10 ダークマターと異次元収納
「ダークマター?」
自室で『グリモア』をパラパラ捲っている時にそんな記述を視つけ思わず声に出してしまう。
ダークマター――それは世界を構築する謎の暗黒物質である、知覚は出来ないが必ず存在する物と定義づけられているが、知覚した瞬間、その存在自体が変化する物とされる。
その正体については諸説ある物の、未だ明確な結論は出ていない。
??????
何これ?、意味不明ね。
ん?何か註釈があるけど?
註:異次元収納の重要な要素。
異次元収納っと。
ペラペラぺら、頁を捲ってその項目を探す。
うーん、良く分からない!
長い間、あっちの頁視て、こっちの頁視てと『グリモア』と格闘したところ、ようやくなんとなく少しだけ分かってきた。
――無数にある異次元世界――
この時点で良く分からないんですが?
――の中には、不完全な壊れている世界が複数あって、その壊れた世界には時間という物も存在しないという――
時間が存在しないってどういうことなの?
――その世界の次元と私達の世界の次元を一時的に繋げ――
次元を繋げる???
――物質を格納しておけば、時間経過が無く劣化が進まない――
ここはわかった!
ツマリ、詰まる事、つまれば、異次元収納に入れて置いた物は傷んだりしないって事ね。
それとは別に、そのものズバリの<収納>って魔法もあるみたいね。
そっちは維持する魔力に準じた容量があり、時間も普通に経過するみたい。
私達が『グリモア』を不可視化する時に実行した「アストラル化」って言うのもその一種らしい。
イメージも載っているみたいだし一寸やって視よう。
と、ちょっとやってみたのだが……
結論としては無理でした、残念!
イメージが頭に流れ込んでくるのだが、そのイメージがさっぱり分からないのだ。
真っ黒の闇がこう、グルグルグルって渦巻いてて……、そして……。
あんなものイメージできないよ。
だけど<収納>の魔法は、あまり労せず使えるようになった。
イメージとしては大きな箱だ。
私はきょろきょろとあたりを視まわして適当な物――手鏡を手に取ると、
<収納>
スゥーと消える手鏡、同時に頭の中に今放り込んだ物のリストが現れた。
次は取り出して視ると、手に手鏡が戻る。
おー!!これは便利ね!
今はまだ『グリモア』に頼らないと使えないけど、それでも入れた物が何処でも取り出せるとなると便利な魔法だ。
私はかたっぱしから眼についたものを<収納>に格納する。
何処まで入るんだろう?
よーし試してみよう!
§ § §
「シビル様!お召しかえのイブニングドレスはどこにやったのですか?ここの手鏡は?櫛も無いじゃないですか!いたずらもいい加減にしてください!伯爵や奥様にご報告させていただきますからね!」
ちょっとやりすぎて侍女に怒られちゃった……。