイナゴを食べる様子がない。さて、どうしたものやら……。ガかトンボを食べるようなら単なる偏食家、飛行性昆虫も食べないようなら生きる気がないというところか。しかし、絶食するつもりなら円網そのものを張る必要もないかなあ……。ああっと、すでに産卵しているのかも……いやいや、いくら産卵したとしても、そこまでお尻が細くなるとは思えない。

 帰り道では体長17ミリほどでありながら、お尻がラグビーボール形になっているジョロウグモを見つけた。お尻の背面の模様も黄色とグレーの横縞である。この季節ではこの子の方が正解だろう。


 午前10時。

 鉛筆お尻ちゃんに体長10ミリほどのハエをあげてみたところ、ちゃんと仕留めて食べ始めた。食欲はあるわけだ。食が細いだけなのか?

 

 11月5日、午前10時。

 今日は可燃ゴミの日。ゴミ集積所で体長20ミリほどの細め体型のハエ(多分)を捕まえた。

 しかし、鉛筆お尻ちゃんもナガコちゃんも円網を張り替えていない。この時期は暖かい時間が短いので食べた獲物を消化する能力も低下しているのだろう。なお、気温が下がれば飛べる獲物も減るのは当然である。この時期に飛べる獲物は日光浴をすればすぐに体温が上がる体長2ミリ以下の羽虫か、準備運動で飛翔筋の温度を上げられるハチの仲間、それに体温が下がりにくい体型と言える太めのガくらいだろう。獲物が少なくなる夜間に狩りをするオニグモなどがさっさと休眠に入ってしまうのはそういうわけなんだろうと思う。


 午後2時。

 細身のハエを持って光源氏ポイントへ行ってみた。体長20ミリほどの子を選んでハエを投げたのだが、円網を突き抜けてしまった。円網が劣化していたのかもしれない。この季節のジョロウグモは1日おきに張り替えたり、半分だけ張り替えたりする子が多いので困る。


 午後3時。

 気分を変えてイナゴを2匹捕まえてからジョロウグモポイントへ行く。まずは6本脚ちゃんに弱らせたイナゴをあげる。6本脚ちゃんは慎重に獲物に近寄って牙を打ち込んでいた。

 その隣の体長20ミリほどの子はイナゴに近寄っても牙を打ち込もうとせず、獲物の上で円網の糸を切り始めた。そこでイナゴを回収して、代わりに体長10ミリほどの小型のガをあげた。さすがにこの程度の獲物だとすぐに駆け寄って牙を打ち込んでくれる。

 面白かったのはその後で、この子は第一脚2本でしおり糸にぶら下がった体勢で獲物を第三脚でホールドしながら第四脚で捕帯を巻きつけたのだった。ついでにその隣の25ミリほどの子にもイトトンボをあげると、この子も第三脚でホールドして第四脚で捕帯だった。

 というわけで、牙を打ち込んだままホームポジションに持ち帰ることができるような自分の体長の4分の1以下の獲物と、しおり糸を取り付けて引っ張り上げるような大型の獲物は別として、その中間の獲物にその場で捕帯を巻きつける時には第三脚を使うということなのかもしれない。ああっと、うるさくつきまとう雄を押しのける時にも第三脚を使っていたから、体の近くで何かをする時には短い脚の方が使いやすいということになるかなあ。しかし、あれば便利程度の理由で短い脚が進化するんだろうか? やっぱりわからんな。


 午後4時。

 帰り際に光源氏ポイントへ寄ってみると、イネ科の草のてっぺんでお尻の上面がライムグリーンのクモが第一脚と第二脚を広げているのを見つけた。体長は4ミリほどで頭胸部と脚は褐色だ。

※これはカニグモ科のハナグモの雄だったらしい。


 それはどう見ても獲物をハグしようという体勢だったので枯れ草の茎でツンツンしてみると、ビンゴ! つかみかかってきた。枯れ草を持ち上げると脚を広げるのだが、クモは落ちない。どうやら牙も打ち込んでいたらしい。待ち伏せ型のハンターらしい素早さである。残念ながらこのまま連れていくわけにもいかないので、ていねいに元の草のてっぺんに戻ってもらった。

 小指の先くらいの白い糸で作られたクモの卵囊らしい物もあった。枯れたイネ科植物の地上から20センチくらいの高さに取り付けられている。帰宅してから調べてみると、これはアリグモの卵囊だったらしい。アリグモの雌の体長は7ミリから8ミリということなので、ヒトに換算すればファミリーサイズのテントくらいになるだろう。糸で作られているから重くはないのだろうが巨大な卵囊である。体長との比較でいえばナガコガネグモの卵囊を上回る大きさに相当するんじゃないかと思う。


 11月6日、午前10時。

 最低気温は8度だったらしい。

 予想通りナガコちゃんが横糸を張っているところだったので、冷蔵庫の中に残っていた最後から2番目のイナゴをあげた。するとナガコちゃんは、獲物の下で円網に穴を開けてそこに入り込み、捕帯を投げ上げるようにして獲物に巻きつけたのだった。じゃまなものは片付けてから仕事をするというのはとても合理的なのだが、これまではこんなやり方はしていなかったような気がする。見落としていただけなのかなあ……。

 廃屋ポイントの鉛筆お尻ちゃんはイナゴを円網に戻していた。今はホームポジションの斜め下辺りに置いてある。なんだ、これは? 先進国の人間たちと同じように「腐りかけの肉がうまい」という特殊な味覚を持っている子なんだろうか(モンゴルの遊牧民は新鮮な肉を好むそうだ)。まあ、イナゴが無駄にならなかったのは何よりである。

 その近くには体長17ミリほどの見事に平民体型の子もいた。この子のお尻もソーセージ形なので、この体長でも立派なオトナである。この子にはツンツンしてもまったく反応しない最後のイナゴをあげてみた。さすがに体長で約2倍の獲物だと、慎重に何度もチョンチョンする。さらに風が吹いて円網が揺れると跳び退いたりもしている。獲物が暴れていると思ってしまうんだろう。それでも食欲を優先せざるを得なかったらしくて最終的には牙を打ち込んでくれた。やれやれ。


 11月7日、午前11時。

 ナガコちゃんが円網を張り替えてしまった。明日になるだろうと思っていたのだが、またハズレだ。しょうがないので昨日捕まえたバッタをあげておく。


 11月8日、午前6時。

 曇りだが路面は濡れている。

 ナガコちゃんは円網を張り替えなかったようだ。

 廃屋ポイントの鉛筆お尻ちゃんはソーセージ形のお尻になりつつあるようだが、今日も円網を張っていない。小さな獲物をどれだけ食べているのかまではわからないのだが、大物を食べた後の絶食期間はナガコガネグモよりもジョロウグモの方が長いようだ。消化器官も小型の獲物向きになっているのかもしれない。

 スーパーの南側にいたジョロウグモの12ミリちゃんは15ミリほどになっていたが、もう1匹の体長12ミリの子は雄を残して姿を消していた。産卵するような体型ではなかったから引っ越しだと思う。しかし、この季節に雄と別れたのでは交接できないリスクが高くなると思うのだが、それでも引っ越しをする必要があると判断したのだろうか? 


