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並行異世界ストレイド  作者: 機刈二暮
[第四章]恐ろしいもの、作り上げたのは
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追撃、降下前



 行き先は決まった。


 ―――と言うよりもこの時点では推測だったのだけれど、それはすぐに事実として連絡が飛んできた。


『チハヤ! 対象(バイター)はやっぱりメニヘテルの街よ。もう街の集積基地の防衛部隊が交戦してるって』


 修理と補給、装備換装が終わった《プライング》の狭いコクピットに、アルペジオの声が響いた。


 再度 《ウォースパイト》に乗り込み、メニヘテルの集積基地や《バイター》が行きそうな街の警察等の治安維持組織への警告をしつつ、間違いなく起きるだろう戦闘に向けて、空挺降下前で待機していた所への一報だった。


 ほとんどこちらの予想通りで、半信半疑だっただろうメニヘテルの集積基地の方々も驚いている事だろう。


 現在、防衛基地のリンクス部隊が遅滞戦闘をしているようで、たった一機相手に苦戦を強いられているらしかった。



「……だそうよ? HAL」


『わかりました。到着まで残り五分となります。このまま突撃、街の上空につき次第、順次降下をお願いします』


『わかったわ』


 そのやりとりの後、現在 《プライング》を固定している投下用ハンガーが動いて後部物資搬入用ハッチ前に。


 《プライング》はブースター抜きの、素の機動性は意外にも悪い。

 異なる機種(この場合は《マーチャー》と)と混ざって空挺降下させるには一番最後にするか、一番先に立たせ専用のハンガーごと落とすという強引極まる手法しかなかった。


 今回は後者。


 理由は複数あり、騎士団のほとんどがリンクスによる空挺降下をしたことがほとんどない。全高十数メートルあるリンクスを立たせたまま、空から落とせるほどの大きな航空機が無いからである。


 次に、降下した先では《バイター》が待ち構えており、先頭は真っ先に狙われる可能性がある。それを回避するには空中で自在に動ける機体が先頭の方がよく、より機動力がある機体がいい訳で、たった一機しかない《プライング》に白羽の矢が立つのは当然だった。


 その後ろには《マーチャーE2改》が六機続き、さらにその後ろには《E2型》が控えている。

 降下用のパラシュートはない。大抵のリンクスはブースターで飛行が可能だからだ。



 初のリンクスによる空挺降下。


 その緊張が、無言という形で滲み出ている。あまりの緊張に、心臓の音が聞こえてきそうだ。


「私だって初めてなのに……」


 短すぎるブリーフィングで、真っ先に先頭にされた気分はたまったものでもない。くじ引きで、ハズレを引くのではなく、渡されるような気分だ。


 少し憂鬱に浸っていると、HALから通信が繋がった。


『チハヤユウキ。お願いがあります』


「なんでしょう? HAL」


 そう聞き返しながらもコンソールに視線を向ける。個別回線。それも秘匿コードだ。先ほどHALから紙を貰って、言いつけ通りコクピットを閉じてから入力、登録したコードだ。


 何故でしょうと思っていたが、この為だったらしい。


『《バイター》の破壊を、お願いします。彼女ら……「フォントノア騎士団」でしたか。破壊を最小限にして鹵獲するつもりでしょうが、破壊(それ)をうっかりやってほしいのです。理由はお分かりですね?』


「さっき言ってましたね……。世界を滅ぼした一つの要因。人類の狂気の結晶。それをまたこの世界で起こさせたくない、でしたか」


『……はい。《FK075》の本体、その最優先破壊箇所のデータを送ります。参考にどうぞ』


 その言葉と共にコンソールの画面が切り替わり、《FK075》本体のデータが現れる。

 首元―――胸部の少し上ぐらいの位置が赤く表示されていた。横からの図も表示され、首のほぼ真下だ。《プライング》のコクピットとそう変わらない位置である。


『《FK075》の中枢ユニットが格納されている場所です。ここを攻撃すればデータごと破壊することが出来ます。―――やってくれますか? 見ず知らずの私の依頼を、受けてくれますか?』


「……善処しましょう。あれが核兵器ではなくとも、世界を滅ぼした一つの要因ならば、ね」


 そう言って《プライング》に装備させられた武装を再度チェックする。


 右腕、85ミリ口径ライフル。弾種はAP弾。左腕、68ミリ口径ブレードつきアサルトライフル。弾種、HE弾。

 両背部サブアームに短砲身155ミリ口径滑空砲を2門。砲身展開は無しの試作品。ドライバは未完成だったものの、統合型汎用OS《那由多》が該当装備をスキャンして、勝手にドライバを作成している。あとはOSが勝手に調節するだろう。


『ハッチ解放』


 HALのアナウンスと共に搬入用ハッチが開き、外の景色がモニターに映し出される。


 しばらく鉄道のレールと草原が流れた後、壊れた城壁と市街地が映った。

 高度は二百メートル前後を表示している。


 そして、《FK075 バイター》と思える巨大な機影が後ろへと流れて。


「降下開始!」


 私はペダルを踏み込み、操縦桿を前に押して《プライング》を降下用ハンガーごと動かした。



 

 

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