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第十二話 こころのすべて

最後の書類にサインを終えてファイルにまとめていると、僕の休憩時間は終わりとなった。いつの間にかいつもの僕を見せられなくなっていることを悟られぬよう、心の中でもう一度頬を叩いた。


僕は、堀本の死を受け入れられるだろうか。確実に弱っている彼の身体を見ても、まだ実感はできない。ただ、堀本の死後も仕事は続く。その上、確実に成功させねばならぬ「研究」もある。


椅子から立ち上がろうとした時、堀本の口が動いた。


「ありがとうな、グッチ」


…そうか。分かるのだろう、自身の死が目の前にあることが。この言葉には、なにかあらゆる感情の詰まったような名状し難い強さがあった。一瞬の立ちくらみの後、自然に言葉が出た。こちらも月並みではあるが、付き合いのある四半世紀ぶんの全ての感情を込めた言葉だった。


「…ああ、楽しかった」


傾きかけた陽の光を背に、僕は静かに部屋を出た。



堀本の訃報を聞いたのは、翌日の早朝であった。

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