 午前11時。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんが円網を張り替えていたので、そこらにいた体長4ミリほどのアリを3匹あげておく。


 午後3時。

 ジョロウグモポイントでアケビちゃんのお隣ちゃんにイトトンボをあげたのだが、一応近寄ってはみるものの、ホームポジションに戻ってしまう。しばらく待ってからもう一度見に行くとちゃんと食べていたが、この子はジョロウグモの中でも特に慎重なタイプらしい。ただ、この子は体長17ミリほどでしかないので、体格のせいだという可能性もないとは言えない。


 午後9時。

 トイレの水洗タンクの脇に体長4ミリほどのユウレイグモがいた。本の山の脇に住みついていた子が成長したのかどうかまでは確認できない。それぞれのクモを個体識別できるといいのだけど……。


 11月10日、午前9時。

 ナガコちゃんが円網を張り替えていたのでイナゴをあげた。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんは1メートルくらい引っ越していた。そのバリアーに体長4ミリほどの細身のクモがいたので、お婿さんかと思ったのだが、第一脚と第二脚を揃えて前方に伸ばす姿勢を取っているからアシナガグモの仲間である。とりあえずソーセージちゃんには2日前に捕まえたハエをあげておく。

 今日は体長35ミリほどのバッタを捕まえた。羽の後端までだと45ミリはある。ナガコちゃんにあげた小型のイナゴよりもだいぶ大きい。これは後日、少し弱るのを待ってナガコちゃんにあげよう。仕留めるか逃げるか、どっちだろうかなあ。


 11月11日、午前10時。

 ナガコちゃんは円網を張り替えていなかったのだが、昨日捕まえたバッタ(ツチイナゴ?)を穴が開いていない部分に投げ込んであげた。

 獲物の下に入り込んだナガコちゃんは果敢に捕帯を投げ上げるのだが、バッタは体長30ミリのイナゴの1.5倍くらいの長さの後脚で暴れる。そうすると、せっかく巻きつけた捕帯がずれて体の後半部が剥き出しになってしまうのだった。それでもナガコちゃんは円網の糸を切っては捕帯を投げ上げ、また切っては投げ上げというのを繰り返して、最後は宙吊りになった状態でぐるぐる巻きにした獲物に牙を打ち込んでいた。これほどの大物を仕留めた経験はないはずだが、さすがはバッタ狙いのナガコガネグモである。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんも円網を張り替えていなかった。しかし、冷蔵庫には体長30ミリほどの細身のバッタ(オンブバッタの雄ではないかと思う)が入っていたので、力尽きる前にと、辛うじて残っていた20センチ四方くらいの部分に投げ込んであげる。バッタに駆け寄ったソーセージちゃんはためらう様子もなく牙を打ち込んでいた。円網を張り替える気にはなれないが、食欲はあるというわけだ。


 午後3時。

 光源氏ポイント周辺にいるナガコガネグモは1匹だけになっていた。作者の今シーズンの行動範囲内ではナガコちゃんが最後のナガコガネグモということになってしまうかもしれない。

「ナガコ、ナガコでございます。ナガコ、ナガコが最後の最後のお願いに……」〔やめんか!〕

 光源氏ポイントではジョロウグモもだいぶ減っていたが、そのうちの1匹(体長約25ミリ)は、なんと、トノサマバッタを食べていた! この子の円網の下端は下草から数十センチの高さだし、トノサマバッタはイナゴよりも飛行能力が高いから、それくらいの高さの円網にかかってしまうこともあるのだろう。後は疲れて暴れられなくなるのを待って牙を打ち込めばジョロウグモでも仕留められるわけである。まあ、本格的にバッタを狙うのならもっと低い位置に円網を張るべきだろうし、獲物の抵抗を封じるための強力な捕帯も必要になると思うが。

 そして、木の葉の中にいるお尻がソーセージ形のジョロウグモも1匹見つけた。調べてみると、産卵を終えたジョロウグモは卵囊の側にいたり、円網に戻ったり、新たに円網を張ったりすることもあるらしい。なお、「2度目の産卵を観察した」という情報は今のところ見つかっていない。

 ここには体長4ミリほどのコガネグモの仲間の幼体もいた。そのお尻は後端が黒褐色で前端が白、その間は細い横縞のグラデーションになっている。これではほとんど迷彩色である。24時間営業のクモの場合、幼体のうちは目立たない方が、ある程度成長してからは目立つ方が生き残る上で有利になるということなのかもしれない。


 11月12日、午前10時。

 ナガコちゃんは円網を張り替えていなかった。この季節にトノサマバッタを完食したのなら、次の張り替えは明日か明後日になるだろう。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんも円網を張り替えていなかった。これもこの季節のジョロウグモなら通常営業の範囲だろう。


 11月13日、午前10時。

 ナガコちゃんは今日も円網を張り替えていない。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんの円網も大穴が開いたままだ。作者の眼で確認できる範囲ではここにいるジョロウグモで円網を張り替えた子は2匹だけ。後は張り替えなかったり、部分的に張り替えたりだ。


 午後2時。

 小さな羽虫が群れ飛ぶ季節になった。口を開けてサイクリングしているとタンパク質を補給してしまいそうである。

 光源氏ポイントにいるジョロウグモは4匹だけだった。その中の11日にトノサマバッタを食べていた子(「トノサマちゃん」と呼ぶことにしよう)の円網だけは張り替えてあるように見えたので、力尽きてしまいそうなイナゴをあげた……のだが、近寄ってチョンチョンするだけで仕留めようとしない。作者がイナゴをツンツンしても牙の間合いまで近づこうとしないのだ。そのうちにホームポジションに戻ってしまった。これではどうしようもないので、イナゴは回収して隣の体長25ミリほどの子にあげてしまう。

 そこらにいたオンブバッタの雄を捕まえたので、念のためにもう一度トノサマちゃんにあげてみたら、なんとこれがビンゴ! 駆け寄って牙を打ち込んでくれた。しかし、よく見るとオンブバッタの雄は円網の上を歩いて逃げようとしていたのだった。なんてこった! 横糸が粘っていないじゃないか! この円網は古くなっている。おそらく24時間以上前に張られた円網だ。それ以後、獲物がかかっていないので新しい円網のように見えていただけだったのだ。

 さてさて、トノサマちゃんはイナゴは食べられないが、オンブバッタの雄なら食べられると判断したということなんだろうか? そういうことなら今の自分の腹具合を把握しているということになるわけだが……ジョロウグモのような無駄のない生き方をするクモならそれくらいのことはやるかもしれないかなあ……。

 なお、トノサマちゃんの円網の足場糸は無色なので、それと比べると横糸はごくわずかに黄色いようだった。


 午後3時。

 光源氏ポイントから少し林の中に踏み込んだら、そこに張られていた直径約7センチの円網が虹色に光っていた。水平に近い角度に張られた円網に太陽光が浅い角度で入射しているので、透明な糸の中で太陽光が屈折して虹色が現れるということらしい。あり得ないことではないのだろうが、初めて見たような気がする。長生きはするもんじゃなあ。

 少なくとも一部のクモの糸は無色透明であると言えると思う。宮下直編『クモの生物学』の第6章では春から秋にかけてのジョロウグモの糸は「白い」としているのだが、これは時間が経つと白く濁ってくるということなんだろうかなあ。

※この章の著者は室内で実験するタイプらしい。屋外で太陽の反対側から観察しない限りはクモの糸は「白い」のだろう。つまり、クモの糸はインドア派の人間にとっては「白い」のに対して、フィールドワーカーにとっては「無色」なのである。


 なお、この円網のホームポジションには体長1ミリほどのクモがいたのだが、この大きさでは何グモかまではわからない。しいて言うなら、その円網のパターンはオニグモの仲間のそれのようだった。


 11月14日、午前10時。

 ナガコちゃんが円網を張り替えたようなので冷蔵庫のトノサマバッタを弱らせてからあげた。トノサマバッタを仕留められることはわかっているので、余計な苦労をさせる必要はないのだ。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんも円網を張り替えていたので、弱らせたイナゴをあげる。近寄って来たソーセージちゃんは三回ほどチョンチョンしてからイナゴの腹部に牙を打ち込んでいた。ジョロウグモにしては積極的な狩りである。オンブバッタの雄を仕留めたことで自信を持ったのか? 

