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第八話 初めての外

赤ん坊の匂いは特別なものだ。なんだか甘ったるいような、それでいて嗅いだ人の心を落ち着かせるような。しかしまあ不思議なもので、飽きてくるとこの匂いは苦痛なのである。生前はバニラアイスが苦手であったがそれと同じで、くどくなると吐き気を催すほど絶妙に甘すぎる。それがあろう事か自分から発せられる匂いなのだからたまったものではなく、何度か戻してしまったりもした。


そんなこんなで、気がつけばこの生活を初めてから1ヶ月が経った。 1ヶ月健診でも大きな問題はなかったようなので、只今から初めてとなる外出をする。


フードのようなものが付いている抱っこ紐に耳まで包まれて、健診と同じような格好で出かける。


11月も終わりがけだから、1ヶ月前とは比べ物にならないほど寒くなっている。どうしても顔には冷たい風が直接吹き付けることになる。母親が申し訳程度に暖かい息を自分に吐きかけているが、そんなに変わらない。父親は「さやちゃんあったかいねー」と言いながら冷たい手を徐に赤ん坊の顔に当てないでくれ。


歩いて2分くらいだろうか、近くの公園に着いた。今回の旅の目的地はここのようだ。


しかし悲しきかな、遊具はあれどそれを利用する子供はもはや居ない。「居ないって言われてても何人かはさすがにいるでしょ」と言っていた両親もこれはちょっと予想外だったようで、黙ってしまった。球技を禁止した老人たちのゲートボール場と化した公園を、3人は後にした。


しかし気持ちの切り替えが速い両親はこれを気に留めることはなく、帰り際には父親は母親の背中に手を入れだしてイチャつき始めるし、家に帰った後直ぐに母親は近所の子供が遊べる施設を探し始めた。


もはや子供が外にいないのは常識なのか。ジェネレーションギャップを感じてしまう赤ん坊であった。

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