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並行異世界ストレイド  作者: 機刈二暮
[第八章]ドッペルゲンガー
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交戦②




 両腕をもぎ取った《ヴォルフ》の背中、ブースターのノズルへランスを叩きつける。


 ランスの円錐部分で殴られた《ヴォルフ》はそのまま前へと倒れる。


「これで五機目、と」


 チハヤはそうカウントしながら、《プライング》を空中へと飛び出させる。


 ―――慣れない事をやると手こずりますねと、チハヤは先ほどまでの戦闘を振り返る。


 《プライング》は人型ではあるものの、その骨格は人間の形からは外れている。


 そして、《linksシステム》への適正が低い男性が機体を操る為に《ヒビキ》という電脳を仲介している事によるパイロットの思考とその伝達のタイムラグの存在。


 それ故に、切り結ぶような近接格闘戦は苦手なのだ。


 なんとかなっているのは追い付かれる程度に南へ逃げつつ、接近しては一撃一撃を確実に当てて行動不能に至らせることに徹しているからで。


 そしてそれが相手にとって記録にない、対抗策をしていない戦闘方法だからこそ、慣れていなくとも上手くいっているのである。


「残り二機。早く無力化しないと増援が来る」


 そう状況を口にする。


 手こずっている以上、そろそろ準備を整えてこちらに向かって来そうではある。


「コトネ。そっちは?」


 秘匿回線でコトネに呼び掛ける。


 彼女はナツメの《アルメリア》と交戦しているはずだ。


 手の内の分かる者同士の戦闘となれば長引きそうではあるが。


『……とりこみちゅう』


 通信で聞こえてきたのは短い回答と、連続で何かがぶつかり合う音だった。

 近接装備で殴りあっているような音でもある。


「……時間をかけすぎないように。増援が来てしまいます」


『わかってる』


 そう彼女は返事をして通信を切った。


 チハヤは、さて次はと呟いて。


『照準警報。九時方向』


 《ヒビキ》の警告とアラートがコクピットに鳴り響く。


 《プライング》を急上昇させてそれを回避。


 その砲弾も狙いを甘くしているのか、《プライング》の遥か下を通り過ぎていく。


 《ヒビキ》の言った方角を見ると、二機の《ヴォルフ》がこちらへと向かってきている。


 一機は廃墟の陰へと入り、もう一機は《プライング》と同様に空中へと飛び出す。


 地面にいる《ヴォルフ》が《プライング》へアサルトライフルを向けて発砲する。


 《プライング》は上昇しつつ、前後左右へ小刻みにブーストする乱数回避で砲弾を避ける。


 その隙に、もう一機の《ヴォルフ》が《プライング》へと接近。


 左腰の鞘からブレードを引き抜いて斬りかかる。


 《プライング》はそれを右手のランスを縦にして受け止め、左手のアサルトライフルを数発、無造作に撃つ。


 大して狙っていない射撃。


 それでも、相手を退かせるには十分だった。


 《プライング》の砲撃に驚いた《ヴォルフ》は競り合いから退いて距離を取ろうとする。


 その隙に、チハヤは左手のアサルトライフルを振り上げた。


 アサルトライフルの銃剣の切っ先は辛うじて《ヴォルフ》の、ブレードを持つマニピュレーターに届いた。


 銃剣は指を切り裂いて、《ヴォルフ》の手からブレードを手放させる。


 次にランスを相手の左肩を狙ってブースターを噴かせると同時に突く。


 ランスの切っ先は狙い通りの場所へと当たり、衝撃を受け止めきれずに基部からもげる。


 実質的に武器を持てなくなった《ヴォルフ》は《プライング》から一目散に離れる。


 これで、六機目の《ヴォルフ》を無力化した。


 ラスト一機、とチハヤは呟いて周りを見渡す。


『十時方向。距離三〇〇』


 すぐに《ヒビキ》が見つけた。


 右側を見ていたチハヤは《ヒビキ》が言った方角を見る。


 そこには一機の《ヴォルフ》が廃墟の屋根の上に立っていた。


 その機体は、両肩のアーマーの後ろ側に両刃のブレードを取り付け、アサルトライフルと思える火器に左前腕に小型の盾を装備した機体で。