 さて、これで冷蔵庫の中の獲物のストックは使い切ってしまった。また誰かが円網を張り替えたらどうするかはそうなってから考えることにしよう。

 廃屋ポイントには今、観察できる範囲で13匹のジョロウグモがいるのだが、明らかに黄色い糸の円網は一つもない。全員無色の糸か、作者の眼では識別できないほど薄い黄色の糸を使っているということだ。少なくとも廃屋ポイントでは「秋になると黄色くなる」は通用しないわけだが、どうしてそうなるのかはわからない。せいぜい「ここにいるジョロウグモは先祖代々無色の糸を使ってきたのだろう」くらいのことしか言えない。廃屋ポイントは住宅街の中にあるオアシスのような、かなり隔離された環境なので、黄色い糸を使う一族の血が入ってこなかったという可能性は否定できないだろう。

 なお、作者は体長10ミリほどのハエがジョロウグモの円網を避けるような飛び方をするのを見たことがある。また、体長5ミリほどのガが群れている低木を揺らしてパニックを起こさせると、次々にジョロウグモの円網にかかるというのも何回か観察したことがある。これらのデータは、物をはっきり見ることができないと言われている昆虫の眼でもジョロウグモの横糸が高密度に張られている円網は見えているということを示唆しているような気がする。この季節のジョロウグモの円網には体長2ミリ以下の羽虫が大量にくっついているのをよく見るのだが、それは風に逆らって飛ぶ能力が低いので円網が見えていても避けられないということなんじゃないかと作者は思う。この辺りは昆虫たちに聞いてみないことにはなんとも言えないのだが……。


 11月15日、午前10時。

 ナガコちゃんはトノサマバッタを食べ終えたらしかった。そのお尻はとんでもない大きさに膨らんでいる。やはり、ナガコちゃんの産卵前のお尻は産卵する度に大きくなっていくようだ。しかし、残念ながら観察例が少ないので、これがナガコガネグモの一般的な傾向なのかどうかまではわからない。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんはイナゴを円網に取り付けたままにしている。完食した様子はないし、食べかすならバリアーに移すだろうから、この子は食が細いので一日では食べきれなかったということなんだろうと思う。今後は体長10ミリ以下の獲物をあげることにしよう。獲物が手に入れば、だが。


 午後2時。

 光源氏ポイントのトノサマちゃんの円網には大穴が開いていたのだが、かまわずに、そこらで捕まえた体長50ミリほどのトンボをあげてしまう。トノサマちゃんはゆっくり歩み寄ると、トンボの翅の中程に牙を打ち込んだ。それからもう少しトンボの胸部に近い位置に打ち込み、3回目で胸部に牙を打ち込んだのだった。そこで考えたのだが、この翅に牙を打ち込むという行動は獲物を逃がさないために行っているのではないだろうか。トンボは高い飛行能力を持っていると言われているが、片方の翅にジョロウグモを1匹ぶら下げたまま飛べるほどではあるまい。まず飛べなくしておいて、少しずつ急所に迫っていくというのは狩りの手順として正解だと思う。そして、ジョロウグモにイナゴをあげた時に、後脚に牙を打ち込んでしまってイナゴに逃げられるというケースが多いのも、牙を打ち込んだ後脚を自切されてしまったということなんじゃないだろうか? 捕食者が獲物を仕留めるテクニックを持っているように、捕食される側も逃げのびるための技を持っていてもおかしくはないだろう。


 午後3時。

 ジョロウグモポイントでは左の第一脚だけを円網に引っかけてぶら下がった6本脚ちゃんがナミテントウに捕帯を巻きつけていた。この子は第二脚2本で獲物をホールドしながら短い第三脚を使って捕帯を巻きつけていたのだが、どうも右の第一脚は円網を押しているようだった。そこで考えたのだが、こうしないと捕帯を巻きつける時に脚が円網に絡んでしまうのではないだろうか? それを防ぐための方法の一つがこうして円網を押すことなのだろう。もう一つの方法は最近のナガコちゃんがやっているように円網の糸を切って穴を開けることだろうが、ジョロウグモの場合は横糸の本数が多いので、それを全部切ると手間がかかりすぎるのだろう。

 気になったので、帰宅してからナガコちゃんと廃屋ポイントにいるジョロウグモたちの円網の角度をチェックしてみた。その結果、すべてのクモで円網が垂直からやや角度が付いていて、クモはその下を向いている側で待機していた。それはもちろん、捕帯を巻きつけやすい側である。それはいいとして、視力が弱いクモが微妙に垂直でない垂直円網を張れるというのはたいしたものだと思う。


 11月17日、午前10時。

 ナガコちゃんが円網を張り替えていた。こんなこともあろうかと2日前に捕まえておいた体長30ミリほどのバッタをあげることにする。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんも円網を張り替えていたので、体長10ミリほどのハエを投げてあげたのだが、円網を突き抜けてしまった。しょうがない。そこらにいた体長4ミリほどのアリをあげておく。


 午前11時。

 ナガコちゃんにバッタをあげた。ナガコちゃんはいつものように獲物の下に入り込んで捕帯を投げ上げた……のだが、それがバッタの腹部後端までしか届いていない。どうも重くなったお尻が下がってしまっているようだ。それに気が付いたナガコちゃんは今回も円網の糸を切って、より獲物に近づいてから捕帯を投げ上げ、さらにバーベキューロールでぐるぐる巻きにしてから牙を打ち込んでいた。間合いを詰めるために円網の糸を切ったということになるわけだが、これはもともと本能にプログラムされていたのか、太ってから思いついたのか、どっちなんだろう? 


 午後2時。

 光源氏ポイントのトノサマちゃんの円網にはトンボがかかっていたのだが、どうも食べる様子がない。気温が低いので食欲もなくなっているんだろうか?

 体長17ミリほどのナガコガネグモもいたので、そこらにいたカメムシを捕まえたのだが、このカメムシの胸部からは左右に棘が生えていてつかむと痛い。帰宅してから調べてみると、クチブトカメムシ亜科のカメムシには胸部から棘が生えている子が多いらしい。これは、あの臭いだけでは丸呑みにされてしまうこともあるので棘が必要になったということだろうが、そんな物好きな捕食者がいるんだろうか? ちなみにクモの場合は外部消化なので棘が生えていても何の問題もない……はずだ。多分。

 ここには体長100ミリほどの緑色のカマキリもいたので、今回も枯れ草でツンツンしてみた。しかし、肉食昆虫としてのプライドがあるのか、触角や複眼をツンツンしても平気な顔をしている。〔カマキリの表情がわかるのか?〕

 それならばと枯れ草を口元に持って行くと噛み切るんだ、これが。面白いので指も差し出してみたのだが、カマキリの大顎はスズメバチのそれよりだいぶ小さいので指のような大きな物は噛めない様子だった。〔危険です。指が細い子は真似しないでね〕


 11月18日、午前10時。

 ナガコちゃんは円網を張り替えていなかった。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんも張り替えていなかったのだが、昨日捕まえたトンボがかなり弱っていたのであげてしまう……が、ソーセージちゃんは知らん顔をしている。それならばとトンボの翅をツンツンしてやる。ソーセージちゃんはそこで初めて獲物に気が付いたようなふりをしてゆっくりと歩み寄り、獲物をチョンチョンし始めた。他のジョロウグモにイナゴをあげた時ほどではないが、かなり長い時間チョンチョンしてからトンボの胸部に牙を打ち込むソーセージちゃんだった。これではいけない。冬も近いこの時期に、獲物に対してこうも消極的ではオトナになれない可能性が高い。とはいえ、作者にジョロウグモを説得できるわけもない。この子が力尽きるまで見守ろうと思う。


