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物語と現実の違い

ミナミの村の裏には霊峰七星山がある。そこには普段人が立ち入らないため獰猛な野生動物や危険な植物などが存在している。俺は小説の設定を思い出しながら山へ登っている。さっきも言ったが普段人は立ち入らないので道なども舗装されていない。本物の獣道だ。

「意外ときついな。シスイ、大丈夫か?」

 男の俺でもきつい山道だ。まだ幼い女の子ならさぞきついだろうと思い俺は後ろを振り返る。

「ぜ、ぜ、ぜんぜん大丈夫ですよ」

 汗はそんなにかいていないが下を見ながらプルプルしている。

「ほんとに大丈夫か?」

 あまり時間はないがここらで一回休憩をとっても大丈夫だとおもう。

「ほんとに平気ですから。早く行きましょう」

 シスイが俺を追い越し前へでた。それと同時に木の上からクモが一匹糸を垂らして落ちてきた。クモはちょうどシスイの前で静止した。なぜかシスイも静止してる。

「はやくすすめ_______________」

 俺が言い切る前にシスイが刀を抜いて騒ぎ出した。

「きゃーーーーーームシ!ムシ!やーーーーーーー」

「おい、落ち着けよーってあぶねー」

 シスイの刀が俺の髪をかすめた。それだけで済めばまだよかったのだが、シスイは魔法の呪文を唱えた。

「きゃぁーーーーーー。ウォーターウェーブーーーー」

その魔法は、水の三大魔法の一つウォーターウェーブ。本来は水辺で使いその水を操る力なのだが、シスイだけが使えるウォーターウェーブがある。シスイは虎波を地面に突き刺すことで地下水脈を操ることができる。


現にいま、俺の目まえの地面から噴水のように水が噴き出している。

「おいおいおい。なんかやばそうだな」

 俺がそう思った瞬間地面が振動し始め、次の瞬間には俺はシスイの水に流されていた。


どのくらい流されていたのだろうか。俺が目を開けるとそこには目に涙をためたシスイがいる。

 「ゴメンなさい。何も考えないで魔法を使ったから。こんなことになって」

まあ水に流されて服はびしょ濡れだが今この瞬間が幸せならいいと俺は思う。妹の膝枕という最大のご褒美をもらったのだから。

「きにするな。虫が嫌いだったんだろう?」

 

俺は体を起こしてあたりを確認する。俺たちは今川辺にいる。どうやら相当流されたようだ。体にも目立った外傷はなったので俺たちはすぐさまトウヤの捜索を始めてた。しかしまったく見つからない。七星山は俺の想像の十倍くらいの大きさがある。現実世界ならヘリで空中から探すレベルだ。日が暮れ始めたころ、もしかしたらトウヤはもう村に戻っているかもしれないと思い俺はシスイに村に帰ることを提案した。ここで大きな問題が発覚した。

「帰り道わかんねーーーーーー」

 

流されたせいでまったく道が分からない。頼みの綱のシスイも目に涙をためているからわからないだろう。普通こういうときはあまり動かないのがセオリーだがそれは救助がある場合だけだ。救助が期待できないこの状況では無理にでも動くしかない。

 しかし、そのあともしばらく歩いたが、完全に日が落ちてあたりが見えなくなった。さすがに外を歩き回るのが困難になってきた。そのとき、幸いなことに洞穴のようなものを見つけそこで今日は野宿することにした。この時もシスイはさっきの失態を気にしてか、泣いたままだ。

「気にするなよ。それよりトウヤの方が心配だな。村に帰ってればいいけど」

シスイは一向に泣き止まない。どうしたものか。こういうとき本物の兄貴はどうするのだろうか。一人っ子だったことが悔やまれる。俺はいろいろ考えた結果強硬策をとった。俺は隣に座っているシスイの脇腹をつついた。

