Cerebrate-セレブレイトゥ-(仮)序章 廃墟の少女~化け物の思念~
こんにちは、オロボ46です。
今回は一つの世界観で書く連続[風]短編小説シリーズです。
シリーズ名は「化け物の思念」。
化け物の存在が妖怪や幽霊のように噂になっている現代、
しかし、化け物の正体は実は......
という感じのありがちな設定です。
ちなみに、元ネタは3DSのうごくメモ張で書いた自作リレーです。
それでは、どうぞ。
[追記]
結局シリーズ化は挫折しましたが、
次回投稿予定の長編小説の序章としました。
それにあわせて修正を行っております。
次回作が投稿されたら、そちらもどうぞ。
今日の空は、雲一つなく青く染まっている。
少女は屋根無き部屋から空を見上げていた。
いや、感じ取ったと言うべきであろう。
その少女は、皮膚が影のような黒色に染まっており、
顔には目とよばれる器官はどこにも無かった。
その代わりに、頭には普通の昆虫よりもはるかに発達した触覚が生えており、
それによって周りの景色を感じることができた。
少女は化け物と化した元人間だった。
人と同様の体型と肩まで伸びた髪が、人間だった時の面影を僅かに残している。
「......!」
人の気配を感じた少女は立ち上がり、身を隠そうと移動を開始した。
街外れの山奥にある廃墟に青年は自転車で訪れた。
自転車を止め、鍵をかけているこの青年は仕事で使うつなぎを来ており、
ポニーテールの髪型をしている。
「確か......このあたりだな」
街外れの山奥にある廃墟には化け物が住んでいる。
子供たちの間で噂になっている廃墟に、
青年はあるものを求めて訪れたのだった。
「しかし、本当にボロボロだな......風邪ひいてなければいいけど......」
青年がそう呟いた時......
「キャア!!」
廃墟の中から悲鳴がこだました。
青年は駆け足で廃墟へと向かった。
廃墟の階段から降りようとして化け物の少女は足を滑らせてしまった。
幸いな事に骨折することはなかったが、
少女は見知らぬ青年がこちらに近づいているのをはっきりととらえた。
青年が少女の姿を見ても、驚く表情を見せない。
外見だけ冷静を装うだけとは思えなかった。
(普段から見慣れている......?)
少女が困惑していると、青年は手を差し伸べた。
「大丈夫?階段で転けたみたいだけど......」
少女は警戒しながら、青年の姿を感じ取った。
(この人・・・変わった出来事に関わることを生き甲斐としてる......?)
少女の触覚は周りを感じ取るだけでなく、
人が持っている思念や物に残った残留思念を読み取ることができた。
(それにしても、変わった出来事って......)
少女は考えて、青年の手を借りずに一人で立ち上がった。
「ねえ、ちょっといいかい?
昨日、4人の子供たちがここに来たはずなんだけど......」
青年は少女に聞いた。
確かに、昨日ここに子供たちが訪れた。数も4人だったはずだ。
あの時は子供たちに見つかって、慌てて驚かせてしまい、
そのまま逃げ帰っていったはずだ。
(まさか......誰かが迷子になった!?)
少女は青年の両腕をつかみ、激しく揺さぶった。
「ネエ!!ソノ子タチ、大丈夫ダッタノ!? 迷子ニナッテナイ!?」
「ちょ、痛い痛い!! 大丈夫だって!! ちゃんと4人帰って来てるよ!!」
少女は青年の腕を離し、胸を撫で下ろした。
「その子供たちは全員帰ってこれたんだけど、
その時に一人がガチャガチャの景品を無くしたらしいんだ。
廃墟に行く前に手に入れたらしくて、
あれでカップ麺シリーズが揃ったらしいんだ。
その子の話だと、君に驚いて落としたらしいんだけど......」
少女は思い出した。
(あのカフセルの中身のことね......)「......ソコニ置イテアルケド」
少女は廃墟の壁を指しながら言った。
壁の下にはカフセルがぽつんと置いてあった。
「ぬっ!? いつの間に!?」
「気ヅイテナカッタダケジャ......」
青年はカフセルを取り、中身を確かめた。
「うん、バニラ味だ。間違いない」
「バ、バニラ味!?」
「知らないの?最近バニラ味ラーメンがヒットしてたけど......」
「タ、食ベ物ノ事ハヨク分カラナイカラ......」
少女は食べ物のことだけでなく、街の様子もよく分からなかった。
少女は食べ物を食べる必要がなく、酸素を栄養として取り入れることが出来た。
水も廃墟の近くに川があった為、街に出る必要がなかったのである。
「まあ、今日は助かったよ。それじゃあ、僕はこれで......」
青年は立ち去ろうとしたが、何かを思い出した様子で少女に話しかけた。
「そういえば聞き忘れてたけど、君、名前は?」
少女はすぐには答えられなかった。
この姿になってから名前を使う場面は全くなかった為、
自分の名前がうろ覚えになっていたからだ。
名字にいたってはもう思い出せる事が出来なかった。
少女はなんとか名前を思い出し、口にした。
「......クロカ......ダッタハズ......」
「"クロカダッタハズ"? ......変わった名前だね」
「ソウジャナクテ......"クロカ"......」
「冗談だよ。僕は"上宮 俊"。この近くの街で自転車屋をしているよ。
また何かあればここに来てもいいかい?」
「エエェ......ウン、イイケド......」
「ありがとう。それじゃあまたね」
青年こと上宮はそう言うと、自分の自転車の下へと向かって行った。
階段を上りきった時、クロカはまた空を感じ取った。
その時の空は、まだ雲が一つもなかった。
いかがでしたか?
バニラ味のラーメン、食べてみたいな・・・・・・(ジュル)
おっと失礼。
更新速度は完全未定ですが、また忘れたころに見てください。