 午後1時。

 光源氏ポイントではジョロウグモのトノサマちゃんのお尻がラグビーボール形になっていた。もう立派な女王様体型である。その円網には頭部と羽が1枚外されたトンボが取り付けてあった。食べかけなのかもしれないが、円網にトンボがかかっていたらそれに気が付いた獲物は避けてしまうだろうに、と思って体長10ミリほどのガをあげてみた。するとトノサマちゃんは飛びついて牙を打ち込んだのだった。うーん……この子は食べかすを背中側のバリアーに移すこともしないほどのめんどくさがり屋なのか、あるいは気温が低いのであまり働きたくないのかもしれない。

 食べかすは円網の下に捨てる派のナガコガネグモの17ミリちゃんの円網の下には捕帯が巻きつけられたカメムシが転がっていた。念のためにつまんでみると棘が痛くない。ナガコガネグモの消化液はカメムシの外骨格もある程度溶かすことができるのらしい。


 午後2時。

 ジョロウグモポイントで体長25ミリクラスのジョロウグモ2匹にそれぞれ体長5ミリと7ミリほどのハエをあげてみた。するとこの2匹は牙を打ち込んだ獲物をそのままホームポジションに持ち帰って捕帯を巻きつけたのだが、その時には第三脚2本で獲物をホールドしていたのだった。さらに口を付ける時にも第三脚2本と片方の第一脚で獲物を支えていた。やはり、クモの第三脚が短いのは体の近くで作業をする時のためのようだ。いままではイナゴのように大型の獲物ばかりをあげていたので、こういう行動は見る機会がなかったのである。〔迂闊な奴め〕

 笹の葉の間に小規模なバリアーのように糸を張ってたたずんでいるお尻の細いジョロウグモも1匹見つけた。産卵を終えた雌だろうか?


 11月19日、午前6時。

 廃屋ポイントでは3匹のジョロウグモが円網を張り替え中だったのだが、その動きがとても遅い。この気温の中、裸で作業しているのだから当たり前ではあるのだが、円網を張り替えたくても、寒さで体が思うように動かないということなのかもしれない。どうせ獲物も飛べないんだから、もう少し気温が上がってから張り替えてもいいだろうと思うのだが、夜が明けたら張り替えるという習慣はなかなか変えられないものなんだろう。ちなみにソーセージちゃんは張り替えていない。もしかして、交接していないのに食べるのは無駄だからと……いやいや、去年の姐さんはよく食べていたしなあ……。


 11月20日、午前10時。

 歩道には落ち葉の山ができていた。

 ナガコちゃんは円網を張り替えていなかった。そういうわけで、冷蔵庫の中の力尽きてしまいそうなトンボは廃屋ポイントのソーセージちゃんにあげることにする。

 トンボに近寄ったソーセージちゃんは何回かチョンチョンした後、トンボの胸部に牙を打ち込んだ。ジョロウグモはこういう時に第一脚と第二脚を高く持ち上げることがよくある。これは獲物に脚先の爪を引っかけたままにしておくと、牙を打ち込まれた獲物が暴れた時に脚がもげてしまう危険があるのでその対策だろう。つまり、牙は脚よりももげにくいのである。〔当たり前だ。牙がなくなったら生きていけないだろうが〕

 ナガコガネグモやオニグモなら捕帯で獲物の動きを封じてから牙を打ち込むのでこういう問題は発生しない。なぜジョロウグモは捕帯を使わないんだろう? 獲物の動きを封じられるほど強力な捕帯ではないから無駄だということなのか? 


 午後2時。

 この気温だと陽が当たっていても短パンでは寒い。

 ジョロウグモポイントにいる6本脚ちゃんとその隣の7本脚ちゃんは太陽に対してお尻を真横に向けていた。ここは昼過ぎまで陽が当たらないので、体温が上がらなかったんだろう。

 ここには体長4ミリほどの翅の下の腹部背面が黄色い羽虫が多い。そこで7本脚ちゃんの円網にくっつけてみたのだが、7本脚ちゃんは近寄って第一脚でチョンチョン、触肢でもしょもしょしただけで円網から外して捨ててしまった。それならばと、体長5ミリほどのナミテントウをあげると、これにはちゃんと牙を打ち込むのだった。好き嫌いが激しいのか、食べ飽きたのか、どっちなんだろう?

 なお、7本脚ちゃんの円網は枠糸の端の枝分かれしている部分とホームポジションの周辺以外は無色になっていた。どうなってるんだ、これは? 

 小さめのトノサマバッタを捕まえたので持ち帰ろうとしたら噛まれてしまった。トノサマバッタは雑食で、イネ科の草の他に昆虫の死骸なども食べるらしいから油断できない。


 11月21日、午前10時。

 雪虫(白い綿毛と羽を持つアブラムシの成虫)がふわふわと飛んでいる。冬が近いのだな。

 ナガコちゃんはまだ円網を張り替えない。今回の絶食は長い。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんもほんの一部しか残っていない円網にたたずんでいる。部分的にでも張り替えた子もいるからソーセージちゃんは特に寒いのが苦手なんだろうかなあ……。


 11月22日、午前10時。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんの円網は枠糸1本とバリアーの一部しか残っていなかった。その他のジョロウグモの円網もかなりのダメージを受けている。無事なのは最近張り替えたものだけのようだ。ヒメグモなどの不規則網は補修しながら使い続けられるものであるのに対して、ジョロウグモやナガコガネグモなどの円網は消耗品なので、傷んだ円網は張り替えるようにできているという話もある。また、ナガコちゃんの円網は雨が降り出す前とほとんど変わっていないから、ジョロウグモの円網はナガコガネグモのそれに比べて雨に弱いようだ。糸が比較的細いのかもしれない。横糸の本数を増やすために全体的に細い糸にして、原料であるタンパク質を節約している、とか? 

 ウインナーちゃんの隣にいるジョロウグモはバリアーに取り付けてあった食べかすをもぐもぐしてから、数本の糸しか残っていない円網に戻っていった。それほど空腹だったんだろうか?


 11月23日、午前8時。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんは円網の残骸でお尻を下向きにしていた。右の第四脚は円網から外れている。まるで力尽きたような姿勢だが、枯れ草の茎でツンツンするとわずかに反応する。ジョロウグモが正しい待機姿勢を取れないほど衰弱しているというのは産卵後にはよくあることなのだが、この子はおそらく産卵はしていない。食欲がなかったのも獲物を食べられないほど体力が低下していたということなのかもしれない。

 そこらで捕まえてしまった体長10ミリほどのガは円網を張り終えていた体長20ミリほどのジョロウグモにあげた。この子は知らん顔をしていたが、30分ほど後に見に行くと、ゆっくりとガに近寄って翅に牙を打ち込むところだった。当然ガは暴れ始めたのだが、20ミリちゃんは咥えている位置を羽伝いに移していって、最終的にはガの胸部に牙を打ち込んで仕留めていた。

 ナガコちゃんは今日も円網を張り替えていない。これはなんだろう? もしかしてナガコガネグモは卵巣が空っぽになっても獲物を食べて太ってしまうのか? ヒトの雌が閉経後も生き続けるのは繁殖する能力を失ったおばあちゃんでも子育ての手伝いはできるからだという説もあるのだが、ナガコガネグモは卵を産みっぱなしにするのだから産卵できないのなら生きている意味はないはずだ。ヒトのおじいちゃんのように意味がなくても食料を浪費することだけはできるということなんだろうか? 環境が許すなら、そういう無駄な生き方もできるはずではあるのだが……。