「マルゴットさんの《ヴォルフ》ですか」


 その構成に見覚えのあるチハヤはそう判断する。


 説得を試みた彼女が最後の一機になるとは、運がいいのか悪いのか。


 あるいは、彼女が戦うことに積極的ではなかったことによる偶然か。


『チハヤさん。―――やっぱり、殺さないんですね』


 マルゴットからの通信。


 国際チャンネルでの呼びかけだ。


「コトネに止められてますので。―――それに、あなたたちも殺す気がないのでしょう?」


 だからこうしてますと、チハヤは答える。


『―――はい。でも、捕虜の脱走は防がないといけません』


「それはつまり、あなた一人で私と《プライング》を止める、と」


『はい。無謀なことかもしれませんけど……。しばらくすれば仲間が来ますから』


 あなたを足止めすれば脱走を阻止できる目はあります、とマルゴットは言って接近を図るべく《ヴォルフ》のブースターを噴かした。


 廃墟の屋上すれすれを、彼女は飛行する。


 チハヤは後退しつつ、左手のアサルトライフルを《ヴォルフ》へ向ける。


 レティクルが《ヴォルフ》へと合わせられ、火器管制システム(FCS)が射撃可能をモニターに表示する。


 左の人差し指が操縦桿のトリガーを絞る。


 三発の砲弾が砲口から飛び出す。


 マルゴットの《ヴォルフ》は右脚で建物の縁を蹴って左へと進行方向のベクトルを捻じ曲げ、その砲撃を回避する。


 次は左脚で同じように廃墟を蹴って前に出る。


 《ヴォルフ》は右手のアサルトライフルを《プライング》に向けて応射。


 チハヤはそれを左へのブースト機動で回避。


 続いての射撃は右へのクイックブーストでFCSの捕捉から逃げる。


 そしてまた左のアサルトライフルを小刻みに撃つ。


 《ヴォルフ》は前後左右、飛び跳ねるといった乱数機動をブースターと廃墟を使って繰り出し、その砲撃を避け続ける。


 その動きに合わせて、チハヤも《プライング》を小刻みにクイックブーストしては位置取りを変えて攻撃を加える。


 《ヴォルフ》は左手にブレードを持ち、《プライング》へと接近する。


 《プライング》はランスを左から右へ振るが。


『よいしょ!』


 気合いの声と共にマルゴットの《ヴォルフ》はブレードも振ると見せかけて、機体を大きく仰け反らせる。


 そして右脚を振り上げて、《プライング》の手からランスを蹴り落とす。


 チハヤが反応しても《プライング》が反応するのには速すぎる体術だ。


「……!」


 その操縦に驚きながらもチハヤは操縦桿を引いて《プライング》をクイックブーストで下がらせる。


 右手にアサルトライフルを持ちながら、左手のアサルトライフルを牽制として撃つ。


 大して狙っていない射撃だが、マルゴットの《ヴォルフ》は先程と同様に乱数回避を行って射線から逃れ続ける。


 すぐに、アサルトライフルの砲口から砲弾が飛び出なくなる。


 チハヤの視覚野に直接投影されたマガジン内の残弾数は0を表示している。


 弾切れだ。


『左腕、残弾無し。リロードします』


 《ヒビキ》がそう宣言して、《プライング》の左脇下にあるサブアームが後腰部にマウントされた弾倉を掴む。


 その隙を狙って、《ヴォルフ》は手にしたアサルトライフルを発砲する。


 《プライング》は右へのクイックブーストで回避。


 右手のアサルトライフルで応射と回避機動を織り交ぜつつ、左手のライフルの空になった弾倉を落として、新しい弾倉をサブアームが差し込む。


 ボルトが自動的に前に出て、初弾をチャンバーに送り込む。


 射撃可能になったそれを《ヴォルフ》へと向けて、右手のそれと同時に小刻みに撃つ。


 単純に砲門の数が増えて弾幕が濃くなるが、マルゴットはそれらを遮蔽を取ることなく避け続けてはライフルの応射を繰り返す。


 まさか食わせ者だなんて、とチハヤは自分の見立てが悪かった事を自覚する。


 チハヤは《プライング》と《ヴォルフ》の性能差は圧倒的かどうかはともかく速度の差は確実にあって、こちらが有利だろうと思っていた。


 そしてマルゴットは兵士に向いていなそうで、戦う事を嫌いそうな人物だと思っていたがその実、速度に劣るだろう《ヴォルフ》で《プライング》とやりあえるような乗り手だったとは。


