焼き肉会議
「ちくしょうめ。せめて巨乳のお姉さんだったら許せたものを。あんなガキにしてやられるとは。」
焼き肉チェーン店の社長を務める天使のシュガーは怒りに震えていた。
「自分より年上で巨乳のお姉さんが好きな者だけここに残れ。それ以外の者は部屋から出ろ。」
社員は次々と出ていき、四人だけが残った。
「ロリコンばかりかぁ!?」
怒りの余りシュガーは手に持っている鉛筆をへし折った。
事の発端は半年前の牧場の牛脱走事件だった。犯人はソルトという名前の悪魔である。この悪魔は全国各地の牧場から牛を脱走させ、自ら作った施設に匿ったのだ。
これにより国産牛のみを使うことで焼き肉界の王となったシュガーは大きな痛手を被ることとなった。さらに先月、悪魔はテレビ出演を果たす。
「あなた達人間は自分達のことしか考えていない!人間の都合で命を奪われる動物達のことを忘れないで!」
華奢で可憐な美少女悪魔の悲痛な叫びは世間の風潮を変えるのに十分な力を持っていた。なぜならこの国の国民の大多数はロリコンであるからだ。
そして現在自分の部下達も悪魔の毒気にやられてしまっている。信用できるのはこの部屋に残った四人だけだ。
「お前ら、作戦会議するぞ。」
ジョッキに注がれたビールを一息に飲み干すとシュガーは四人を見渡した。
「どうだ何かいい案はあるか?」
部下達はひとしきり考えたあとそれぞれ意見を言った。
「世間の風当たりはどんどん強くなっていますからね。動物愛護団体も動き始めていますし。」
全員が頷く。そこへ頼んでいたカルビが届く。シュガーは肉を並べ始めた。
「ここで圧力に屈したら負けですよ。今までもこれからも肉一筋で行きましょうよ。」
肉の脂が滴り落ち、じゅう。と心地の良い音が響く。ジョッキが空く度に話は思い出話へと流れていった。
「ああ。思い出すなあ。昔は良くこうやって五人で飲んだなあ。」
「そうそう。どうしようもないワルだった俺達を拾ってくれたのはシュガーさんだったよ。」
「最初は頭にわっか乗せた変人かと思ったけどな。」
ははは。と笑いが広がる。見習い天使のシュガーの頭の上には天使のわっかが浮いているのだ。
思い出話と共に酒は進み、コンロの火力も上がっていった。
「こんなところで負ける訳にはいかないでしょう。俺達の夢は終わっちゃいない!」
炎が燃え上がり前髪を焦がす。
シュガーは叫んだ。
「こうなったら悪魔と決闘だ。ぶっ飛ばしてやるぜえ。連絡つけろ。」
男達は歓喜の声を上げた。
こうして、天使と悪魔の直接対決が決定したのである。