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「シビルはよくあの『魔法錬成装置』を停める事が出来ましたね。この部屋で見つけた資料を読みましたが、書いてある内容が複雑で、簡単に読み解く事は出来ませんでした」
「私だって良く分からなかったよ。でもなんとかしなきゃって気持ちが一杯で、必死で操作しただけだったんだから」
私の言葉にマートルが驚いたように言いました。
「そ、そんな!シビルは確証が有って操作したわけじゃなかったんですか?」
「確証なんて有るはずないじゃん。だってこの部屋、すっごい寒さだったんだよ?皆に防御魔法をかけてもらってたのに、身体がドンドン凍えて来て手は上手く動かなくなるし、あと何分もこんなところにいたら死んじゃう、ってそればっかり考えてたんだから」
「だからってそんな『テキトーに操作したら上手く停まりました』みたいな事言わないの。マートルだってどう反応したら良いか分からない、って顔になってるじゃない。……でもまぁ。そっちの方がシビルらしいけど」
ローズは呆れたような顔をして言いました。
「まぁ、その、ここは上手くいって良かった。それで良いじゃないですか」
そう、ヴィクトーリアがフォローしてくれる。
「そうだね。自身が理解出来ない状態に陥った時は、直感に従うのも一つの手だよ。あとで考えると、そのお陰で危険な目に会わなかった、と思えることが私にも何度かある」
そう言ってモーリーンも苦笑いを浮かべました。
「そうそう、上手く行ったんだからそれでよし、って事でいいじゃん。私だって頑張ったんだから……」
私はちょっとむくれた様に言いました。
ホントに死にそうな目に会いながら頑張ったんだもん……。
もっと皆、優しく褒めてくれても良いよね?
「だからシビル、貴女がそれを言わないの。……でも、まぁ、この話はここまでにしましょう。話し合うべきはもっと他にあるんだから」
ローズは手を叩きながらそう言って、自身に注目を集めました。
「話し会う事って、何?後は帰るだけじゃないの?」
私はローズの言った意味がよく分かりませんでした。
「……貴女ねぇ」
ローズはさらに呆れたような顔をしました。
「ここにはマートルの師である方のご遺体があるのよ?それをそのままにしておくわけにはいかないでしょう?」
「あっ!」
「……そう、ですね。師のご遺体をそのままにしておくわけにはいきません」
「氷の精霊のお陰、と言うのもなんですが、今はご遺体の損傷は見られませんが、これからはそうもいきませんからね」
マートルの言葉にヴィクトーリアも頷いて言いました。
「そう言えば、この部屋も時間が立つにつれ、ドンドン温かくなってる気がするね」
モーリーンもそう言って同意する。
「そっか、早く埋葬しないとご遺体が痛んじゃうんだ」
今更ながらその事に気が付く私である。
モーリーンが言った通り、さっきまでは凍えるほど寒かったこの部屋も、今では寒さに震える事は無くなっています。
初夏という季節に従えば、そのうちに汗ばむぐらい暑くなるのは容易に想像出来ました。
「では、このご遺体は小屋の外に埋葬するって事で良いね?」
モーリーンの言葉にマートルは同意します。
「よし、問題無いなら今のうちに小屋まで運んでしまおうか。運ぶのは私に任せてもらおう」
そう言ってモーリーンは屈み込むと丁重に遺体を担ぎ上げ、ドアへと歩みを進めたのでした。
そしてご遺体を担ぎ上げているモーリーンを先頭に、私達は地下通路を抜けて、再び小屋へとたどり着く。
窓から外を見ると、先程まで激しい風と雪が叩きつけていた、とは思えない程静寂に包まれていました。
上を見上げると厚い雲に覆われていた為良く分からなかったけど、今ではその雪を降らせていた雲もスッカリ無くなり、星空が見えています。
外はまだ雪が積もっていて地面が見えませんが、屋根に積もっていた雪が水滴となって流れ落ちている所をみると、一晩開ければ雪も少なくなるでしょう。
「まだ雪が大分残っている。ご遺体はひとまず雪の中に埋めて、明日埋葬する事にしようか」
モーリーンの言葉に、私達は同意して頷きました。
外にでて、小屋のスグ外の雪の上にご遺体を静かに置くと、それに雪を静かに被せて行く。
その作業はモーリーン一人で行いましたが、私達もその間、目を話さずに見守っていました。
目を離してはいけない、そんな気持ちだったのです。
なんの関りも無いはずの私達でさえそんな気分になるのに、ご自分のお師匠様のそんな姿を見る羽目になったマートルの心情を推し量る事は出来ませんでした。
一晩では解け切らないであろう、そう思われるであろうコンモリとした雪山を作ると、モーリーンは静かに作業を終えて小屋に戻り、私達も同じく小屋に戻りました。
そして、各自、思い思いの場所に腰を下ろすと、自分の荷物から食事や水を取り出しては口に含む。
凍えそうな先程とは比べ物にならないとはいえ、外に雪が残っている為か、床にじっと座っていると肌寒さを感じます。
私は寒さを避けるように見習い魔術師のローブを肌に密着させて、フードを深く被り直すのでした。