 マルゴットのその才能に目を止めた人物はきっと見る目があったに違いない。


 そう思いつつ、ライフルを撃つ。


『そっちはどう?』


 秘匿回線でコトネが尋ねてきた。


「マルゴットさんに苦戦中。時間かかりそう」


 その問いにチハヤは素直に答える。


『だろうね。わたしのちょっかんどおり、マルゴットはリンクスののりてとしてならすぐれたパイロットだから』


「……あなたが彼女をスカウトしたのですか…」


『どっちかっていうとひきぬき。あと、わたしがでしみたいにおしえてたから、それなりにつよいよ』


 そのコトネの淡々とした説明にチハヤはそれは強くなりますよねと呻く。


 事実、チハヤも自分の妹のコトネに、ゲームの対戦に付き合った結果として相応の実力がついてしまった類の人間である。


 その判断や動きは《プライング》での戦闘に生かされていて、有効であるのが証拠だ。


『……こっちも、てこずってる』


「早くしないと増援が来るでしょうし、捕まってしまいますよ?」


『そのときは、いっしょにおこられてくれる?』


 その言動にチハヤは少し微笑ましい気分になった。


 昔は、コトネが何かやらかした時は一緒に怒られていたからで。


「……悪くないですが、そうならない為にもひと踏ん張りしますよ」


 そんな事を思い出しながらそう鼓舞する。


 思い出に浸っている場合ではないのだから。


『そっちもね』


 コトネの返事を聞いてから通信を切って、意識を目の前の《ヴォルフ》へと集中する。


 《ヴォルフ》の脚を狙ってトリガーを絞る。


 数発ずつ撃つが、マルゴットの《ヴォルフ》はそれを巧みな乱数機動で避ける。


『右腕、残弾無し。リロードします』


 リロードがまだだった、撃ち続けていた右手のライフルが弾切れを起こす。


 すぐに弾倉を交換すべく、脇下のサブアームが動きだす。


 その隙を埋めるように左手のライフルを《ヴォルフ》へ向けて下がりつつセミオートで発砲する。


 マルゴットの《ヴォルフ》は散発的になった攻撃を避けつつ、左手を背中に回す。


 そこに取りつけていた大型の銃器を手に取って、無造作に撃った。

 それも何発も、である。


 放たれた砲弾は大きいものの、その弾道は遅い。


 グレネードランチャー? とチハヤは思いつつ右へのブーストで回避機動に入る。


 砲弾は《プライング》より手前――――《ヴォルフ》の五十メートルほどの距離で炸裂した。


 白い煙が辺りに撒き散らされる。


 スモークグレネードのようだ。


 それを何発も、《プライング》を囲うように周囲へと放ちそのスモークの中へ隠れた。


 そして、《ヴォルフ》を捕らえ続けていたレティクルが消失する。


『敵機反応消失』


 《ヒビキ》がそう報告する。


 ただのスモークではなく、赤外線や各種電波を遮断するジャミングスモッグだ。


 《プライング》は手早くリロードしてホバリングで滞空する。


「隠れましたね」


 左手のアサルトライフルの残弾に余裕があることを確認しつつ状況を口にする。


『音響による索敵を推奨』


「……そうは言っても、消音移動してるリンクスを見つけるのは至難の技ですよ?」


 チハヤの言う通り、消音移動するリンクスを音で探すのは難しい。。


 フェーズジェネレーターは燃料電池のようなものであり駆動音は静かで、現行の機体は人口筋肉での駆動だ。


 そして《linksシステム》の恩恵で人間の動きを再現できる以上、ブースターも用いらなければ静かに歩くことは造作もないことだ。


 それに対して、《プライング》はブースターによる推力で移動することを前提にしているような機体である。


 ブースターの音で周りの音がある程度掻き消してしまう以上、音による索敵は状況によっては出来ない。


 建物の上に降りて、ブースターを切ればできなくもないが、それでは相手より上の位置を陣取れる利点を捨てることになるし、最悪 《プライング》が苦手な接近戦に持ち込まれかねない。