 午後3時。

 光源氏ポイントにトノサマちゃんの姿はなかった。目に付く範囲にいるジョロウグモは3匹だけだ。冷たい雨がほぼ1日降り続いたから力尽きた子も多いんじゃないかと思う。

 その中で1匹だけ円網を張り替えていた体長25ミリほどの子にそこらにいた茶色のカマキリ(体長約60ミリ)をあげてみた。この子はつま弾き行動をしながら慎重にカマキリに近寄ってきたが、第一脚がギリギリで届かない位置で立ち止まってしまった。それでもホームポジションに戻る様子はないから、安全に仕留められると判断すれば食べてもらえるだろう。

 ナガコガネグモの17ミリちゃんの姿も見当たらなかった。

 この時期には珍しく、体長20ミリほどのオニグモもいたのだが、カメラを取り出す前に逃げられた。休眠に入る前に最後の狩りをしようということだったんだろう。


 11月24日、午前6時。

 畳数枚の範囲だけだが、霜が降りていた。

 もはやこれまで。ロードバイクにハンドルカバーを付けることにする。これはレジ袋を流用したものなので見た目は悪いし、2ヶ月くらいでボロボロになってしまうのだが、軽いし、指先に直接風が当たらないので気温10度Cくらいまでならメッシュの指付きグローブで走れるのだ。指が冷えるとブレーキをかけられなくなったりして危険なのだが、綿入りのグローブだとブレーキレバーが遠くなってしまうのである。


 午前10時。

 ナガコちゃんの円網はボロボロのまま。

 廃屋ポイントのソーセージちゃんもお尻を下に向けたままだ。枯れ草でツンツンしてもまったく反応がない。


 午後2時。

 光源氏ポイントにジョロウグモの姿はなかった。昨日カマキリをあげた子もいなくなっている。昨日までは食欲があったのだから、少なくともこの子は産卵ではあるまい。急に気温が下がったのでそれに耐えられなかったんだろう。あとの2匹についてはなんとも言えない。


 午後3時。

 ジョロウグモポイントでは6本脚ちゃんも7本脚ちゃんもいなくなっていた。残っているのは体長17ミリほどの子だけだ。冷え込みがきつかったとはいえ、光源氏ポイントとジョロウグモポイントで合わせて6匹も姿を消したことになる。円網を張り替えない子が多かったのは確かだが、気温の低下をきっかけにして一斉に産卵を始めたということなんだろうか? 


 11月25日、午前6時。

 車の屋根は真っ白になっている。

 ナガコちゃんがいなくなっていた。

 廃屋ポイントでお尻を上に向けているジョロウグモは7匹だった。


 午前10時。

 ナガコちゃんが帰ってきた。お尻が小さくなったようには見えないから、ツツジの葉陰で寒さに耐えていたのかもしれない。

 オニグモのキンちゃんのねぐらの周辺には糸が何本か張ってあった。冬眠前のクマのように食いだめするつもりなんだろうか? この季節の夜間に円網を張っても気温が低すぎて獲物が飛べないような気がするんだが……。


 11月26日、午前7時。

 今朝は霜が降りていなかった。

 ナガコちゃんは今朝も留守にしている。まあ、気温が上がれば戻ってくるだろう。


 午前11時。

 ナガコちゃんが帰ってこない。


 午後3時。

 光源氏ポイントにジョロウグモの新顔が現れた。体長25ミリほどで、ちゃんと円網を張っている。もうすぐ12月なんだけどなあ……。


 午後4時。

 ジョロウグモポイントへ行ってみると、7本脚ちゃんが円網の残骸に戻ってきていた。お尻が細くなったようには見えないが、おそらく産卵を終えたのだろう。


 11月27日、午前10時。

 小型のトノサマバッタを捕まえてしまったのだが……ナガコちゃんもいないのでリリースする。せめて一ヶ月早く出会いたかったな。


 午後3時。

 廃屋ポイントにいる体長20ミリほどのジョロウグモに冷蔵庫に入っていたオンブバッタの雄をあげた。もちろん、ポケットに入れて温めてからだ。

 ゆっくり近寄ってきた20ミリちゃんは第四脚2本の爪を円網に引っかけてぶら下がった体勢でオンブバッタの腹部背面に牙を打ち込んだ。そこから胸部へと少しずつ牙を打ち込む位置を移していった20ミリちゃんは、ふいに第一脚2本と左の第二脚を円網に引っかけてお尻を下向きにすると、まだ脚を動かし続けている獲物を第三脚2本と右第二脚でホールドして第四脚で捕帯を巻きつけ始めたのだった。

 こうして20ミリちゃんはオンブバッタを仕留めたのだが、オンブバッタがいつまでも脚を動かし続けていたのが気になる。気温が下がると注入できる毒の量も減ってしまうんだろうか? 


 11月28日、午前10時。

 車の屋根は真っ白。

 廃屋ポイントの20ミリちゃんはオンブバッタに口を付けていた。まだまだ元気そうだ。


 午後2時。

 ジョロウグモポイントの7本脚ちゃんの隣に6本脚ちゃんが帰ってきていた。2匹とも円網の直径は約20センチだから、産卵して戻ってきて、それでもまだ体力が残っているから居場所を作るために円網を張ったのだろう。積極的に獲物を捕らえようという円網ではないから、人間で言うなら「老後の楽しみ」というところか。ああっと、産卵で疲れているだけという可能性もあるな。その場合は回復したら二回目の産卵に備えてまた大きな円網にするのかもしれない。しばらくの間は観察を続けよう。

 ところで、この2匹の円網の糸は黄色かった。6本脚ちゃんの円網よりも7本脚ちゃんのそれの方がより黄色い。ということは、産卵前の期間だけ無色の糸に戻していたということになるかもしれない。

 そこでまたまた思いつきなのだが、アケビちゃんのお隣ちゃんや廃屋ポイントのジョロウグモたちの例まで考慮すると、ジョロウグモの糸が黄色くなるのは産卵と関係があるんじゃないだろうか? 例えば、この黄色い色素は本来卵のための栄養素で、獲物をたくさん食べて栄養が余っているとか、まだ産卵するには早いとかいう場合には円網用のタンパク質タンクに色素が混入してしまう、とか。

 宮下直編『クモの生物学』では、アメリカジョロウグモは明るい環境では黄色い網を張り、それが獲物の捕獲率の向上に繋がっているとしているのだが、これも原因と結果が逆で、十分な量の獲物を食べられた個体だけが黄色い円網を張ることができるということなのではないだろうか? どういう観察をしたのかは確認できていないのだが、獲物の量を変えずに、黄色い円網を張っている子を明るい環境から明るくない環境に移す、逆に明るくない環境で無色の円網の子を明るい環境に移すというような実験まで行ったんだろうか? まず仮説があって、それを証明するための実験を行う場合には不都合な結果が出るような手法は無意識に避けることもあるんじゃないかなあ。人間だもの。

 そこで提案なのだが、ジョロウグモを十分な量の獲物を与えたグループと不十分なグループに分けて飼育して、秋になった時にどんな色の円網を張るかという実験はどうだろう。これならたった1年で論文を書けるから大学にいる研究者向けのテーマですぜ。


 11月30日、午前7時。

 今朝も車の屋根は白かった。

 廃屋ポイントのジョロウグモたちはお尻を円網にあずけて「く」の字の姿勢になっている子が多かった。寒さのためにお尻の重さを支えきれなくなっているのかもしれない。


 12月1日、午前10時。

 昨夜はかなり激しい雨だった。

 廃屋ポイントでは3匹のジョロウグモが円網を張り替えているところだった。それ以外の子たちの円網はもつれた糸の束くらいしか残っていない。


 午後2時。

 光源氏ポイントに新顔のジョロウグモが現れた。体長は25ミリほどだが、縦も横も約30センチという微妙な大きさの円網を張ろうとしている。もう少し小さい円網なら産卵を済ませた子だろうと判断するところなんだが……。


