おまけ (王子視点)
俺がイングリッドといた部屋から出ると、控えていた従者のヤンセンが駆け寄ってきた。
「イングリッド様がスキップして出ていかれましたが一体・・・って、どうされたのです殿下!?そんなふやけたお顔をされて!!」
「ふやけただと、無礼者!イングリッドはともかく、私がふやけるはずが・・・」
ヤンセンに怒鳴る途中、自分の顔が鏡に写った。餌を前にした子犬のようにだらしなく嬉しそうな表情だ。
なぜだ!マッサージされたのはイングリッドの体だというのに!たしかによかったが、その感覚はイングリッドに残るのではないのか。
「一体何をされていたのですか。」
「それは・・・言えない。すこし気持ちよくなっていただけだ。それ以上詮索するな。」
さすがに入れ替わってマッサージされていたというのは威厳がなさすぎる。
「まさか・・・手を出したのですか?」
「詮索するなと言っただろう!・・・いや、どっちかっていうと、手を出されたな。まあ微妙なラインだが。」
正確には俺の体がイングリッドの体をマッサージしていたのだが、やはり感覚的には逆だ。
「手を出されたとは・・・・婚約破棄されるおつもりだったのでは?」
「そのはずだったんだが、様子を見ようと思う。これっきりになっては勿体ない。気持ちが良かったのでな。またしたい。」
イングリッドの体でマッサージされるのは至福だった。婚約破棄となったらもう味わえないだろう。
「そんなによかったのですか?」
「すごかった。女の体って、すごいな。もうハマってしまいそうだ。」
俺は上機嫌で歩いていったが、後ろで立ち止まった従者のつぶやきに気が付かなかった。
「・・・殿下が快楽堕ちしてしまわれた!!」
『第一王子が快楽堕ちした』という噂がもとで、また宮廷中を巻き込んだ一大騒動になるのだが・・・まあ、それはまた別の話だ。