表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/54

02 将来の可能性

「お前たちは以前から魔法マジックの練習をしていたのか?そうとしか考えられん!」


「いえ……?少なくとも私はそれまで魔導書など読んだことがありませんでしたよ?シビルもそうでしょう?」


「お父様に本の持ち出し許可をもらうまで、魔法マジックなんて使ったことがありませんでした」


 伯爵()はすごい剣幕だ。

 私、なにかやっちゃったの!?

 でも、普通に本に書いた会った通りにしただけだよね?

 毎日練習、集中して、イメージして、炎の魔法を使っていただけだ。

 というか私もローズも本に触らないで火炎の手(バーニング・ハンズ)を使えるようになったのは、ここ数日の事だったりする。


「本に記述されていた通り、毎日鍛錬していたら、本に触らすとも使えるようになりましたが……」


 伯爵()テーブルにおいてある本を手に取ると、パラパラとページをめくる。


「間違いない……。これは確かに書庫に……私も使っていた魔導書だ」


 伯爵()はそう言うと、あとは聞こえないような声で何事かをぶつぶつとつぶやいていた。

 なにか怒られるかもしれない!

 そう思って身を縮めていたのだけど……。

 そうはならなかった。

 伯爵()は本に手を触れたまま、を閉じ始め、そしてしばらくすると、その指先に火が灯った。

 そしてそれを前方へと飛ばす。


 火炎の手(バーニング・ハンズ)魔法マジックだ。

 まぁ、元々書庫にあった伯爵()の本だし、初級魔法マジックぐらい使えてもおかしくないよね。

 ただ、その炎は私やローズが飛ばしたものよりもずっと小さく、飛んだ距離も短かった。


 そして何かに満足したかのように頷くと、今度は本から手を離し再びを閉じる。

 その様子をしばらく見守っていたんだけど……。


「……やっぱりダメだな」


 と、言ってかおしかめる。

 そして私の方にかおを向けると。


「シビル、お前はなぜ魔法マジックに興味を持った?ローズになにか言われたからか?」


「えっ……と」


 うーん。なんと説明するべきか。


『うちの財政が火の車なのをしったので、魔法マジックでも覚えて早めに独立して、将来、資産家のスケベ親父に嫁がされるのを避けるためです』


 なーんて、正直にいえないよね。

 なんて答えようか……。考えがまとまらず、そのまま押し黙っていると。


「先ほどローズも言っていたが、本当に宮廷魔導士(コート・ウィザード)になりたいのか?」


「えっ……」


 正直、そこまで明確なプランは無かったが、他に考えも浮かばなかったのでとりあえず頷いておく。


「そうか……。だが宮廷魔導士(コート・ウィザード)とかそんな簡単になれる物じゃないぞ」


「はい……」


「だが、目標を持つのは悪い事じゃない。本当になれるかは分からないが、努力はしてみるべきだな」


「わかりました」


「邪魔をして悪かったな。……それと本は持ち出しても良いが、必要無くなったら必ず書庫に戻すのだぞ」


 そう言うと、伯爵()はスタスタと立ち去っていった。


「ふー。怒られるかと思った」


「よかったじゃない、シビル。伯爵も認めてくれたよ」


「でもこれって、もし途中で投げ出したら、かえって怒られるんじゃないの?」


「そうかも!でもその時はその時よ」


 そう言って、私達は笑いながら練習を続けた。






§ § §






 それから数週間が経過し、私達は再び書庫に足を運ぶ。

 魔導書を返却する為だ。

 と、言っても飽きたり挫折をしたわけじゃない。

 この初級魔法(マジック)教本に載っている魔法マジックは全部使えるようになったためだ。

 新たな本を探す過程で、また四つん這いになりローズを背に載せて重たい思いをしたのはまた別のお話。


 持ち出した新しい魔導書を片手に、また庭園ガーデンの石造りの建物フォリーへと急ぐ。


「ふーん、今度の本は氷の魔法マジックが中心なのね。どう違うのかわからないけど、火の魔法マジックより氷の魔法マジックの方が難しいみたい」


 火を起こす手段は魔法マジック以外にもいろいろあるけど、氷にする手段は殆どないもんね。

 自然の摂理がそうなってるから魔法マジックもそうなってるのかな?良く分からないけど。


 本に書かれた堅苦しい内容の前文を、例によって読み飛ばしながらローズと一緒にペラペラとページをめくる。


 次はどんな魔法マジックが待っているのだろう。

 私はワクワクが止まらなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