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第十一話 堀本と山口

未だ目を合わせることはできず、窓の外を眺めている。凪いだ空の雲は、形を変えないままその下に影を落としている。


「唐突だな、いつも…。臓器提供って脳死とかじゃないとできないんじゃないのか?」

「まあそこは僕脳神経外科だし?病院では割と偉いからどうにでもなっちゃうっていうか。まぁーただ死ぬよりはちったぁマシなんじゃない?」

抵抗がある訳じゃないが、と唸る。恐らく、何らかの形で堀本を保存しておきたいという目的を見抜かれているのだ。

「面倒臭い書類は代筆で全部書いといたからさぁー、署名だけしてよ」

「…まいっか、どうせ死ぬし…」

「あっ、目は通してよ?」

「へいへい」

あっさりした同意だ、彼らしい。


堀本は手が麻痺しているので、長ったらしい書類はめくって見せた。小言はあったが訂正箇所はやはり多くはなかったので、僕が支えながら書類にそれぞれ署名していった。遺書は代筆をした。


書類の中には遺書などの他に、遺体を僕の研究に使えるようにする契約の書類も含まれていた。今まででこれ程長く感じた時間はない。例のごとく窓の外に目をやった。見慣れた病室では、外くらいしか変化がないのだ。遠方の山にかかる雲はやはり動かない。


この作業が終われば、堀本は「いつでも死ねる」。手に滲む汗を悟られぬよう、手袋をはめておいて正解だった。

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