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21 精霊石

  その日の講義は魔法マジックの実習だった。

 なんと、いよいよ魔術師の杖メイジスタッフ取得に向けての第一歩が始まるらしい。

 これを手に入れる事によって、ようやっと初心者見習い魔術師から、普通の見習い魔術師へとなる事ができる。


 王立になる前の、旧魔術師ギルドでは、これを与えられてようやく、正魔術師メイジとされていたようだけど、旧魔術師ギルドが亡び、今の王立魔術師ギルドが設立されたときに、見習いの早い段階で取得できるように改められたようだ。


 たぶん粛清で正魔術師メイジの数が減りすぎちゃって、見習い魔術師の能力向上が急務だったんだろうな。


 魔術師の杖メイジスタッフの取得は正魔術師(一人前)になる為の重要な第一歩!ということで同期の皆にも興奮の色がえ隠れしていた。

 私も、すっごい楽しみだよ。


 ざわめきも、クラフ先生の登場によりすっかりと静まりかえった。


「ではこれから鎮守の杜へ移動します、君たちはそこで精霊の力を秘めた石を探さなくてはいけません。これは一つ以上必要ですが、一つでもあれば問題なく魔術師の杖メイジスタッフを作成できます」


 そこでクラフ先生は一旦言葉を区切るとぐるりと私達を視回みまわし、


「精霊の力を秘めた石――精霊石は、あくまで自分自身の力でつけ、入手しないといけません。自分につけられない、と言う事は精霊の意思が自分自身に届いてないという事です。もしここで一つもつけられない場合は、残念ながら適性が無し、ということで王立魔術師ギルドからは出て行ってもらわなければなりません」


 なんと!魔術師ギルドから放免されてしまうなんて!

 この説明にざわつく私たち。


「静粛に!しかし、心配する事はありませんよ。その適性をクリアした者しか王立魔術師ギルドに入門する事ができません。つまり、君たちなら全員がそのような心配が無い、という事です、理解しましたね?では、移動します」


 鎮守の杜と言うのは魔術師ギルドの敷地の中にある樹林帯だった。

 この中にある大きな石碑サーメットヘッドストーンに祈りを捧げる事で入手出来るというお話だ。

 私たちは順番にこの杜の奥へと向かう。


「じゃシビル、お先に行ってくるね」


 先に順番が来たローズを手を振って視送みおくってから、私の番までどのくらい待っただろうか。

 ついに私の番が来た!


「ではシビル、貴女の番ですよ」


「はい」


 と返事をして私は杜の奥へと足を進めた。

 暫く歩き、最初にえて来たのは炎の上位精霊であるイフリートが祭ってある石碑だった。

 私はそこで教えられた通り祈りをささげる。

 すると近くの木の根元でキラリっと何かが光った。

 近づいてみると、紅い石。

 触らずとも火の属性を秘めていることがわかる。


 ……これが精霊の力を秘めた石?


 私は恐る恐る手を伸ばすと、触れた瞬間、まるで石が吸い付くように手のひらに収まる。

 ……綺麗、宝石のガーネットみたい。


「精霊さんありがとう、もらっていくね」


 そしてそのまま次の石碑へと足を延ばす。

 次に現れたのは土の上位精霊であるタイタンが祭ってある石碑。

 私はそこでも先ほどと同じように祈りをささげる。

 するとまたキラリと光るものが。

 近づいてみると今度は黄色の石。

 やや黄色ががった琥珀のような石だ。


 これは土属性なのかな?

 先ほどと同じように精霊さんにお礼を言ってから次の石碑へ。


 次に祭られていたのはポセイドーン。

 祈りをささげて得られたのは、深い蒼色をたたえたまるで瑠璃るりのような石。


 次はガルーダが祭られた石碑、得られたのは緑色のクロムトルマリンのような石。


 次はシヴァが祭られた石碑、得られたのは透明の水晶のような石。


 次はユーピテルが祭られた石碑、得られたのは紫色の紫水晶のような石。


 次はアポローンが祭られた石碑、得られたのは光を反射するライトオパールのような石。


 最後にハーデースが祭られた石碑に祈りを捧げ、得られたのは漆黒の縞瑪瑙オキニスのような石だった。



 これで最後かな?精霊の基本は八属性だもんね。

 なぜか石を手に入れる度に魔力が消費されてるような気がする。

 私は重い足取りで皆のいる場所に帰った。


「シビルお帰り、遅かったねって、なんかかお色悪いわよ?大丈夫?」


「平気、ちょっと疲れただけ……」


「そう、ならいいけど……。それよりてよシビル、私は六属性の精霊石が取れたわよ。シビルは?」


「ん……。私は八個だけど……」


「えっ!?八属性って……それって全部ってことじゃない!」


 ちょっ、ローズ声が大きい!

 案の定周りにいた同期たちがざわめき始める。


「おい?聞いたか?シビルは八属性だってよ」


「ローズさんは六個か、さすがだな」


「マジかよ……俺なんか四つなんだぜ?」


「アンタなんかまだましでしょ?私は二属性しか……」


「ねぇねぇ、一個しか取れなかった私の話をする?」


「アンタはもっと頑張りなさいよ!」


 ほら、また注目されちゃったじゃん。

 ん?まてよ?これは良い意味で注目されてるってことだから、これはこれでいいような気がする。

 ローズは「さすがにシビルね」と自分の事のように喜んでくれた。


「では、全員戻りましたね。今手に入れた精霊石は決してなくさぬように。精霊からの贈り物はそう頻繁に手に入るものではありませんから。もう二度と手に入らない……と、いう事はありませんが、そのつもりで扱ってください」


 そしてクラフ先生は最後に重要な一言を言ったのだった。


「では次の実習までに手に入れた精霊石全てに魔力を注いでおくように、精霊石はクリスタルとは違って簡単には満タンになりません。魔力枯渇にはくれぐれも注意するように!」


 ほぇ?

 全部?

 八個の精霊石を次の実習まで全部魔力満タンに??


 それまでの羨望せんぼうに近い眼差まなざしは一転して、

 生暖かい視線に変わり、ローズも頑張ってね、と言わんばかりにポンと肩をたたく。


 うぇーん、聞いてないよ~。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が、前世の記憶などなしに、自然に魔導に導かれて行くのがいいですね。 [一言] ここまでのところ、ほのぼのしていて素敵です。
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