かまくらの中にて
12月29日。
「…………そんなことやってたんだ」
夕方、夕飯より前の時間。
今日のシフトは無し。
あった事とすれば、自主参加の拳銃射撃訓練か、自分の寮室を掃除したぐらい。
二段ベットの下に、フィオナさんのものと思われる秘蔵本―――官能小説とか、日本の某所で行われる同人誌即売会で扱われてるような同人誌とかが収まった箱を見つけてしまった事は内緒だ。
そこまでジャンルは多岐に渡らなかったのだけれど、百合ものとか逆源氏物語ものとか、百合と思わせて受けが女顔の男の子という、なかなかにコアなものまで。
前者はともかく、後者なんでここにあるのか不思議でしかないけれど、《ノーシアフォール》で回収されたと思えば納得です。
そして、書かれた文字はもちろん日本語ですが、絵で何が起きているのか、わかるでしょう。
フィオナさんこんなの好きなんですねー、なんて言って元の場所に戻しましたけども。
ちょっと引いてます。
―――そのあとは、急に襲ってきた眠気に負けるように昼寝をして起きたところだった。
寮舎の玄関前。
太陽はもう地平線に隠れたところで、西の空が僅かに赤だけの時間帯。
もう暗いといってもいいだろう時間だが、ここは作業用ライトに照らされ、昼ほどではないが明るい。
私物や支給品の防寒具を身につけた騎士団所属の人たち―――その中でも若年齢の人たちが除雪用シャベルなどを片手に作業し、そしてそれももう終わりというところだった。
目の前に出来上がっていたそれらを見ながら、僕は金髪青目の少女、アルペジオに尋ねていた。
「ハル曰く、雪が降ったら間違いなく作るものと、雪で行われる競技だそうよ?」
尋ねられた、ダッフルコートや耳当て、マフラーなどの防寒着―――間違いなく私物だ―――に身を包んだアルペジオは除雪用のシャベルを置きながら答えた。
すっかり雪が捌けられたその場所に、大きな雪玉を二つ重ねたものや、雪で作られたドーム状の構造物などが出来上がっていた。
雪だるまやかまくらだ。
雪だるまはともかく、かまくらは結構な数が作られていた。
乱雑に並んでいるので細かく数える気はないけれど、ざっと10個以上はありそうだ。
さらにその向こうには、雪で作られた壁が複数設置され、六人ずつに別れて雪玉を投げ合っていた。
雪合戦をしているようだ。
旗があるのでフラッグ奪取のルールだろう。
なかなかな盛り上がりを見せていて、AチームとBチーム、どちらが勝つかトトカルチョまでしている。
さらに隅っこではHALのセントリーロボットが投げる用の雪玉を大量生産していて、出来た雪玉を担当らしい人たちがプレイ中の人たちへ供給していた。
そんな専用機まであるのか。
雪玉と言えど、それなりに固めれて投げれば相応に痛いので安全に配慮してHALが一括して生産しているのだろう。
―――あ。
今、身を乗り出した男が背の高い金髪の、長くて尖った耳の女性が投げた雪玉を顔面に当たった。
遠目に見てもピッチャー顔負けの豪速球だったので、男は後ろに弾き飛ばされていった。
痛そうだ。
「……確かに。雪が降ればやるものだね」
その言葉に肯定する。
ある種の風物詩でもあるか。
アルペジオ曰く、暇だし、せっかくの雪だし何か雪を使って何かしたい、とロビーで話していたらHALが雪での遊びをいくつか教えてくれたらしい。
それが雪だるまとかかまくらの構造物の作成だったという話だ。
そういうわけで、HALのセントリーロボットの協力の元、アルペジオがエリザさんとかカルメさん、さらにキャロルさんとクリスさんを呼び集めて始めたら―――。
たまたま非番で騎士団所属で、その中でも若年層の人たちがアルペジオたちの作業を見て楽しそうだといって集まりだして、今に至るというわけだ。