 向こうが何かアクションするまではこの状況だろうとチハヤは判断する。


 しばらくの静寂が訪れて、


『警告。九時方向』


 コクピットにアラートと、《ヒビキ》の報告の声が流れる。


 そちらへ視線を向けると、マルゴットの《ヴォルフ》が装備していた小型の盾が回転しながら飛んできていた。


 チハヤは反射的にフットペダルを踏んで、《プライング》はそちらへ旋回しつつ右へとクイックブースト。


 チハヤの『照準を手動(マニュアル)に』という思考を読んだ《ヒビキ》の操作によってFCSが切り替えられ、モニターに簡易的な弾道が表示される。


 それを見つつ、狙いを盾が飛び出てきた所を狙って、セミオートでトリガーを絞る。


 ライフルの砲口からは一発ずつ放たれ、砲弾は煙の中へ飛んでいく。


 計六発を撃つが。


「まあ、手応えはありませんよね」


 既にそこから離れたのか、当たった気配はない。


 見えない以上、対応は確実に後手だ。


 厄介ですね、とチハヤは呟いて銃口を下ろす。


 そのタイミングだった。


 《プライング》から見て五時の方角。


 煙幕の中から飛び出す機影があった。


 マルゴットの《ヴォルフ》だ。


 ブースターを全開で噴かして左手に持ったブレードを既に構えている。


『接近警報。五時方向』


 その無機質な《ヒビキ》の報告にチハヤは《プライング》を振り返らせつつ下がらせる。


 接近してくる《ヴォルフ》を見て、思ったより速いとチハヤは呻く。


 速度で勝っても反応にはタイムラグが存在するが、そういう速さではない。


 《ヴォルフ》の純粋な速度が速いのである。


 右から左へ振られるブレード。


 《プライング》は咄嗟に右手のアサルトライフルを放り出して盾にしてその斬撃を躱す。


『まだまだー!』


 マルゴットの気合いの声が外部スピーカーで放たれて、もう一度同じ方向に、下を切り払うようにブレードを振るう。


 《プライング》は、今度は上半身を仰け反らせてバックブースターのクイックブースト機能を作動させる。


 落ちるように後退。


 続けて脹脛部のブースターを噴かして、脚を持ち上げ後転するように回って一気に下降する。


 《ヴォルフ》の斬撃は、《プライング》の足裏を掠めた。


 そして、そのまま後退だ。


 マルゴットの《ヴォルフ》は地面に着地しつつ、《プライング》へアサルトライフルで牽制しながら追いかける。


「《ヒビキ》。頭を狙ってください」


 空いた右手にブレードを持たせて、《ヴォルフ》の攻撃を避けつつ《ヒビキ》へ命令する。


『了解』


 その了承と共にFCSの設定が切り替わって、レティクルが《ヴォルフ》の頭に重なる。


 《ヴォルフ》の乱数機動と彼我の距離を見比べつつ、牽制射撃を避ける《プライング》。


 下手なタイミングで撃てば外れるか、最悪コクピットに当たる。


 それを避けたいがためにチハヤは相手の隙を伺うべくの回避専念を選択したのだ。


 右へ左へ大きく動いたり急接近して交差したりと相手を振り回す機動を繰り広げる。


 そして、すぐに《ヴォルフ》の動きが鈍った。


 ブースターの吐き出す推進剤の量が減って、《ヴォルフ》の速度が落ちる。


 基本的にリンクスの推進剤は電気を通して推力を生む非化学ロケットであり、推進剤自体は作戦中切れないぐらいの量を機内に容れている。


 それに対して、フェーズジェネレーターの発電量と機体各部にあるだろう蓄電用コンデンサの容量は限界がある。


