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並行異世界ストレイド  作者: 機刈二暮
[第七章]年末にて、龍と狼と魔法少女と
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あの日々は夢だった



 異世界に転移するという現実離れした体験は、夢でした。


 その妙で、実に現実味のある日々も、夢でした。


 相手が開いたと思える黒い球体を閉じようとして、結果的に私だけが飲まれてしまったことも。


 黒い球体が浮かぶ空の下で、機械の龍を相手に、アニメに出てくるようなロボットと共闘したことも。


 その場所が私から見ても異世界であること。


 同じ境遇の黒髪のお姉さん(男らしいけど容姿的に男じゃないのでそう表現する)が淹れてくれたココアが美味しかったことも。


 そして、世界間を渡る事が出来る、右目に花の眼帯をつけた黒服のお兄さんに、元の世界に戻る術はないと言われたことも。


 そして、なんとしても元の世界へ戻る為に、協力を取り付ける為にその『ナウエマフヨ』に戦いを挑んだことも。





 そして、勝てなかったことも。





 ナウエマフヨに斬られた後、何か、年上のお姉さんのような誰かと話をしたような気も。





 それらは全て夢で。





 気が付いたら、私はみんなの前で倒れていました。


 日も、時間も。私が黒い球体を閉じてしばらくが経った頃のようで。


 これで私たちの戦いは終わったのだと、皆で喜んだこと。





 その時は、私は素直に喜びました。


 あれらは全ては夢だったんだと、安堵しました。





 ―――でも。


 私は、あの出来事を、夢を思い出すたびに、『あれは、本当は現実だったのでは?』と思い直すのです。


 あの現実味のあった毎日は、夢ではないのでは、と。


 その疑問に答えてくれる人はいないし、いつまで考えても出ない答え。




 ―――もし、あの異世界への転移が事実だとしたら。


 あの人達はどうしているのだろう。


 二つの勢力がぶつかる前線で出会ったあの人達は。


 まだ、黒い球体から落ちてくる物資を敵国の人達と奪い合っているのだろうか?


 それとも、黒く尖鋭的な四つ目のロボットと白と灰色の二色で角張っていながらスマートでヒロイックなロボットのように、手を取り合う事をしているのだろうか?





 考えたところで、どうしようもないのだけれど。





 それよりも、今日はどうしようかを考えます。


 天気は晴れ。三月の終わりの、春らしい暖かい日。


 その午前。


 入学する高校の課題はもう三日前に終わっていて、することはあまりない。


 するとしても、ネットサーフィンか読書か。


 そう考えながら部屋の鏡を見て、そうだと思い立つ。


 髪を切りにいこう。


 まだ、夢で出会ったあの人のように長くはないけれど。


 前髪ぐらいは、整えないと。


 真新しいスマートフォンを手に取り、行きつけの美容院に今日空いているかを確かめるべく電話をかけた。



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