そして最後は雪合戦で遊び出したということか。
「チハヤは作ったことはある?」
「あるよ。―――さすがにあそこまで大きいのは作れなかったけどね」
大人の身長とそう変わらない雪だるまと、大人数人が入れそうなほど大きいかまくらを差しながら答える。
あの地域ではさすがに、雪が降っても小学生ぐらいの子供が入れる小さなかまくらを作ることが精一杯だったなと振り返る。
いつか大きいのを作って――――と、孤児院の職員たちや神父、シスターとも言い合ってもいたか。
―――もう二度と叶えれない話だが。
「しかし、作ってどうするんだ? まさか、かまくらの中で温かいものでも食べたいとか?」
作ったからには、何か目的があってのことだろう。
それが気になった。
「あ、良いわねそれ」
アルペジオの目が光った。
そこまで考えていなかったらしい。
そして、僕は墓穴を掘ったことになった。
言わなければよかったかもしれない。
「何か、ちょうどいい料理あるかしら?」
そう、期待する目付きで尋ねてくるアルペジオ。
「………」
かまくらの中で食べれる温かい食べ物か。
単純にスープ類でもいいかもしれないが、それでは少しありきたりだろうか?
なら、他の料理か。
顎に手を当てて食料庫と冷蔵庫の中身を思い出す。
――――あの料理なら、みんなで楽しめるか。
ちょうど、必要なチーズも一通り揃っていて白ワインもある。もちろん、コーンスターチも。
―――ああ、白ワインか牛乳かを聞くべきだな。
パンはバケットならたくさんあるし、それ以外なら鶏肉も野菜もある。
あとは鍋。専用の鍋は無いけれど、使えそうな鍋はなくもないし、《コーアズィ》で回収した分がある。数はそれなりに。
必要な時に使えるようにと、洗浄と消毒してあるから問題ない。
調理はどうしようか。
作るとしてもチーズが相手だ。
それにこの気温。運んでいるうちに固まりそうだ。
ここで煮込むか、うん。
運良く、カセット式のコンロがあるのでそれでなんとかしよう。
人手は―――食べたい人達の手を借りるとしよう。HALのセントリーロボットの運搬力も借りれる。
鍋を焦がされたら大変だし、肉や野菜は蒸かす過程で焦がされたら面倒だ。
厨房から数人呼んで彼らのサポートをしてもらうとする。
そうなれば行動だ。
でも、まず聞かないといけない事があるわけで。
「ここにいる人で、かまくらの中でご飯を食べたいって人はどれだけいるかな?」
まずはここで、寒い外で食べたいなんて奇特な人の人数の把握からだ。
すっかり日が落ちて、辺り一面は建物から出る灯り以外は暗くなった。
普段なら、寮舎の近くもそんな感じなのだけれど、今日は違った。
HALが《ウォースパイト》から持ち出したライトで、辺り一帯はガス灯のような、暗いオレンジ色の光で照らされている。
かまくらの中は、キャンプとかで使われそうなLEDライトで明かりを灯されており、普通に明るい。
そして、その場にチーズのあの独特の香りが漂っていた。
その場―――ではなくとも、僕の手元からもチーズの匂いが漂ってきているのだけれど。
小さな折り畳める椅子に座った四人の前、これまた小さな簡易的な机。蒸かした肉や野菜、切ったバケットが盛られたお皿の隣。
そこに置かれたカセット式のコンロの上に土鍋を置いて、弱火で火にかける。
中身は熱した白ワイン、もしくは牛乳でチーズを溶かしたものである。
つまり、どこからどう見てもチーズフォンデュだ。
「―――あとは焦げないように時々かき混ぜること。ごゆっくり」
そう言って、そのかまくらから離れる。
屋根のある玄関―――簡易的な野外調理場と化したその場は、すっかり人が捌けてしまった。
いるのは、手伝いに来てもらった厨房の料理人二人。
やや体格のいい男と細身で背の高い男の二人だ。
