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 私の心配も何のその、なんの事は無く交渉は終了しました。

 あれですかね、マートルがベアリング商会の娘だって、スグに明かしたのが良かったのですかね?

 マートルの実家でもあるベアリング商会は王都でも1,2を争う規模の大商会です。

 その影響力はこんな辺鄙な村まで及んでいるようですね。

 まぁ、マートルが多額の手間賃を提示した事も大きいでしょうが。

 話が纏まった時の村長のホクホクとした顔は暫く忘れられないでしょう。

 そして話が纏まれば早いものです。

 まず埋葬する前に村の斎場で葬儀が行われる事になりました。

 教会に併設された斎場で神父さんが形式通りの祝詞を上げ、それが終わると村人達が棺に入ったご遺体を静かに担いで運びます。

 村の墓地にたどり着くと、埋葬場所にはすでに何人かの村人が待機しておりました。

 どうもこの人達は食料品や日常品の購入等で、生前、マートルのお師匠様と多少の交流があった人達のようですね。

 そして埋葬前に最後の言葉が神父さんからかけられました。

 事前に掘られていた墓穴に、ご遺体の入った棺を置き、参列した私達が一つかみづつ、土を棺へと被せていく。

 後で知った事ですが、この場所は村の墓地の中ではかなり良い場所との事でしたので、これもマートルの影響が大きいのでしょう。

 村と殆ど関りの無かったマートルのお師匠様が墓地の良い場所に葬られるなんて……。

 お金パワー、恐るべし。

 私達が土を被せた後の棺は、村人によって土に埋められていく。

 その間、マートルは普段は殆ど見せない様な悲しい顔をして俯いていました。

 涙は確認できませんでしたが、心の中では泣いていたかもしれません。

 私はマートルのお師匠様とは何の関りの無い人間ですが、それでも村にご遺体を運ぶようにモーリーンを説得して良かった、と思いました。

 だって考えても見てください。

 ここではちゃんとした斎場で葬儀を行い、最後に神父さんから祝詞を貰って、ちゃんと整備されているお墓に埋葬されるという、一般的に考えられる普通の葬儀を行う事が出来ました。

 でも、あのままだったらどうか?

 棺も無く直接土に埋められ、神父さんのお言葉も無し、そして埋められた後は訪れる人も無い様な場所でひっそりと忘れさられ自然に帰る、そんな末路になってしまいます。

 悪い方に考えると、私達が去った後、動物などに掘り返されて、ご遺体が散逸してしまう可能性も否定できませんよね。

 お師匠様のご遺体をちゃんと葬儀を行い、埋葬する事が出来た。

 この事がマートルへのせめてもの救いになってくれたら良いなぁって思ってます。

 こうして葬儀が終わった私達は、今晩、この村に一泊する事とし、また『マツの木邸』を訪れたのでした。


「いらっしゃいませ、またのご贔屓ありがとうございます」


 そう言って出迎えてくれたのは最初の泊まった時にも出迎えてくれた女性です。


「一晩泊まりたいんだけど、大丈夫かな?」


 と、モーリーンは女性に確認します。


「はい、大丈夫です。また大部屋に五人で宜しいですね?」


「大丈夫だ」


 と、モーリーンが返事をすると、


「では、部屋の用意をしますので、また皆様はこちらでお待ちください」


 そう言って女性は奥へと引っ込んで行きました。

 それと入れ替わるように別の店員さんが現れると以前と同じように私達の前にお茶を置いてくれました。

 そのお茶を飲んで待つこと数分、先程の女性が戻ってきて部屋へと案内されます。

 今回も前回と同じ部屋の様です。


「ローズ、私はまた上のベッド使って良いよね?」


 そう言って私は背負っていた荷物を机に放り投げると、ローズの返事も聞かないうちに二段ベッドの上へゴロンと寝ころぶ。


「ちょ、シビル、せめて私の返事を聞いてからそう言う事をしなさいよね。まぁ良いけど」


「えへへ、ごめんね」


「しかし、前に利用した時も思っていたが、この宿はサービスが行き届いていてとても良いな」


「そうなんですか?」


 モーリーンの言葉にマートルが問い掛ける。


「あぁ、冒険者としていると遠出して宿に泊まることも多いけど、普通はもっと粗末な所だよ。風呂などもついてる所も少ないしね」


「そういえば、ここは温泉がありましたね、ありがたいです」


「そうだ温泉!みんな温泉行こうよ!」


「そう、ですね。死者の穢れは出来るだけ早く払った方が良い、と言いますし、温泉で洗い流すのも良いかもしれません」


 そうして私達は温泉へと向かいました。

 すると途中で、私達を部屋に案内してくれた女性と出会います。


「あ、ちょうど良かった。お夕食は部屋と食堂どちらで食べられますか?」


「そうですね、前と同じく食堂でいいよね?」


 私の声に皆、頷く。


「食事の前に私達はお風呂に行ってきます」


「そうですか、もし宜しければ風呂にお飲み物をお持ちしましょうか?」


 と、予想外の事を聞いてきました。

 そんなサービスもあるんだ、本当にいたせりつくせりじゃない。


「じゃ、お願いします」


 私がそう言うと、女性はお辞儀をして離れて行きました。

 そして私達はお風呂へ!

 このお風呂、前も思ったけど木の良い香りがするんですよね。

 温泉だからでしょうか?

 そうこうしているうちに従業員の方が飲み物を運んできました。

 匂いからして冷やしたハーブティのようです。


「これはレモンバームのハーブティです。レモンバームには肌をなめらかにする効果やリラックス効果があるとされていて、ここの温泉との相乗効果もピッタリなんですよ」


 そう、効能を説明してくれた従業員さん。

 湯船からあがり腰を下ろして冷えたハーブティを堪能する。

 独特の香りと仄かな甘味がゆっくりと身体にしみわたる様なのど越しです。

 十分にお風呂を堪能した私達は食事へと向かう。

 私は少しのぼせてしまったのか、気持ちが良い感覚と共に、ある種のだるさも感じていました。

 そしてお風呂上がりの食事を堪能した後、部屋に戻ってきてベッドを見るなり、急激に疲れが襲ってくる。

 私は倒れ込むようにベッドに潜り込むと、そこから先の意識は途切れてしまったのでした。

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