 午後3時。

 ジョロウグモポイントでは17ミリちゃんと6本脚ちゃんが姿を消していた。体長25ミリほどの7本脚の子はいるのだが、この子の円網は無色だし、体型は女王様と平民の中間くらいで、お尻はソーセージ形だから別の個体だろう。で、この子の円網(?)は縦20センチ、横15センチくらいのほとんど長方形になっている。しかも横糸の間隔が揃っていない。これは産卵済みなのかなとも思ったのだが、そこらにいたダンゴムシをあげると飛びついて来た。食欲はありそうだ。ただ、さすがにジョロウグモの牙ではダンゴムシの背甲を貫けないらしい(牙が滑ってしまうらしかった)。しばらくいじくりまわした後で捨てていた。ごめんね。

 今日はグロスブラックの鞘翅に赤丸2つというナミテントウを5匹ほど見かけた。後で調べてみると、成虫の出現時期は3月から12月なんだそうだ。つまり真冬以外は見られるということになる。成虫はアブラムシやカイガラムシ、テントウムシの幼虫・サナギ・卵を食べるというから、本当に寒い時期でなければ獲物には困らないということらしい。


 午後5時。

 冷蔵庫に残っていた体長40ミリほどのイナゴを弱らせてから廃屋ポイントの25ミリちゃんにあげてみた。すると25ミリちゃんはイナゴに近寄ってチョンチョンした途端に第一脚2本を振り上げてしまった。完全に「お手上げ」らしい。それでもホームポジションに戻りはしないし、円網の糸を切って獲物を捨てる様子もない。安全に仕留められるようなら手を出すつもりでいるんだろうと思う。


 12月2日、午前10時。

 廃屋ポイントの25ミリちゃんはホームポジションにいた。イナゴを食べる様子がないのでイナゴを枯れ草でツンツンすると、円網の端まで逃げてしまう。それほどイナゴが怖かったということなんだろう。そして、この行動は昨日怖い思いをしたということをまだ記憶しているということになるかもしれない。ジョロウグモは恐怖体験をどれくらいの期間記憶しているのかを調べるような実験は行われていないんだろうか?


 12月3日、午前10時。

 廃屋ポイントの25ミリちゃんがイナゴを食べていた。しかし、腹部が変色し始めているイナゴを食べるなんて……。この子の前世は腐りかけの肉の方が美味しいという先進国の人間なんじゃないだろうか。〔んなわけあるかい!〕

 冗談はともかく、気温が低いのであまり食欲がないとか、仕留めるのにも体力がいるような大型の獲物には手を出したくないとかの事情があるのかもしれない。ただ、刺身の国の人間としては新鮮なうちに食べて欲しかったところではある。


 午後1時。

 今日は可燃ゴミの日だったので、体長8ミリほどのハエを3匹捕まえることができた。そのうちの2匹をポケットに入れて光源氏ポイントに行ってみると、ジョロウグモが3匹に増えていた。ジョロウグモは越冬できないとされているから、困難だろうが無理だろうが、今シーズン中にオトナになって産卵することを目指すしかないわけだ。

 その中の縦も横も30センチくらいの円網を張っている子を選んでハエをあげようとしたのだが、円網を突き抜けてしまった。なかなか難しい。2匹目は円網の糸が切れにくいように浅い角度で投げ込む。これでなんとか食べてもらえた。


 午後2時。

 ジョロウグモポイントの新7本脚ちゃんは縦横30センチくらいのほとんど四角形の円網(?)を張っていた。もっと早い時期にオトナになって大きな円網を張っていた子は、部分的に張り替えながらその大きさを維持していけるのだろうが、気温が低い時期に引っ越しをすると、新たに大きな円網を張ることはできないのらしい。

 ハエはもうないのだが、近くの草地でオンブバッタを捕まえた。作者はクモの神様に愛されているのである。〔非科学的だな〕

 オンブバッタを新7本脚ちゃんにあげると、この子はためらいがちに獲物に近寄って牙を打ち込み、すぐに跳び退いた。暴れる獲物を押さえ込もうとしないのは気温が低くて力が入れられないせいだろうと思う。その後、新7本脚ちゃんはオンブバッタがおとなしくなってから口を付けていた。

 6本脚ちゃんと本家7本脚ちゃんは灌木の枝の間にそれぞれ10センチ四方と15センチ四方くらいの円網を張ってそこにいた。食欲はなさそうだが、お尻は大きいから体力はまだあるんだろう。

 ジョロウグモは個体数が多いので、産卵前と産卵後のお尻の大きさを比較できる機会は多くないのだが、ナガコガネグモのように産卵すると目に見えてお尻が小さくなるということはないような気がする。産卵する卵の数が少ないか、1個1個の卵が小さいかだと思う。そして、クモの消化器官である中腸にはたくさんの盲囊(袋状の分岐)があって、そこに栄養を蓄えているのらしい。ということは、ジョロウグモの場合、お尻が大きくなっていてもその中には多数の卵が詰まっているのではなく、ただ単に太っているだけなのだろう。ああっと、ジョロウグモは小さめのお尻でも産卵できるということなら、作者が積極的に獲物をあげてきたのはほとんど無駄だったということになるんじゃないか? まあ「ジョロウグモは小物狙いだ」というデータがたくさん得られたのだからよしとしよう。

 なお、この2匹の円網にはバリアーが付けられていない。というか、この時期、バリアー付きの円網にしているジョロウグモはいないようだ。スズメバチもトンボもほとんどいなくなってしまったし、気温が低下したのであまり働きたくないんだろう。

 ジョロウグモポイントの近くで長さ約60ミリ、最大直径約25ミリというかなり大きな繭を拾った。作者の小指が入るくらいの穴が開いていて中は空っぽ。おそらく体長50ミリ前後、羽を広げると100ミリクラスのガ(多分スズメガの仲間)のものだろう。下向きに生きているとこんないいこともあるのだ。〔「直向き」……もういいや〕


 午後6時。

 廃屋ポイントの25ミリちゃんはホームポジションに戻っていた。どうもイナゴを食べるのは気温が高い時間帯だけにしているのらしい。


 12月4日、午前7時。

 車の屋根は今日も白い。

 廃屋ポイントにいたジョロウグモ6匹のうち2匹は体全体を水平近くまで倒していた。寒いので脚に力が入らないということなんだろう。ここは特に寒い場所なのか、あるいは、そこまで体温を上げられないのか、だな。何度も言うようだが、変温動物でも体温を活動できる範囲内にキープするために日光浴したり、日陰に入ったり、筋肉を動かして体温を上げたりする種は多いのだ。


 午後2時。

 光源氏ポイントまで走ったところで後輪がパンクした。タイヤを外してみるとホチキスの針の欠片のような角張った断面の金属片が刺さっている。

 タイヤとチューブをまとめて交換して一息ついていると、イナゴがいたので咄嗟に捕まえてしまった。たまにはパンクも悪くない。〔いやいや、パンクは普通に不運だろ〕

 しかし、光源氏ポイントにはまともな円網を張っているジョロウグモがいないのである。しょうがないのでジョロウグモポイントまで持って行くことにする。

 ジョロウグモポイントでも新7本脚ちゃんは円網に大穴が開いたままにしているのでパスして、直径約30センチの円網を張っていた体長25ミリほどの子(脚はちゃんと8本)にあげた……のだが、知らん顔をされてしまった。この大きさの円網で産卵済みということはあるまいと思うのだが……。しばらく待ってみても何もしないので、左の第一脚にそっと触れてみると脚を振り上げた。どうやら寒いので大型の獲物を仕留めるのも、逃げるのもおっくうだということらしい。まあ、気温が上がって気が向いたら食べてくれればそれでいい。


