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44 バックレー子爵夫人のひみつ

「ふふふ、今フリーダから手紙をせて貰ったんだけど……。もう驚きなの!誰から来た手紙か当ててごらんなさい」


 その言葉に私とローズはお互いかお視合みあわせる。

 そんな事言われたって、バックレー子爵夫人に会ったのは今日が初めてだよ?

 分かるわけないじゃん!


「ごめんなさい、分からないわ、マデリン。降参です」


「私も分からないです……」


「そうよね!分かるはずないわよね!ふふふ……。もっとかおを寄せて、耳を貸して」


 何事だろう?と私とローズはかおを寄せる。


「聞いたら驚かずにはいられないわ。実は……なんと皇太子殿下からですって!」


「「えぇ”-!!」」


 思わず出る驚きの大きな声。

 しかし次の瞬間、慌てて自らの手で口をふさいだ。


 ここここ、皇太子殿下ってあの皇太子殿下?

 勿論もちろんこの国には皇太子殿下といったら一人しかいない。

 余りの予想外の人物に唖然とする私とローズ。

 ここまでもったいぶって言うからには、手紙っておそらくは恋文ラブレターだよね!?


「絶対、ナイショでお願いしますわよ」


 そう言ってバックレー子爵夫人は妖しく笑った。

 その後も、テーブルを囲みながら一緒におしゃべりなどをしたが、バックレー子爵夫人の夫はどうも生きているらしい、と聞いた時は他人事ながら一瞬眩暈がしたのだった。

 いやいやいや、それはまずいでしょう、皇太子殿下、何やってるの?

 ローズも若干貌かおが引き釣っている。

 私やローズは社交界に疎いから知らなかったが、よくよく話を聞くと、皇太子殿下の女癖の悪さは良く知られた悪癖らしい。

 ……あぁ、この国の未来はどうやら暗いらしいです。






§ § §






 その後、私はローズに手を引かれるようにしてマデリンたちと別れる。

 私たちはそれなりに人眼を惹くのか、その後も何人もの人たちと挨拶を交わす。

 私はというとローズに倣って挨拶をしながら、テーブルからテーブルへ。

 料理を少し味視しては挨拶をし、また別のテーブルで味見をしては挨拶を交わす、という事を繰り返していた。

 むー、やっぱり落ち着いて食べられないな……。

 とはいえ、以前の様に人眼に着くほどガッツいたりしない。

 私もちゃんと学習したよ!


 そしてローズにひきつられるようにしてバルコニーの済へ移動し、そこでローズは深い溜息をついた。


「はぁ……。やっぱり疲れるわね……」


「そうね~。お料理も満足に食べられないし……」


 と、私が言うとローズはクスクスと笑いだし、


「もう、シビルはそればっかりね。と言いたいけど……。実は私もお腹がすいちゃった」


 といって、私が手に取ったお皿から、ひょいっとお料理を摘まみだすではありませんか。


「あー!もう、ローズ!それは私は取ったお料理だよ!」


「あら?私の為に取っといてくれたんじゃなかったの?」


 と、言って笑みを浮かべる。


「もう、でも良いわ。ローズはそこにいて。私がお料理取ってきてあげる」


 私は再び室内に戻ると、すこーしだけ不作法を承知の上でお皿にお料理を多めに取り、ローズの待つバルコニーに戻る。

 辺りを視ると、如何にも良い感じになっている男女がチラホラ。

 ふーん、カップルってこんな感じで成立するのね。

 などと思いながら、テーブルにお皿を置いた。


「ありがとう、シビル」


「ねぇローズ、あそこにある動物の形をした大きな飴細工とかどうやって食べるの?」


「……シビル。あの手の物はて楽しむもので有って食べる物じゃないのよ?」


「えぇー!……そうなんだ、美味しそうなのにもったいないね」


「もぅ、シビルは本当に食べる事しか興味がないのね。気になる男性とかはいなかったの?」


 おっと。

 そんなこと言われても、来た男性は皆ローズ狙いだったじゃん。

 私もそれなりに話題を振られたりしたけれど、あくまでローズのついでって感じだった。


「ローズはどうなのよ。大体、男性は皆ローズを狙らってたんじゃないの?」


 と、私が言うと、ローズは苦笑しながら、


「あそこまであからさまだとねぇ。正直お話も退屈過ぎて。あれなら魔術師ギルドでしてるお茶会(ティーパーティー)の方がよっぽど楽しいわね」


「でもローズはこれで社交界デビューも済んだことになるんでしょ?それ侯爵夫人が聞いたら大変だよ?」


「あらシビル、勿論もちろんお母様にはナイショよ?お母様の耳に入れて、いたずらに心を煩わせてダメよ」


 と、言ってローズは拗ねたようなひょうじょうを浮かべた。


「と言っても私も考えて、上手にふるまったつもりだけどね」


「うん、うまくお断りしてたよね」


「そうでしょう?侯爵令嬢として及第点は付けられると思うんだけどねぇ。お母様の時代とは違うから」


 そこで話は途切れ、私もローズもバルコニーから外を眺める。

 その視線の先に広がるのは、柔らかな月の明かりが照らす王都の夜の風景。


「あ、ねぇねぇ、あっちを視て、シビル」


 ローズが囁くような声で私の腕を引っ張り、その方向にかおを向けると、


「ぁっ!」


 私も小さな声を漏らした。

 そこには先ほどた、良い雰囲気になっていた男女がなんと人眼も憚らずキスをしている姿が!

 その姿に私とローズは小さな声できゃぁきゃぁと言いながらも、隠れる様に覗きするのであった。

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