第四話 マッドネス
グッチがいるということは、ここは自分が死んだ総合病院ではないか。なんということだ、地元である。口を滑らせて生前のことを話そうものなら、即不審者扱いされるだろう。
死ぬ前にグッチに、死後自分の体を自由に使って良いとする契約書にサインするよう迫られた。断る理由もないので特に疑問を持つことなくサインはしたが、まさかこんな形で蘇るとは。
産まれたその日の晩に脳をすり替えたらしい。拒否反応なく他人の脳を結合できる多機能細胞と新生児の脳の形成速度を利用しているんだそうだ。ふうん。
いいのか?他の人にバレたらまずくないか?
「いやぁ?病院の人みんなグルだから」
「親さんには生後1ヶ月の人の脳って言ってるからそんなに影響ないと思ってるよー」
やっぱまずいですよ!
「あっそうだ、手術のついでにちょっと面白いDNA埋め込んどいたから」
お?なんか異能力貰えるんか?
「うーんまあ、お楽しみで☆」
は?怖
その翌日に退院した。一応、普通の赤ん坊らしくしていろとは言われている。あのマッドサイエンティストにもそのくらいの常識はあるようだ。研究については、「脳にチップ埋めてあるし遠隔でデータ見れるから気にしなくていいよぉー」とのことだ。いやはや、怖い。
病院の外に出ると、冷たい風が勢いよく顔に吹き付けた。季節は秋から冬くらいだろうか。自分の誕生日も、知っておく必要があるだろう。
かくして自分の、赤ん坊としての生活が始まった。
これからどう成長するのか、自分でも楽しみだ。