「ひゃん。にに、お兄ちゃんのばかぁーーーーーー」

 小さな手でぱたぱたと叩かれたが全然痛くない。ある程度叩き終わるとシスイは大きく息を吐き俺のほうへ向きなおす。

「で、でも、、、お兄ちゃん、ありがとう」

さっきまで溜めていた涙はなくいつものかわいいシスイだった。

「なに?もう一回して欲しいの?」

 とりあえずシスイが元気になってよかった。

「もー。お兄ちゃん。素振り一千万回」

 あー元気になりすぎちゃったみたいだな。頬を膨らまして怒っているシスイもかわいい。シスコンなのかもな。シスイが元気になったのはいいがここで新たな問題が浮上した。日が完全に落ちた洞穴は真っ暗だ。

「なんか灯り欲しいな」

「そうですね。兄さん申し訳ないんですが木の枝を探してきてもらえませんか?その間に私は火を起こす方法を考えます」

そういうことならと俺は立ち上がり暗闇の中へ飛び出した。夜の森は思った以上にしーんとしているが不思議と不気味という感じではなかった。俺は言われたと通りに木の枝を拾い集める。普段誰も入らないだけあって枝はすぐに集まった。十分な枝が集まり洞穴に帰ろうとしたとき後ろの茂みからガサガサという音がした。頭で考えるより体が反応して、俺は刀を抜いていた。

「ガォオ――――」

 茂みから姿を現したのは小さなトカゲのような生き物だった。小さいと言っても俺の知っているトカゲの十倍くらいはあるけど。トカゲは腹をすかしているのか元気がなかった。俺は、トカゲを捕まえ俺は洞穴に戻った。中ではシスイが石と石をこすり合わせていた。どうやら火種を作っているらしいがさすがに原始的すぎる。俺の足音に気付いたシスイが顔をあげた。

 「お兄ちゃん。どうでした?って、、、お兄ちゃん、、、それ」

暗くて細かい表情からなかったが驚いているようだ。確かに暗がりに光るマンダの目は不気味だもんな。俺はさっきのトカゲにマンダと名前をつけた。

 「あー。さっき外で拾った」

「拾ったって、、、それドラゴンの子供ですよ」

 ドラゴンの子供か。いくらなんでもそれはないだろう。羽も生えてないし。俺は腕の中で大人しくしているマンダをみて思った。

「こいつがか?おとなしくて可愛いじゃないか」

俺はマンダをシスイの方に差し出して言った。しかし反応はあまりよくない。

「能天気なんですから」

シスイに完全に呆れられてしまった。

「あ、でもドラゴンなんだったら火出せるんじゃないか」

名誉挽回のためにも頼むぞマンダ。俺はさっき集めてきた枝を半分積み上げて、マンダの前に置いた。俺の願いが通じたのか、大きな欠伸をした後にドラゴンらしい火を吐き出してくれた。

「ほ、ほら。火出せるぞ。役にたっただろう、、、」

「火は出せましたけど、、、、、、」

シスイの目線の先には燃え上がる火があったわけではなく炭の山が出来ていた。

「あはは、、、まだ枝はあるし次に期待だよな。マンダ」

マンダは俺の方をみて首をかしげている。消し炭を横にどけて新しい枝の山を作る。通じるか分からないが俺はマンダにさっきより弱く頼むなというと、ガォォと返事をしてくれた気がする。だが結果はさっきと変わらなかった。俺はシスイに睨まれたあげくまた外へ枝を探しに行くことになった。素振りがまた一千万回増えたのは言うまではない。

そのあと結局枝を集めたのだがシスイの原始的な方法で火がつくことをなかった。俺たちはあきらめ暗いまま休むことになった。こんな暗くてジメジメしていてなおかつゴツゴツしている場所で寝るの初めてことで中々寝付くことができなかった。俺の横ではシスイはすぅすぅとかわいい寝息を立てている。その寝息が聞こえるたびに俺の眠気はどんどん覚めていく。

「はぁー。俺はいつ帰れんのかな。ゲーム発売しちまうよ。」

月が洞穴を照らし出す。横にいる金髪の少女を見て俺は再確認した。ここは現実ではないと。

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