「これで全部のかまくらに行き渡ったかな?」
振り返って全部のかまくらを見渡す。
かまくらの中では三人から四人の男女が何かを話ながら、鍋の中のチーズを串に刺したパンや野菜に絡めて美味しそうに食べている。
配り忘れたところは無さそうだ。
―――背後の、かまくら製作に参加していなかった人達の嫉妬の目線が痛いが。
近い内に振る舞うからと言ったのに、諦めの悪い人達だ。
「はい。これで我々も食べに行けるってものです」
やや体格のいい男がガハハと笑いながら言った。
いつもなら、厨房の人員はご飯を食べているような時間帯だ。
それに、美味しそうな匂いしかしないのだ。
余計にお腹が減るだろう。
呼ばれているので、と言って彼は小走りに立ち去る。
「それで、あのチーズフォンデュのレシピを……」
今度は背の高い男がメモ帳を取り出しながら尋ねてきた。
「エメンタールチーズを七割とグリュイエールチーズを三割を混ぜるだけですよ?」
笑顔で答える。
まさか、これらのチーズがあるとは。
きっと、この世界に来たスイス人が広めたのでしょう。
グッジョブです。
「そこから、机の下から別のチーズの粉末取り出しましたよね?! 割合が狂ってるし、いつの間に用意したんですかあれ!」
案の定、ツッコまれました。
「皆さんにあれこれ用意してもらっている内に、数種類のチーズをおろし金で粉末に変えておきましたとも」
使うチーズの種類と、その配合比はシスター直伝で秘密だ。
シスターいわく、イタリアンマフィアの女傑ではない別の大親友のレシピらしく、門外不出で口頭で言い伝えられてきたものらしい。
なんでそんなものをシスターは知っていたんだろう、と思うのだけれど―――もう、聞くことのできない話だ。
ともかく、人前に出すときは誰にも知られずに用意するようにと厳命されている。
「細かいレシピは内緒ですので。もし知りたいなら頑張って再現するといいでしょう」
「内緒のレシピが多いぜ、チハヤ君」
飽きれ混じりに悪態を言われた。いつものことだけども。
彼はメモ帳を仕舞い、俺も呼ばれているので、と言って去っていく。
残されたのは僕一人。
鍋は残り二つ。一つは空で、もう一つはおかわりを要求された時用のもの。白ワインがベースだけど。
それに白ワインは余ってるし、チーズの方もあと一回分は残ってる。
バケットも、蒸かした肉や野菜もおかわり分としてなくはないけれど、一人で食べるには明らかに量が多いし、それらを食べきったとしてもフォンデュの方は余るだろう。
もったいないよな、と思ってると。
「チハヤ!」
食べてもなお、お腹を空かせていそうな王女様の声。
声が聞こえてきた方へ視線をむけると、やっぱりアルペジオが手を振っていた。
アルペジオがいるかまくらには、彼女の他にもエリザさんとフィオナさんがいてチーズフォンデュをつついていた。
「配り終わったなら一緒にどうー?」
そんなお誘い。
ちょうど、いいか。
「パンとか足りてるー?」
僕が食べる分がなかったら意味がない。
ここにいる内に聞かないと。
こちらからでは、鍋の中身がどれだけかはわからないが、フォンデュもパンも野菜も。間違いなく減っているだろう。
「じゃあ、おかわりもー!」
予想通りの解答だった。
お茶と、自分の分と彼女達の追加分―――確か彼女らのは白ワインのだったか―――を持ってそのかまくらへ歩く。
夜空には、星と月が浮かんでいる。
―――確か、今は欠けていく方だったか。月齢でいうなら21ぐらい。
どうやら雲は流れて、すっかり晴れたらしい。
それでも吐く息は白いし、風は突き刺さりそうなぐらい冷たい。
だからか、かまくらの中は存外、それほどは寒くはなかった。
コンロに火が入っているので当然といえば当然か。
奥にLEDライトが置かれて中を照らしているので明るい。
