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夢使いの祭り上げ

 親友とライバルになった翌日。

 リンゴはゲーム内の様々な場所で目撃されるようになった。

 能力で具現化と疑似能力の使用が出来るようになったのでそれを試しまくってるのだろう。

 今はたくさんのプレイヤーが特訓に使う洞窟にいる。


「誰にもモンスターはあげない!全部私の獲物だ!」


 そう言うと能力で銃や爆弾などを生成してばら撒いた。

 疑似能力も作成してるので銃を浮かべて撃ちまくるのも簡単だ。


「ほらほら!避けないと巻き添えだよ!」


 そう言われたプレイヤー達は逃げたり能力を使って身を守った。

 数分もかかるこの惨劇は一部のプレイヤーから『無差別台風』と呼ばれている。

 これに遭遇したプレイヤーは時にトラウマになってやめるらしい。

 でも、肝が据わってるアホは時に変なことをする。


 戦闘を終えたリンゴはレベルを確認している。

 そこに弓矢持ちの少女が接近して言った。


「あの!あなたのことを尊敬していいですか!」


 リンゴは静かに作業をしてるところにそう言われて困惑した。

 でも、悪い気はしないので適当に答えることにした。


「いいよ。君が強いなら仲間にしてもいいけどね」


 冗談交じりにそう言うと少女はにっこりと笑って言った。


「冗談でも本気にしますよ?私も強いから決闘で見せてあげます」


「ガチ?」


 少女は無双したリンゴに普通に勝つつもりでいる。

 そんな顔と台詞に一瞬戸惑ったが、リンゴは今強い相手との戦闘経験を欲している。

 だから、超突然なこの決闘を了承することにした。


「まぁ、そっちがいいなら相手になるけど」


「やった!じゃあ、あなたがかったら私が仲間になります。私が勝ったらやりたいことに付き合ってください」


「決闘ってそんなもんだしいいよ。まぁ、負ける気はしないけど」


「では、決闘フィールドにゴー!」


 この会話の直後に2人の少女は転送されて消えてしまった。

 残った被害者のプレイヤー達は今の決闘の成立についてネットで騒ぎ立てた。

 なにせ相手は最上位の10位内に入っているプレイヤーなのだから。

 対戦相手が無名であろうと強いのを見てるので興奮して知らせまくるのは仕方ないことなのかも知れない。




--------------




 決闘のための特別フィールドに転送された2人は向き合った状態で降り立った。

 相手の上位プレイヤーはちゃんと転送されたことを確認するとニヤリとした。


「ありがとうございます。こんなすごい人に会えるなんて思ってませんでしたから、すぐに倒して一緒に遊ばしてあげます。尊敬に値する人だから意味があるんです」


「何言ってるの?よく分からないんだけど」


 謎なことを言う相手にリンゴは普通に疑問を示した。

 それを聞いて相手はここで名乗るべきだと判断した。


「私はこのゲームの実績を積んで8位になったゼンと言います。以後お見知りおきを」


 その自己紹介を聞いてリンゴはハッと驚いた。

 10位以内はゲームの初期からいないとなれない実力と実績を積んだ者だ。

 何度もイベントで上位に入ってないとその領域に至ることは出来ない。

 ネットで調べてそれを知っているリンゴはちょうど後悔している。


「やめときゃよかった」


 焦りと戸惑いに呑まれたリンゴ。『触れずのゼン』はそいつに用があるからここからいきなり戦闘を始めた。

 相手を間違えたと思うリンゴにゼンは容赦しなかった。


「了承したんだから諦めてください!」


 その直後にゼンはリンゴめがけて空気の拳を落とした。

 その一撃がクリーンヒットしたリンゴはたった一撃でフィールドの地面にめり込まされた。


 しかし、その一撃で目が覚めたリンゴは即座に回復能力をでっち上げて完治させた。

 そして地上に戻ってまっすぐにゼンを見た。


「へぇ、今のをノーダメージにしたんですか。どんな手品を使ったのか知りませんがますます気に入りました」


「気に入れられても嬉しくないね。でも、これで私がまだ弱いのが分かった。ここからは一切手を抜かないから覚悟しろ」


「了解です!では、こちらも一切手を抜かずにやりましょう!」


 そう言った直後にゼンは笑顔でリンゴの周囲の空気を消した。

