キリヤ要塞攻略戦②
《ウォースパイト》から発進して一〇分。
高度を上げて迎撃のミサイルをその速度で振り切って。
オーバードブースターを装備した《アルテミシア・フロイライン》の眼下には五芒星の形に造られた、防壁を堀と角度の浅い斜堤が囲う要塞が見えてた。
防壁部分やその後ろには野砲がいくつも並び、一定の間隔で対空砲らしき台座が配置されている。
要塞中央には滑走路と誘導路が走り、その西側には管制塔や司令部、兵舎や航空機の格納庫らしきコンクリート建築が立ち並ぶ。
その左右、滑走路を邪魔しない位置に巨大な三連装砲が鎮座し、その砲口を空へと向けて砲撃はまだかと待ち構えている。
そして部隊や兵科によって区画分けしているようで要塞内各所に各種戦闘車両が並び、兵舎や倉庫のような建築物が各所に点在していて。
そして要塞内の空き地には地対空か地対地か、ミサイル発射装置を装備した車両が大小問わず展開していた。
建物の並び方や要塞内の道路の様子からまるで一つの大都市をそのまま武装化したかのような印象をシオンは受けた。
―――ブリーフィングで話していたように、稜堡式城郭で囲われた王都をそのまま要塞化したからこその構成なのだが。
「《ヒビキ》。分散式ミサイル二発」
シオンはそう言って―――火器管制が一二個の目標にロックオンマーカーを重ねる。
左の操縦桿のトリガーを二回ほど引いて、二発のミサイルを発射した。
左背のアームで接続された多目的バインダー《ヤタ》の装甲カバーが開いて、中のミサイルハッチを露出し、噴煙と共に二発のミサイルが先行するように飛び出す。
しばらく飛翔してカバーを外して、中の子弾を六発―――計一二発を解放して、それぞれが設定された目標に向かっていく。
そして、要塞から火線が五つ上がった。
その線は飛来してきたミサイルを捉えて一つ、また一つと黒煙へ変えていく。
対空砲―――近接防御システムの類かとシオンは口元を歪める。
迎撃されるのは想定内だ。
だからこそ―――野砲を撃つ前にある程度壊す必要がある訳だ。
それに続くように―――コクピットにアラートが鳴り響く。
ミサイルアラートだ。
要塞内の部隊の動きはもうすでに展開は完了した所が多いようだが―――対空兵器は半自律したシステムなようで、既に稼働しているらしい。
回避機動しつつフレア焚いて―――と考えた矢先に、
『オーバードブースター使用限界です。パージします』
《ヒビキ》の報告と共にコクピットが揺れた。
《アルテミシア》の背中に接続していたオーバードブースターが外され、それそのものは機体に当たらないようバラバラに分解され散っていく。
速度計が二〇〇〇という数字から減速していくのを見つつ、シオンは声を出す。
「九七ミリ砲用意。捉えた対空砲をロックオン」
果たして、その指示通りにFCSも右背のヤタも稼動して、リズムよく五発だけ連射する。
ミサイルよりも速いそれは簡単に六砲身のガトリング砲に当たって爆炎と共にスクラップへと変えていく。
そうしている間に―――近い位置から発射されたらしい対空ミサイルのアラートが激しくなった。
それそのものが近づいてきたという報告でもあり―――シオンは慌てることなく操縦桿を押して、向かってくるミサイルに向かってクイックブーストして、すぐに左斜め前に再度クイックブースト。
旋回半径の内側へ飛び込むことでミサイルを振り切り、追加のミサイルにはフレアを放って明後日の方向へ向かわせる。
最低限の対応を行い、すぐに左の操縦桿の十字ボタンを操作して―――武装選択で《ハーモニカ》と書かれた表記にカーソルを合わせる。
「《ハーモニカ》用意。目標、北と東に並ぶ野砲とミサイル発射機」