 蓄電した分がなくなれば、ブースト機動はままならない。


 マルゴットの《ヴォルフ》の速度低下は、ブースターを使い過ぎたことによる単純な電力不足が起こした事態だった。


 その隙を、チハヤは待っていた。


 FCSは既に《ヴォルフ》の頭部を捕らえていて、左手のアサルトライフルの照準も合わされている。


 左の操縦席のトリガーを絞る。


 発砲。


 放たれた砲弾は寸分の狂いもなくその頭部へと当たり、光学センサを始めとする電子機器を破壊していく。


 マルゴットの《ヴォルフ》は動きを止める。


 コクピットの中は真っ暗に暗転したか、砂嵐の状態でろくに周りは見えなくなっているだろう。


 予備の光学センサに切り替わる前に、とチハヤは《プライング》を《ヴォルフ》へと向けて加速させる。


 右手のブレードを大上段で構え、振り落とす。


 《ヴォルフ》の左腕と左脚を斬り、そのまま斜め左上へと斬り上げる。


 今度は右脚と右手を斬り裂いた。


 両脚を斬られた《ヴォルフ》はそのまま地面に落ちて、仰向けに転がる。


『―――いっ、たぁい…』


 外部スピーカーでマルゴットが涙声で呻いた。


 それなりの高さで落ちたはずだが、《チャンバー慣性制御システム》の恩恵だろう。


 声そのものは元気そうだった。


「お怪我はありませんね?」


 チハヤは確認するように外部スピーカーをオンにして尋ねる。


『ないですけど…』


「脱出もなんとかなりますか?」


『…………この姿勢なら出られます…』


 ならよかった、とチハヤは安堵する。


 殺さないで、と言われたことを守りきれたからである。


「マルゴットさん。あなたはいいパイロットです。できれば、こういう出会いと別れでなければよかったのに」


 そう、交戦した感想を言う。


 必要は無いかもしれないが、チハヤ個人としては言いたくなったからこそ口にする。


 単機で、それも性能が劣るはずの機体でここまでやったのである。


 それは称賛するべきだろう。


『……感傷ですね……。同じ気持ちですが、わたしは悔しいです』


 マルゴットの言う口ぶりは、チハヤの耳にはどこか満足そうに聞こえた。


 褒められた事が嬉しいのかもしれない。


『……行くんですか?』


 今度はマルゴットからの質問だった。


 それは連合に帰ることを尋ねていることは明白だった。


「ええ。―――何度も言いますが、私の友人や隣人は、向こうにいますから」


 当然のようにチハヤは答える。


 そこに、、自分の日常はあるのだから。


「それでは、マルゴットさん。―――戦場ではないどこかで、縁があったらまたお会いしましょう」


『また、会えますか?』


「それは、わかりません。―――でも、そんな機会はあるかもしれませんから」


 私はそう言うんですと、チハヤは言い切る。


『そうですね……』


 その物言いに、マルゴットは頷くように同意する。


『では、チハヤさん。―――またどこかで』


「ええ、さようなら」


 まるで友人同士が別れるような口ぶりで二人は別れを告げる。


 チハヤは《プライング》を真上にクイックブーストで上昇させて南へ反転。


 そして加速して、秘匿回線を開く。


『コトネ。そちらの状況は?』


 開口一番に通信相手にそう尋ねた。





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