 それをリンゴは『空気が吸える幸せ』を叶えて無効化した。


「おっと?本当にこれは何なんでしょう?」


 夢を叶える能力は誰でも思いつくから逆にこのゲームではとても珍しい。

 誰も思いつかないようなひねった考えの能力がよく上に立つので夢なんて少数派なのだ。

 故に上位のゼンでも意外なことにこれは初見だ。


「知らないなら一方的にやられなさい!」


 リンゴはすかさず土や岩を操る能力をでっち上げた。

 それを使って足下からゼンに攻撃を仕掛けた。

 ド派手に地面を弾けはせるとゼンは空気の操作で空中に足場を作って逃げた。


 それを見ているリンゴはゼンの能力を理解した。

 土煙が上がってるのに空気の足場がその形で見えればヒントになって分かるのかも知れない。

 実際は空中に立つゼンを見て理解したらしい。


「あっぶない人ですね。でも、ここから触れずに倒します」


「無駄無駄だよ!」


 先にゼンが空気弾の雨を用意した。

 それを落とす寸前にリンゴがスピード上昇と刀に電気を纏わせた。

 ゼンはそれを見て勝ち筋を導き出したので攻撃を待った。


「これで決める!」


 そう言ってリンゴはジャンプしてゼンに突っ込んでいった。

 それをゼンはハエでも払うように空気の手で瞬時に打ち落とした。

 ゼンは一気に終わらせるために空気弾の雨と百発の空気の拳をリンゴに放つ。

 打ち落としの時点で回復が間に合わないリンゴは短時間の間に攻撃の嵐を受けて完全に敗北した。


「かっこつけて負けるの一番ダサいです。でも、これは敬意を払って攻撃してあげた結果です。こちらが手を抜かなかっただけよかったと思ってください。だって、本気の10位以内を見れるのは奇跡に近いんですから」


 それを聞いてしまったリンゴは悔しさのあまりに回復しながらパワー上昇で地面を殴った。

 ものすごいパワーによって吹き飛ぶ地面はとても派手だが、ゼンはそれが無駄な演出に過ぎないと思って冷ややかな目を向けた。


「悔しいならそれを無駄に発散せずにため込みなさい。ため込んだ感情を戦場で吐き出せばそれだけで大きな力になります。その力をみんなのために使いましょう」


 最後の言葉を聞いてリンゴは疑問に思った。


「そういえば、君の勝利で求めるものを聞いてなかったね」


「あら、ではあなたを祭り上げましょう。その万能のような能力を飾りにしてギルドを立てるんです」


「なんでそんなことを?」


「私は仲間や友達を作るのを苦手とします。ですから、あなたのように才能のあるプレイヤーを上に立ててギルドを作りたいんです。マスターがあなたなら強さを証明したから問題ないでしょう。やってくれたら私はなるべく自由に動けます。そのために尊敬に値するあなたに戦闘を挑んだんです」


 この話を聞いてリンゴはため息をついた。

 今思えばあの報酬ならどっちでもゼンにはメリットしかない。

 勝っても負けてもうまく立ち回ってギルドのトップをリンゴにすることが出来る。

 一杯食わされたリンゴは敗者なのでしぶしぶ祭り上げられることを了承した。


「ギルド制度で遊ぶためか。そのために使われるなんてしゃくに障るけど、負けたから大人しくなってやるさ」


「往生際がよくて良かったです。だだをこねるようならもう一戦するところでしたよ」


 もう一戦と聞いてリンゴはゾッとした。

 通り名のままに触れさせず、触れずに相手を倒すゼンを今の完成形になる前の能力で一切勝てる気がしないのだ。


「大人しくして良かった」


「そうです。未熟者が成長する前にもう一戦なんて、今度は我慢できずに空気圧で潰しちゃうかも知れません」


 恐ろしい話にリンゴはゾッとしっぱなしだ。

 でも、これが味方になると考えればすごく頼りになる強者は他にいないかも知れない。

 仕方なくが今の関係だけど、これが互いに認め合う仲間同士になれば誰も夢と空気のコンビを倒せないに決まってる。


「あはは…まぁ、これが始まりだけどこれからよろしく」


「えぇ、すぐにでも手当と装備のプレゼントをしましょう。ギルドマスターを頑張ってくださいね」


 ここで2人は握手した。

 これが決闘終了の合図になって2人は最初の広場に戻された。

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