両腕に持つライフルの銃身をそのままコンテナに変えたようなそれを地面へと向けて―――コンテナ部分が左右に開く。
片側六四発―――計一二八発のミサイルが剥き出しになった。
シオンの指示に《ヒビキ》とFCSは忠実に実行し、一二八の目標に白いロックオンシーカーを重ねた。
『撃てます』
ロックオンしたことを証明するように赤く表示されて―――シオンは両手のトリガーを絞った。
《ハーモニカ》から一斉にミサイルが発射。
設定された通りにミサイルはその行き先を変えて、定められた目標へと飛翔を開始する。
《アルテミシア》は空になったそれをすぐさま棄てて、剣に似た形状の超電磁砲と銃身したにブレードを組みつけた機関砲をヤタから持ち出す。
両腕の補助腕が展開し、手にした火器の接続部にコネクターを接続して給電する甲高い音を鳴らし始める。
下では―――放たれたミサイルを迎撃すべくCIWSが二〇ミリの砲弾を驟雨の如く空へ放っている最中だ。
『カノープス、およびヤタ。通電完了。システムオンライン。射撃可能です』
その合図を聞いてから、《アルテミシア》はカノープスを射撃し続けるCIWSの一つに照準を合わせて―――トリガ。
炸薬とアーク光が混ざった独特なマズルフラッシュと共に一〇五ミリの砲弾がその砲口から飛び出して、狙ったそれを破砕する。
タングステンを芯とする砲弾が秒速三八〇〇メートル近い弾速で放たれるのだから当然の帰結だ。
一つ、二つと次々と撃ってCIWSを文字通り無くしていき、迎撃されるミサイルを減らしにかかる。
そして、《ハーモニカ》から放たれたミサイルの三分の二程度が設定された野砲や自走砲、地対地ミサイルに当たって炸裂し、次々と鉄屑に変えていく。
『着弾を確認。撃破数八二』
「まあ、全部は無理よね。―――ストレイドより作戦参加の全ユニットへ。先制攻撃成功。野砲を始めとする敵兵器を八二ほど撃破。このまま各種砲門の破壊を続ける」
そう通信に報告して―――カノープスの照準を適当な野砲に合わせてトリガーを引いていく。
『こちら《エワズ》。了解した。こちらも動く』
その報告に冷徹な女性の声が応じた。
コールサイン《エワズ》―――北部方面軍指揮官のクリームヒルト・グナイゼナウ少将だ。
そして指揮下の部隊―――多数のホバークラフト式の揚陸艇から成る渡河部隊に指示を下した。
『親愛なるクズども! 予定通りだ! 各隊前進! 各要塞砲やミサイルは残っているぞ! ここで魚の住処になる予定がないなら粗末な動きはするなよ!』
『ヒャッハー! 渡河だぁ!』
『誰が一番に渡れるか競争しようぜ! 賞品はビールだ!』
『その資金元はビリにしようぜ! ぎゃはは!』
彼女の命令に応じるかのように、実に柄の悪い会話が通信に流れる。
それが渡河部隊からのものだというのにシオンは気付いて、レーダーを見る。
東から五〇を超える味方の反応が広がりつつ近づいて来ていた。
渡河部隊のリンクスやマリオネッタと、戦車や装甲車を乗せたホバークラフト艦だ。
橋はあるのだが―――西と東を繋ぐ大動脈である以上は不必要な破壊は避けたいし、そこには装甲列車を初め、敵部隊が展開している以上、そこを攻めるのは困難だ。
故の渡河だが―――それを阻止すべく、要塞の野砲から火が噴き出し、防壁の向こうから噴煙が上がりだす。
要塞からの迎撃だ。
それと同時に橋に展開する装甲列車や戦車からの攻撃も始まったようで、そこでも発砲煙が上がり出す。
『変な操艦するんじゃないよ! 陸に上がって吐く目には遭いたくないよ!』
『なんなら寒中水泳もだな』
『んな事言ってる暇はないぞ! ミサイルが来てる!』
『よっしゃ! 汚物は消毒だぁーーーー!! ひゃはははは!!』
