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20 ローズとシビル

 その日の午後の講義は魔法マジックの実習だった。

 クラフ先生からお小言を食らい、悪い意味で同期の注目を浴びている私は、名誉回復するために頑張らなければ……。


 その点、ローズは、良い意味で注目されているらしく、同期の――特に男子から話しかけられる機会も多い。

 実はローズは同期の男性にとってはかなりの優良物件なのだ。

 王立魔術師ギルドに入門するには魔力を持ち、かつ多額の学費が必要である。

 故に入門するのは貴族、もしくは貴族の血を引くが爵位のない――法律上は平民で有る者が多い。

 そしてそのような立場の者でも、家業を継ぐ立場にない者が、立身出世を夢見て王立魔術師ギルドに入るのだ。


 ローズの父であるコーンウェル侯爵は、外務省に在籍しており、国王の信も厚く、今は外国に総督として赴任している。

 そして意識の高い者であればその程度の情報はすでに入手しているだろう。

 侯爵の娘――優れた魔法の才能――そしてローズは整ったかお立ちの歳の割には美人さんなのであった。

 勿論もちろん体躯スタイルもよい。

 王立魔術師ギルドに入門できるほど頭が良い彼らにとっては、将来のコネクションの為、はたまたあわよくば未来の恋人候補になる為にお近づきになりたい、そう思う者が出ても不思議ではないのだ。


 と、言うわけでさすがに講義中に話しかけられる事は無いものの、講義の合間や、休み時間などには男子、そして女子にも話かけられる事が多かった。

 それに対し、ローズは私がても優雅に対応している。

 失礼のないように自分からそれとなく話題を振ったり、不自然のない間隔で相槌を打ったり、相手に不快感を与えない様にやんわりとお断りしたり……。

 さ、さすが王族とお茶会ティーパーティーをした事があると自慢げに言っていただけはあるよね……。


 そして私はと言うと、さすがに無視はされないものの、どこか皆よそよそしい感じだ。

 ローズといつも一緒にいるから、仕方なく話題を振る、そんな感じ。


 うー、座学はともかく魔法マジックは私の方が得意なはずなのに……、解せぬ。


 今日はいよいよ騎獣マウントに騎乗する事が目的らしく、事前に騎乗用の服に着替えるよう通達が来ていた。

 なんということでしょう、騎獣マウントは基本スカートでは乗らないそうなのだ。

 今までドレスのまま、横乗りで空を飛び回っていた私たちは一体……。

 とはいえ、裾の長い騎乗用キュロットスカートなので、傍目には普通のスカートにもえなくはない。

 私はひとりでの着替えもへっちゃらだけど、ローズは地味に着替えに苦労しているらしい。

 着替えと言えば今までは侍女レディーズメイドにやってもらってたから仕方ないか……。


 いち早く着替え終わった私はローズを迎えに行く。


「ローズまだー?」


 コンコンとノックしてから、返事も待たずにドアを開けると、ローズはいまだに服と格闘中だった。


「あ、シビル!手伝って!」


「早くいかないと遅刻しちゃうよ、しょうがないなぁ~」


 といいつつ、私はニマニマしながら着替えを手伝ってあげる。

 さすが侯爵令嬢!知識のない私からみても上等品なのは分かる。

 ローズの騎獣マウントの蒼い鷲、それに合わせたような薄蒼に染められたその騎乗用服はローズにとてもとても似合っていた。


「はぁ……。侍女レディーズメイドだけでも連れてきたいわねぇ……」


「それは無理だよ……。ローズもこの環境に早くなれないと」


「早く正魔術師(一人前)になって、この寮から出るしかないわね……」


「これでよしっと。うん、ローズ。とっても似合ってるよ」


「ありがとう、シビル。貴女も似合ってるわよ」


「早く行こう、遅れちゃうよ」


 私達は駆け出すように講義が行われる場所へ向かった。






§ § §






「本日の課題は大地ジオのクリスタルで作り出した騎獣マウントを自在に操ることです。上空で騎獣マウントを問題なく飛ばすことが出来ると判断したら合格となります」


 私は魔力を注入した大地ジオのクリスタルを紅い鷲へ変化させると、隣で同じように蒼い鷲に変化させていたローズに「行こう!」と声をかけて空に駆けだした。

 

 何度も空を駆けている私達は抜群の安定感でゆうゆう空を飛んでいる。

 何時ものようにローズが私よりも少し高く飛んでいるのは相変わらずだ。

 曲芸飛行みたいな事をするのであればまた別だけど、空を駆けるだけならもう失敗なんてない。

 私達は左回りでゆっくりと上空を旋回している。

 風が気持ちいい~。

 今日は若干曇っているけど、それでも雲の切れ目から覗く空の蒼さがとてもきれい。

 下をると、何人かの者が地上で騎獣マウントを移動しているのがえたが、まだ空を飛んでいる者は私達以外いない様だった。

 初めての時はやっぱり不安で怖いもんね。


 二人でニ十分ほど、久しぶりに優雅な空の旅を楽しみ、ゆっくりと降下を始める。

 そのタイミングで数人がおっかなびっくりという感じで下の方を飛んでいるのがえた。


 その姿をて私達はお互いかお視合みあわすと、フフフと笑った。

 安全にゆっくりゆっくりと着地する。


「……ローズにシビル。貴女達は合格です。ですがシビル、貴女のその騎獣マウントは何ですか?鳥……なのは分かりますが、こんな鳥は見た事がありません」


「これは……ローズとおそろいの鷲です……。紋章から拝借しました」


「鷲?これがですか?……シビル、イメージはあくまで正確でなければいけません。騎獣マウントに関しては合格ですが、これは減点対象になりますよ」


 え”-!!

 ちょっと抽象的になってるけどこっちの方が可愛いじゃない!かわいいよね?カワイイんじゃないかな?

 横をるとローズが笑っているのがえた。


 ……クラフ先生もローズもひどいよ、シクシク。

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