 12月5日、午前6時。

 今日も車の屋根が白い。

 廃屋ポイントにいるジョロウグモは4匹になっていた。そのうち、水平に近い姿勢になっている子は2匹だ。残り2匹も円網に寄りかかっているように見える。

 オンブバッタをあげた子は姿を消していて、後には束になった枠糸しか残っていなかった。食い逃げ……とは言うまい。産卵が近かったのなら食欲がなかったのも当たり前だ。そんな状態でよく食べてくれたと感謝したい。


 12月6日、午後2時。

 光源氏ポイントにいるジョロウグモは4匹に増えていた。廃屋ポイントとジョロウグモポイントにも4匹ずつ。作者の現在の行動範囲にいるジョロウグモはこの12匹だけである。

 2日前にイナゴをあげた子はどす黒く変色したイナゴを食べていた。この時期、ジョロウグモが獲物を食べられるのは、晴れた日の昼前から数時間くらいだろう。大きな獲物だと何日もかけて食べるしかないんだろうな。


 12月7日、午前10時。

 廃屋ポイントにいるジョロウグモは6匹になっていた。そのうちの1匹は立木の幹にたたずんでいる。お尻はソーセージ形だが、おそらく産卵を終えた子だろう。

 新顔の子は体長25ミリほど。やや細めだがウインナー形のお尻で円網には大穴が開いている。この時期にオトナになって産卵できるのか、いやいや、それ以前に交接できているのかというのも気になるのだが、円網を張り替えていないのでは作者にできることは何もない。

 鉄製のフェンスの隙間から手が届く位置にいる体長17ミリほどの子は、ちゃんと円網を張り替えていたので、そこらで捕まえた体長10ミリほどの甲虫を鞘翅を外してからあげた。〔過保護だって〕

 この子はゆっくりと獲物に歩み寄って甲虫の腹部後端辺りに牙を打ち込んだ。ジョロウグモは、獲物がトンボの場合は胸部を狙うことが多いし、大きめのガだとまず翅に牙を打ち込んで、それから少しずつ胸部に向かって移動していくということもするのに対して、甲虫やバッタだと腹部を狙うことが多いような気がする。これは非常に合理的だ。トンボは翅がべったり円網に貼り付いてしまうから逃げられることはないし、ガの翅には鱗粉が付いていて粘球が効きにくいので、逃げられる前に牙を打ち込んで飛べなくしてしまう必要があるわけだ。甲虫やバッタについては……安全第一の仕留め方をするということなんだろうかなあ……。


 午前11時。

 スーパーの東側で円網を張っている体長4ミリ以下のゴミグモの幼体たちは8匹に減っていた。他の子は休眠に入ったんだろう。

 少なくとも作者の行動範囲にいるゴミグモたちは1年ではオトナになれないようだ。円網も小さめだし、ゴミも付けているから、その分獲物の量が減るのだろう。休眠して越冬できるのなら無理してオトナになる必要もないわけだ。ただ、この子たちは来年オトナになるのには小さすぎるような気もする。いったい何年かけてオトナになるつもりでいるんだろう?


 12月8日、午前11時。

 殻の直径が10ミリほどのカタツムリが側溝のコンクリートの蓋の上を這っていた。クモも含めて歩いたり這ったりする者たちは昆虫のように飛ぶ者たちよりも低温に強いのだ。

 廃屋ポイントでは産卵を終えたらしいジョロウグモの姿が消えていた。


 午後5時。

 血尿が出た。鼻血も出た。昨日から喉も痛い。体温は37.2度だ。血尿は尿道を傷つけたということだろう。サドルの角度を少しだけ前傾方向に調整してみる。

 上半身の症状は風邪だろうと思うが、熱が下がらないようなら新型コロナの可能性もあるかなあ。


 12月9日、午後7時。

 体温は38.3度。排尿する時に尿道が痛む。


 12月10日、午前9時。

 大変なことになった。『私の[理科教師日記]』というサイトで、ジョロウグモが2度目の産卵をしたという記事を見つけてしまったのだ。「前回の産卵(10月24日)から3週間、2度目の産卵をしていた」とのことである。これを信じるなら、ナガコガネグモよりは時間がかかるものの、ジョロウグモも複数回の産卵を行う能力は持っているということになる。ジョロウグモポイントの6本脚ちゃんや本家7本脚ちゃんも卵巣内の卵が成熟するのを待って2度目の産卵をするつもりでいるのかもしれない。

※ここで大事なお知らせ。いままで参考資料として宮下直編『クモの生物学』を使ってきたのだが、今回もっと古くて高価な吉倉眞著『クモの生物学』(A4サイズで613ページのハードカバーだ!)を入手したところ、この1987年発行の本の方がよりフィールドワーカー向きだったのだ。やはり宮下直編『クモの生物学』は電子顕微鏡や各種分析装置が揃っている大学などでクモについての論文を書こうという研究者のための入門書なのだろう。まあ、論文とは何かということがよくわかるという点では役に立つ本だったな。


 12月11日、午前11時。

 体温は37.1度。ほぼ2時間おきに排尿しているので、まとまった睡眠が取れない。痛いし。

 廃屋ポイントにいるジョロウグモは体長25ミリほどのソーセージお尻ちゃんと17ミリちゃんだけになっていた。ソーセージお尻ちゃんは木の幹にとまっている。脚を動かしているが、円網を張る様子はないから産卵は終えているのだろう。

 17ミリちゃんは角度にして45度くらいで、半径約30センチの扇形の円網を張っていた。最低気温は2度Cだったようだから、これが今のこの子の精一杯なんだろうと思う。


 午後2時。

 尿道はまだ痛いのだがロードバイクに乗る。サイクリストにとっては血尿も精液に血が混じるのもよくあることだ。ヒトの肉体はサイクリングするようにはできていないのである。〔もう若くはないんだぞ〕

 光源氏ポイントにいるジョロウグモは3匹になっていた。トノサマちゃんの他に体長25ミリほどの子が2匹だ。と思ったら、林の中に少し入った所にも3匹いた。こちらはさすがに3匹とも小型で、一番大きい子でも20ミリもない。オトナに近いジョロウグモの場合、開けた場所でないと十分な量の獲物を食べることができないのか、小型だからあえて林の中に円網を張っているのか、どっちなんだろう? 

 そして、このジョロウグモたちの円網を逆光で見ると虹の色が現れるのだ。横糸だけなら粘球だけが透明なのだと言えるのだが、角度を変えると縦糸も虹色になる。これでは糸の内部で太陽光が屈折しているとしか思えない。というわけで、以後『クモをつつくような話』ではジョロウグモの円網の糸は黄色でなければ無色(透明)とさせていただく。なお、「春から秋にかけてのジョロウグモの糸は白い」という論文屋さんもいるのだが、作者が今日観察した円網は張り替えてからあまり時間が経っていないようだったから、古くなると透明度が低下して白くなってしまうという可能性も否定できない。

 いずれにせよ、作者はフィールドワーカーだ。室内実験の結果など知ったことではない。

※『エミュー』というサイトには虹色が現れているクモの円網の画像が掲載されている。興味がある方は検索してみてください。


 午後3時。

 ジョロウグモポイントでは6本脚ちゃんが姿を消していた。残っているのは本家7本脚ちゃんと新7本脚ちゃん、それにこの間イナゴをあげた25ミリちゃんだけである。

 近くの草地で体長10ミリほどのハエを捕まえたので、円網に穴が6個開いている新7本脚ちゃんにあげてみた。ハエに歩み寄った新7本脚ちゃんはハエの胸部に牙を打ち込み、ハエがおとなしくなってからホームポジションに持ち帰って捕帯を巻きつけていた。