その歓迎に通信はまた賑やかになって、ホバークラフト艦は加速し、蛇行して回避機動を始め、乗っている角度を付けた平面の多いマッシブな機体と逆三角形なシルエットと重厚な手足を持つ機体―――《ヴォルフ》や《デストリア》が手にした火器でミサイルの迎撃を行う。
『こちら《ヴィットマン・ズュンドローム》。コールサイン《ウルズ》だ。要塞に対して牽制砲撃を開始する』
野太い男の声が《アルテミシア》のコクピットに流れる。
コールサイン《ウルズ》―――北部方面軍第一戦闘団指揮官ハンス・グナイゼナウ少佐だ。
作戦前に読んだ資料では―――一五五ミリ砲搭載した専用機である無限軌道型脚部の重装型マリオネッタに搭乗して支援砲撃を敢行するとあった通りねとシオンは呟く。
『ストレイド。四六〇ミリ砲の無力化を優先してくれ。対空散弾によるの被害は想定しているが、失われる人命の替えはない』
その要請にシオンは了解と答えて、フットペダルを踏む。
《アルテミシア》は大きく高度を下げて、北側にある件の三連装砲へ向かう。
北の砲台はその砲口を北側へと向けて旋回を止めた。
「―――アーベント大隊! 防御姿勢!」
砲身が持ち上がり始めるのを見つつ、シオンは通信に叫ぶ。
砲身が持ち上がって止まれば―――次は砲撃だからだ。
レアやデイビット、イサークの応答を待つことなく、《アルテミシア》はブースターから推進剤を大量に吐き出して距離を詰める。
しかし―――シオンの心配よりも《アルテミシア》の方が速く、砲撃前にかの砲塔の前に到着した。
すぐにカノープスを持ち上げ、照準をかの砲身の根本―――布で覆われているだけのそこへと合わせる。
一発目を左端の砲身の根本に向けて撃ち、二発目を中央の砲身に。
三発目を一番遠くの砲身へと撃ち込む。
テンポよく撃ち込まれて―――内一発の砲弾が内部の砲弾の炸薬に当たり、その衝撃と熱が炸薬を覆う被覆に火を点ける。
左端の砲身の根本で一度火の手が上がり―――次の瞬間には砲塔そのものが爆発を上げた。
その衝撃波は後ろへ下がった《アルテミシア》を揺らして、轟音がコクピットの中まで劈く。
その音にシオンは顔をしかめつつ―――聞こえてきた照準警報が急かすままフットペダルを踏んで急上昇する形でクイックブースト。
下方から飛来したいくつもの火線を置いてけぼりにして、南へと進路を向ける。
ウインドウで表示された攻撃してきた敵機―――帝国の主力リンクスである《ヴォルフ》の一個小隊を一瞥だけして、通信に繋ぐ。
「北の砲塔は無力化したわ。次は南をやる」
『こちらナイトメア。冷や汗ものは勘弁してほしいな』
どこか息を整えた様子のレアの返答。
リンクスに乗れば冷静沈着な彼女でも―――散弾とはいえ四六〇ミリという大抵の陸戦兵器では防ぎきれない口径を向けられれば焦りの一つは抱くものらしい。
『それと、私は位置についた。―――支援砲撃を開始する。北側の砲台は任せてくれ』
その宣言と同時に通信越しの轟音が入って―――通信が切られる。
三拍ほど遅れて、レーダーから敵の反応が四つほど消えた。
レアが駆るリンクス 《オニキス》が装備する二門の一五五ミリ砲―――そのフレッシェット砲弾だ。
碌な間接照準も無し。かつ一、二発の試射もなしの初砲撃を当てる精度は彼女の十八番だ。
流石ねとシオンは呟きつつ、最優先目標である巨大な三連装砲、残りである一基を正面に見据えた。
その砲塔は既に東への旋回を終えていて、その砲身も河へと向けられていた。
『南側散開しろ! 四六〇ミリ来るぞ! 回避機動!』
ハンクの警告が共通回線に走って、橋の上流側―――河を横断する揚陸艇が舵を切り、その進行方向を悟られないようにして。
四六〇ミリ口径三連装砲がその砲身数と同じ数だけ轟音を連続で轟かせ、その衝撃波が要塞の土埃を巻き上げる。