かまくらの中、中央に鍋が置かれてその右にアルペジオとエリザさんが座り、その向かいにフィオナさんが座っている。
空いている椅子は、フィオナさんの隣。
何かの、誰かの意図を感じる。
それはともかく。
鍋のフォンデュは思いのほか減っているし、絡める食材も相応に減っている。
「お待たせ」
「おかわり!」
「……今、入れます」
アルペジオに急かされて、鍋に追加のフォンデュを注いで皿を取り換える。
「はい。どうぞ」
その言葉を待っていたかのように、三人は串に思い思いの具を突き刺し、フォンデュに絡める。
僕はというと、いつも通り祈るように両手を合わせて、食前のお祈りだ。
「……早く食べないと全部無くなっちゃうわよ?」
左隣から、意地悪そうなフィオナさんの指摘。
まわりの人に言わせると、僕の食前のお祈りは長いらしい。丁寧とも言われるが。
つまり、食べ始めるのが遅いという話だ。
「……食べ尽くさないでほしいね」
合わせた手をほどきながら串を手に取る。
目の前では、アルペジオとエリザさんが美味しそうにフォンデュを絡めたパンやら肉やら野菜やらを頬張っている。見ていて気持ちがいい。
確かに、フィオナさんの言う通り、早くしないと僕の分が無くなりそうだ。
「お味はいかがでしょうか?」
あえて上品に尋ねる。
「美味しい。ソースを鍋で温めながら、自分で絡め取って食べるのは斬新ね。チーズの味もクセになりそう」
すぐに答えたのはフィオナさん。好評価だ。
「美味しいわ。食べる場所も斬新だし、次の機会が楽しみね」
上機嫌に答えるアルペジオ。気に入ったらしい。
「今度は牛乳ベースを所望いたしますわ」
対するエリザさんは次の予約と来た。
そちらも気になったらしい。
「白ワインがオススメなんだけどな……」
近い内にね、と了承する。
その近い内、というのも明後日なのだけれど。
「拘りますわね。白ワインで作るのがお好みで?」
「そうでもあるし、シスターの好みだったからね」
そう答えて、そろそろ頂きますかね、と言って話を切り上げる。
最初は、パンがいいか。
バケットに刺して、フォンデュの中へ入れてチーズを絡める。
糸を引くチーズを串を回して絡め取って、垂れないうちに口の中へ。
白ワインのフルーティーな味わいと、エメンタールチーズの香ばしい香りと隠し味のチーズの酸味が口に広がる。
「……懐かしい味」
思わず、声がいつもの女の子のようなトーンに戻って、頬がほころぶ。
蒸かした肉や野菜も串に刺してはフォンデュを絡めて食べていく。
およそ、2年ぶりのチーズフォンデュ。
最後にしたのは、いつだったか。
孤児院の子供たちと、神父やシスターをはじめとする職員たちでつついたそれは。
「…………」
「…………」
「…………」
ふと気がつくと、三人の手が止まっています。
じっ、と 私 を見ています。凝視です。
何か変でしょうか。
「……どうしました?」
聞かなければわかりませんし、聞くとしましょう。
「……何も……」
と、言って目を逸らすのがエリザさん。
少し顔赤いのは白ワインのアルコールですね。きっと。
白ワインベースだですし、煮込んでもアルコール分が飛びきらないんですよね。
「…………」
対照的に、黙って目を逸らしたのはフィオナさん。
同じく顔が赤いので、きっとアルコールのせいでしょう。
「……鏡を見せてやりたいわね」
最後にそう答えたのはアルペジオ。
意地悪そうに、ニヤリとしています。
顔はそこまで赤くないので、アルコールには強いのかも。
―――まあ、実のところ思い当たる節はあるのです。
シスターにも指摘されてきますからね。
「なるほど。―――私の表情に見惚れていたと」
「しれっと言ってくれるわねー……」
肩をすくめて、呆れたようにため息を吐くアルペジオ。