 なお、新7本脚ちゃんは、この季節には珍しく背面側に食べかす付きのバリアーを張っている。


 午後4時。

 帰り道でツチイナゴ(多分)を捕まえてしまった。体長は30ミリほどとツチイナゴとしてはかなり小型だが、全身枯れ草色という冬季迷彩だから間違いあるまい。

 廃屋ポイントにはこんな大物を食べられるような子はいないので、光源氏ポイントにいる3匹の円網をもう一度チェックする。まずトノサマちゃんだが、この子の円網は縦80センチ、横50センチと大きいものの、小さな羽虫がびっしり付いている。どうも張り替えてから時間が経っているようなのでパス。その隣の子の円網は直径約20センチだし、藪が深くて近寄りにくい。というわけで、3匹目の体長25ミリほどの子の直径約30センチの円網に投げてあげることにした。もちろん弱らせてからだ。

 25ミリちゃんは慎重に獲物に近づくと脚先でチョンチョンした。するとツチイナゴが暴れ出したので、いったん距離を取る。もう少し弱らせるべきだったか、と思っているうちにまた獲物に近寄った25ミリちゃんは、またチョンチョンしてからツチイナゴの腹部に牙を打ち込んだのだった。割と積極的な子だったようだ。


 12月12日、午前11時。

 今日は暖かいせいか、木の幹にいたジョロウグモが糸を斜めに張り渡して、その途中にぶら下がっていた。しかし、その糸にはもげた脚も1本引っ掛かっている。日本に「畳の上で死にたい」という言葉があるように、ジョロウグモは糸の下で死にたいものなのかもしれない。

 もう1匹、産卵を終えたらしい5本脚の子もいた。この子は主に上下方向に行ったり来たりを繰り返しているのだが、どう見ても円網を張るための動きではない。産卵を終えて身軽になったから、ルンルン気分で動きまわっているだけなんじゃないかと思う。よかったね、お母さん。


 午後2時。

 光源氏ポイントで一番大きな円網を張っているトノサマちゃんは20センチ四方くらいの範囲だけを張り替えたらしかった。


 午後3時。

 ジョロウグモポイントでは5匹のジョロウグモを確認した。体長30ミリ弱の子と20ミリ弱の子がいつの間にか帰って来ていたのだ。

 迂闊な話だが、この2匹が姿を消した時に「ああ、産卵するんだな」と思って観察を打ち切ってしまったのである。言い訳になるが、この2匹がいる場所は本家7本脚ちゃんがいる所の数メートル先なのだが、藪沿いのカーブの向こうなので、見通しの効かない車道をそこまで歩いていかないと確認できなかったのである。

 30ミリ弱の子の円網は直径約20センチ、20ミリ弱の子の方は一束の糸になってしまっているが、おそらく同じくらいの円網だったはずだ。こういう小さな円網をオトナのジョロウグモが張る場合はだいたい産卵済みだと思う。ジョロウグモは一度産卵するとそれ以降は食欲をなくしてしまうのだろう。もともと個体数が多いのだから無理して複数回産卵する必要もないのだろうし。

 コガネグモの仲間のグラデーションお尻ちゃんの姿はなかった。休眠に入ったんじゃないかと思う。


 12月14日、午前7時。

 車の屋根は真っ白。洗濯物も凍っていた。

 廃屋ポイントの17ミリちゃんともう1匹はお尻を体ごと水平よりも下に向けていた。去年はお尻だけを背面側にお辞儀するように傾ける子が多かったのだが、あれは体力が低下していたということなんだろうか? それともお尻の重さの問題か? わからんな。


 午後1時。

 横浜では雪らしい。

 サングラスのレンズにクラックが入っているのに気が付いてしまった。予備はあるので問題はないのだが、面白そうなので瞬間接着剤で修理してみようと思う。


 12月15日、午後2時。

 光源氏ポイントにコガネグモの幼体のグラデーションお尻ちゃんが戻ってきていた。体長は5ミリ弱になっているし、脚も長くなったようだからロッカールームで脱皮してきたんだろう。コガネグモもオトナになるとヒト前でも平気で脱いでしまうのだが、これくらいの子だと、まだ恥じらいが残っているのだな。〔やめんか!〕

 冗談はともかく、この子がいるのはガードレールの鉄板が「J」の字形に曲げられている部分の内側という、獲物は少なそうだが安全度は高そうな場所なので気に入っているのだろうと思う。もっと大きくなったらその体に相応しい大型の獲物がいる場所に引っ越していくつもりでいるんだろう。


 12月18日、午前11時。

 今日はこの冬一番の寒さだったらしい。

 廃屋ポイントにいるジョロウグモは17ミリちゃんだけになっていた。


 午後1時。

 光源氏ポイントにいるジョロウグモは体長25ミリほどの子だけになっていた。ジョロウグモポイントにも体長20ミリほどの子と25ミリほどの子しかいない。


 12月19日、午前6時。

 水たまりには氷が張っていた。

 廃屋ポイントの17ミリちゃんは体全体を水平よりも下まで傾けている。円網を張り替えた様子もないし、もしかしてこの子は交接していないんじゃないだろうか? ジョロウグモの雄は雌よりも先に成熟して雌がオトナになるのを待つ。オトナになるのが遅くなると、もう雄がいなくて交接できないということもあり得るはずだ。いわゆる「嫁のもらい手がない」、というか、「お婿さんがもういない」という状態だな。越冬できないクモにはこういうリスクもあるのだ。


 午後5時。

 17ミリちゃんが姿を消した。産卵だといいのだが……。もしも産卵だとしたら、このところ円網を張り替えようとしなかったのは卵の発生が進むのを待っていたということになると思う。


 12月20日、午後2時。

 最低気温はマイナス1度Cだったらしい。

 光源氏ポイントにいたジョロウグモは1匹だけだった。体長は20ミリほどで、丈の高い枯れ草に手のひらくらいの大きさに糸を張ってそこにいる。産卵を終えて戻ってきたのだろうと思う。


 午後3時。

 ジョロウグモポイントでは新7本脚ちゃんが束になった糸に右の第四脚だけを引っかけてぶら下がっていた。頭胸部とお尻が「へ」の字になっていて、ツンツンしてもまったく反応しないから力尽きたのだろう。合掌。

 その近くにいる25ミリちゃんも第四脚1本でぶら下がって、風が吹く度に左右に揺れている。ただ、この子はまだお尻を上に向けているし、ツンツンするとわずかに反応する。とは言っても、おそらく次の寒波には耐えられないだろう。


 12月22日、午後2時。

 ジョロウグモポイントの25ミリちゃんが円網を張っていた。とは言っても、縦も横も約25センチだから、獲物を捕らえるというよりも8本の脚で踏ん張るための足場なんじゃないかと思う。いずれにせよ、この子は去年の姐さんのように産卵できないまま力尽きていくことになりそうな気がする。

 そして、この子のお尻は頭胸部側5ミリだけが鮮やかな黄色で、それより後ろはグレーの面積が増えて、グレーの地にくすんだ黄色の班が2列に並んでいるという状態になっている。ヒトが年を取ると白髪が増えるように、ジョロウグモはお尻がグレーになっていくのかもしれない。作者はお尻の模様でジョロウグモの個体識別ができるんじゃないかと思っていたのだが、そうはいかないようだ。残念。



 これにて『クモをつつくような話 2021』は完結とさせていただきます。まだコガネグモの仲間のグラデーションお尻ちゃんと体長5ミリ弱のゴミグモが1匹頑張っているのだが、こんな小さい子に手を出すわけにもいかないのでね。

 クモたちがほとんど姿を消したので作者も休眠に入ろうと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