低伸弾道で撃ち放たれたそれは―――河の上で爆ぜて内部の子弾をまき散らし、橋の上流側の水面を叩いた。
先に撃たれたか、とシオンは悪態を吐きながら三連装砲の前に出て、砲身の根本の稼働部へ向けてカノープスを連続して撃ち込む。
六発撃ち込んだ所でターレットの隙間から火の手が上がったのを見てから離脱して―――盛大な爆発を見届ける。
『被害報告!』
クリームヒルトの焦りの声が共通回線に流れる。
『十隻が大破沈没! 七隻が中破! 積載していた戦車やリンクス、マリオネッタの被害も甚大です!』
『動ける揚陸艇は?!』
『八隻。しかし内六隻は自力での航行は厳しいと……!』
『被害艇の中で動けるリンクスとマリオネッタの数は?』
『戦闘継続が可能なリンクスは一〇機。マリオネッタは七機です』
報告として上がって来る被害は甚大だった。
その多くが一度の砲撃で薙ぎ払われたという事実が消失したレーダーの反応と通信で共有される。
これだけでも投入した戦力の二〇パーセントの消失に近いのだから、想定の内だとしても無視は出来ない。
『リンクスとマリオネッタは残りの距離を橋に沿うように飛んで向こう岸へ渡れ! 無事な船と救命ボートで生存者の救助! 砲兵部隊、要塞砲を狙え!』
すぐさまクリームヒルトの指示が飛び、東側―――対岸からのマズルフラッシュが増えだした。
放たれた砲弾は山なりの軌道を描いて要塞のいたるところに当たって爆炎を上げていく。
その衝撃波や破片で野砲や要塞砲を破壊する事はあれど、全体で言えば少数。
まだ減らさないととシオンは独り言ちて、
『照準警報。三時、五時、六時です』
《ヒビキ》の警告と警報。
同時にモニターに映し出された《ヴォルフ》三機がライフルを向けている光景を目にして、シオンはフットペダルを踏み込む。
《アルテミシア》は急上昇して放たれた砲撃を回避する。
旋回してカノープスの砲口を撃ってきた《ヴォルフ》の内、右端に見えた機体に照準を合わせて発砲する。
炸薬で砲弾を撃ちだす従来の火砲よりも圧倒的に速いその初速は―――文字通り一瞬で《ヴォルフ》の胸部に届き、その衝撃を以って上半身を吹き飛ばす。
それを見てか、残った二機は下がって回避機動を始めるものの、結末は最初の一機と同様だ。
敵機三機を撃破して、シオンはさてとなんでもないように呟き、
『照準警報』
「大歓迎ね」
喧しくなる警報に不敵な笑みで感想を言って―――《アルテミシア》は前に加速して照準を振り切る。
左右へクイックブーストして七〇ミリクラスの砲弾の弾幕を避け、擦れ違い様に地面にいる敵機―――《デストリア》の一機に向けてカノープスを撃つ。
結果は見届ける必要もなく、レーダーからその反応が消えた。
反転し、上昇。
次は、とモニターに表示されたマーカーを見て―――その動きにシオンは内心で首を傾げる。
マーカーの下に表示されている距離を示す数字が増えていっているのである。
『ストレイド! リンクスとマリオネッタの反応がお前から離れていってるぞ』
《ストラトスフィア》からの情報をファットマン―――ノブユキが直接伝えた。
その一言にシオンは頷く。
「ええ、見てる。相手にならないんだから消極的になるのはわかるけど……」
従来のリンクスを凌駕する高速性と火力と、相手にすれば例外なく殺される苛烈な戦いぶり。
それが帝国兵が抱く《白魔女》―――《アルテミシア》とシオンに対しての認識だ。
レアが残したデータリンクと分析は帝国軍にも共有されているとしても、それを元に戦えるパイロットはほんの一人握りの状態だ。
そう考えるならば。
「『亡霊部隊』でも投入するつもりかしら」
ならば遅滞戦闘のように距離を取りつつ味方と弾幕を張り、対応出来そうな部隊よ展開を待つ―――が一つの解となり得よう。