「ホント、チハヤって男の顔じゃないし、自然体の時の表情とか可愛くてズルいわ」
「シスターにもよく言われてましたね。―――あなたが鉄面皮なら男の子の純情が音を立てて崩れることはないでしょうに、なんて」
「…………何をしたのよ……」
「罰ゲームで普通に女装して、接客業のお手伝いをしただけですよ?」
そのあとの、アルバイト先で起こったことは内緒です。
「女装を普通にとか言わない! 行為自体が普通じゃないわよ!」
指差しで指摘されました。
そのツッコミにクスクス笑うだけで答えます。
おかしいことをしているのは重々承知ですので。
今度はブロッコリーをチーズに絡めて食べます。
「罰ゲーム?」
今度はエリザさんです。
「はい。チーズフォンデュを食べるときのお約束みたいなものです。串に刺した具材をフォンデュの中に落とした人は、というね」
―――で、うっかり落としてしまって私ことチハヤさんは女装イベントまっしぐらです。総合的に感想を述べるならば、楽しかったのですが。
「まあ、おかげさまでシスターのメイク術やら何やらを学べたのですが」
こうして思うと私は、シスターから学んだ事はとても多い。
作法、料理、美容、音楽、思想、言語にエトセトラ。
もしかしたら、でなくとも神父よりも多いかもしれない。
―――だからこそ。
返したくとも、返せなくなった恩はたくさんあって。
あの時、死ぬのが私だったら――――。
「―――チハヤ?」
フィオナさんの心配そうな声が、その思考を打ち切らせた。
「―――何ですか?」
「また、変な顔してる」
「―――ちょっと、昔を思い出しただけですよ」
誤魔化しの一言だ。
「―――孤児院のみんなと職員とで、機会があれば、また雪だるまやかまくらも作ろうって話を、思い出しただけです」
次に出た言葉は、事実だ。
あとは、かまくらの中で鍋でも頂こう、なんて話だったか。
「まあ、もう叶わない話ですが」
そう言って、お茶を一口飲んでから、かまくらの外を見る。
いくつもあるかまくらと、和気あいあいとチーズフォンデュをつつく人たちがそこにいる。
もしかしたら、《黒い球体》が発生しなければ、孤児院のみんなと、こう過ごせたのだろうか。
そんな、もしも、という感覚が幽霊のように纏わりつく。
自分一人だけ叶えたところで、他の人達はいないのだから、叶っていないも同然か。
「じゃあ今度、かまくら作る時はチハヤも参加ね」
フィオナさんはそう楽しげに言って、串にバケットを刺してフォンデュにつける。
「今度って、数年後よ?」
そんな、アルペジオのツッコミ。
レドニカは数年に一度の雪の年末を迎えるという。
その年が今年だったというだけの話で、来年は雪は降らないだろう。
「数年後でもいいじゃない? みんな、きっといるでしょ?」
そのフィオナさんの言葉に、楽観的で希望的ですねと思う。
そんな先なんて、どんな未来なのか分からないというのに。
――――でも。
「じゃあ、その時でも」
そう口を開く。
「その時、みんなでかまくらとか作りましょうか。……アルペジオも、ちゃんと私も呼んで下さいよ? 今日、仲間外れでしたし」
「気にしてますわね……」
「乗り気ね……」
「それはもちろん。これぐらいの約束ぐらい、してもいいでしょう」
少しだけ、笑ってみせる。
悪くない――――どころか、いい約束でしょう。
「じゃあ、約束!」
「ええ、約束しますとも」
そんな先の未来なんて分からないけれど。
約束しても、いいでしょう。
蛇足。
「さて、フォンデュを食べていきましょうか」
そう言って、 私は串をブロッコリーに刺して、フォンデュへ突っ込む。
そして、無情にも。非情にも。
「……あ」
ブロッコリーが串から落ちて、フォンデュの中へと消えていった。