それに付き合う気はシオンには無いが。
リンクスとマリオネッタは要塞攻略の障害である以上、撃破は必須だ。
空中で急加速急制動を繰り返し、カノープスとリゲルの砲撃で撃破を重ねていく。
その最中。
『六時方向、敵反応多数検知』
《アルテミシア》のレーダーが背後に突如出現した新たな反応を捉えた。
背後には―――滑走路と航空機のものと思われる格納庫がある。
《アルテミシア》を旋回させて―――シオンの思考に追従してウインドウが展開。
滑走路近くの格納庫を拡大して、そこからいくつもの人型兵器が推進剤をまき散らしながら飛び出してくるのを見た。
全体的に平面が多用された装甲レイアウトながら、そのシルエットはどことなく細い。
右肩は特に特徴のない形状だが、左肩は防盾も兼ねているのか縦方向に長めだ。
頭部は人の形をしているもののカメラを並べただけという簡潔な構成だがそれがどことなく非人間的な印象を見る人間に持たせる。
そしてどの機体もライフルにブレードという普遍的な装備構成だ。
シオンにとっては見たこののない機体だが、
『《GLs-021 ザンビ》を確認』
委員会から提供されたデータの内容の一つを《ヒビキ》が照合する。
亡霊部隊と言われる帝国に敗北した国々の、実験体にされた軍人や一般人が搭乗するリンクスの一機種だ。
そのパイロット達の内約は薬理的にリンクスへの操縦適性を付与、強化されているものの個人差が酷く、動く的もあればエース並みの実力を有する機体もいるとも。
そして、抱えた在庫を処分するかのように酷使するといえども未整備などしないし、戦績の良い個体の乗機や実験で乗せた試作機は強化改修を適時施し、実戦に投入し続けるとも。
なんにせよ脅威度は高い。
『四八機を確認』
そしてその数は《ヒビキ》が数えた。
それらは一六機一個中隊の編成に分かれて、で北と東へ散っていき―――残った一個中隊が《アルテミシア》と交戦すべく空中へ飛び出す。
《アルテミシア》は後退して、カノープスを撃つ。
リンクスの火器としては圧倒的な初速を有するそれは回避機動をし始めた敵機をいとも簡単に捉え、跡形もなく吹き飛ばす。
三機を撃ち抜き―――制動をかけて前に加速。
喧しいアラートを聞きながら右、前、左へとクイックブーストを連発し、すれ違いざまにリゲルを掃射して追加で一機を撃破する。
反転して背後に回ろうとした一機をカノープスで撃ち抜く。
―――亡霊部隊、と別枠で呼ばれるにしても弱い。
《ザンビ》と呼ばれるリンクスの甘い戦闘機動を見つつ、周囲に視線を走らせる。
同時に出撃した機体の三分の二は北と東の防衛線に分かれたし、味方も防壁に届く頃合いだ。
『照準警報。十一時』
《ヒビキ》の無機質な警告に応じるようにフットペダルを踏む。
左への瞬間移動と見紛う急加速で飛来する砲弾を避け、カウンターの如くレールガンを撃ち、攻撃者を排除する。
しかし、パイロットの視線は撃破した機体など見ていない。
「プリスキンが北の防壁に到着して砲台の撃破に加わった。アーベント大隊は取り付き出してる。レグルスは東側にまわって渡河部隊上陸の支援……? いえ、橋の装甲列車の相手か。挟み撃ちになるものね」
《ストラトスフィア》から共有されたレーダーマップで味方の動きを確認し、すぐに次の標的を見つける。
右から接近を仕掛け、ブレードを構えた《ザンビ》に対して突貫。
すり抜けざまにリゲルの銃身下に取り付けられたブレードを赤熱させ、切り伏せて左旋回。
次にFCSが捉えた敵機へとカノープスを撃って沈黙させる。
これで自分に割り振られた敵機は半数だ。
さっさと殲滅して、と考えた所で、
『更に敵反応を検知。七時方向。数は二』
新たにレーダーが捉えた反応とその存在を《ヒビキ》が教えた。




