金髪袴ってやばくね?
次の日の朝俺は自分の家ではなくミナミの島で目を覚ました。多分こうなると思っていけどいざ現実になるとどうしたらいいのかわからなくなる。ホントなら昨日死んでいるはずの俺が今生きている。そして昨日悪の帝国を倒すと決意するトウヤは昨日泣いて家に引きこもっていた。
「どうしたもんかねー」
このままでは俺は一生この田舎町で暮らしていかなくてはならない。一瞬それもいいかと思ったが来週発売のゲームを予約していたことを思い出し俺は踏みとどまった。
ゲームがなければどうなっていたかというのはこの際考えないようにしよう。そんなことを考えていると
下からどんどんと昨日同様駆け上がってくる音が聞こえる。間違いなくシスイだ。せっかく起きているのだから驚かしてやろう。俺はそう思いドアの前へ移動した。俺の作戦はこうだ。ヒスイが階段を上がってくる。俺はドアの前に立つ。シスイが入ってくる。いるはずのない俺が立っている。驚くが俺のシナリオだ。
「お、、お兄ちゃん起きて朝だよ」
きたきた。ここで物音を立てると気づかれてしまうので俺は息をひそめた。
「もーまた寝てるの。しょうがないなー」
ドアの前でぼそぼそ言いながらヒスイはドアノブに手をかけた。
キタキタ!俺は彼女と初対面したときと同じくらいの高揚感を感じていた。
だが次の瞬間俺の目の前に見えたのは妹のおびえるかわいい顔ではなく汚い天井だった。どうやら力いっぱい開けられたドアが俺の鼻に直撃したらしい。俺はバカだった。ドアノブがある時点で気づくべきだった。ここは引き戸ではなく開き戸だった。
シスイの開けたドアにふっとばされ俺はしばらく動くことができなかった。それはもちろん鼻に直撃して痛いからというのもあるがなによりここから見えるシスイのきれいな生足を見たいからだ。ヒスイは青のきれいなワンピースに薄い緑のカーディガンを羽織っている。そしてその下は中学生にしては少し早い黒の下着だ。けしからん。
「兄さんは朝から何をしているんですか」
俺のことを虫でも見るような目で見てくる。きっとお怒りなのだろう。
「いや、ちょっとな。うん?あれ」
俺は立ち上がって何気なく鼻を触るとなにかべとべとする。俺は鼻水かと思って見て見ると大量の血が鼻から噴き出していた。
「お、お、お、お兄ちゃん大丈夫?タオルもってくるね」
いつもの優しい妹モードになったヒスイは急いで下に行きタオルを持ってきてくれた。結局鼻血は数分で止まったが、 そのあと食べたヒスイの朝食は血の味しかしなかった。食事をしている間に俺は朝の出来事の説明をしていた。俺が驚かそうとしていたことやヒスイが開けたドアにふっとばされて鼻血を出したことなど。ヒスイは兄さんが悪いんですといいながらでもごめんなさいと中々のツンデレっぷりを見してくれていた。そんな話をしながらする食事は味こそ感じなかったがとても有意義なものだった。
「はーおいしかった~ありがとな」
俺がそういうといえいえといって後片づけを始めた。実によくできた妹だと朝から感心する。
「そういえば。今日はトウヤ来ないのか」
昨日の感じだと毎日に朝きて稽古しているような感じだったけど。
「そういえば遅いですね~。サボりは素振り千回です。
スイッチが入ったシスイを見ながら俺は思ったもしかして勝手に山に行ったんじゃないだろうな。
「よし、じゃあ、あいつの家いくか?」
勝手なことをされると困るので俺はやつのようすを見に行くことにした。
「そうですね」
シスイは、短くそう答えると手早く洗い物をすまして俺のほうへやってきた。俺たちはすぐ隣のトウヤの家に来た。昨日同様シスイがノックすると中からスズネが顔を出す。
「あれ、シーちゃんどうしたの?」
どうやら俺たちが来るのは予想外だったようだ。
「トウヤ君がまだうちに来てないの」
スズネは驚いたような顔をしていった。
「にいならいつもより早く家をでていったよ」
他にトウヤが行きそうな場所はないかと聞いたがトウヤは普段稽古と畑仕事の手伝い以外ではあまり外に出ないそうだ。少し俺が書いていた内容とは違うがたぶん山に行ったのだろう。
「わかった。スズネは家にいてくれ。シスイと俺でトウヤを探しに行く」
今のトウヤじゃイノシシ一匹すら倒せそうにないしな。
「トウヤ君がどこに行ったか分かるの?」
シスイが心配そうに聞いてくるので俺は頭を撫でながら言った。
「多分だけど裏の山だろう」
俺が書いた小説ではリンドウとトウヤとシスイの三人でイノシシ狩りに行きその道中謎の洞穴を見つけてそこの奥にある伝説の剣ドレイクソードをトウヤが持って帰ってくるっていうところなんだけどだいぶ変わってしまった。
「山ですか・・・わかりました。一回家に帰って支度をしましょう」
少しの間こそあったが反対されなかった。昨日の感じだと絶対反対されると思ったのに。
「よし!わかった」
俺たちはトウヤの家を後にして道場に向かった。
道場に着いた俺はシスイに袴を渡され外に追い出された。
そういえばこれ書き始めたときちょうど戦国武将にはまってた時だったなー。
俺の先祖は前田利家だとか言ってたなー。
懐かしいような恥ずかしいようなそんなことを思いながら俺は袴に袖を通した。
しかし困ったことに俺は袴の着方を知らない。
「おーいシスイどうやって着るんだ―?」
仕方なく俺はシスイに聞くことにした。
「ちょ、ちょっと待ってください」
道場の中からこちらに近づいてくる足音がる。
「袴の着方を忘れるなんてどういうことですか?」
そういって出てきたシスイは綺麗な桜色の袴を着ている。帯は後ろできれいに蝶々結びされていて実にかわいい。てかどうやって一人で着たんだよ。胴着の時も思ったけど金髪に袴っていいなと綺麗に一つにまとめられている髪を見てそう思った。
「悪いな着方教えてくれたら自分で着るから」
さすがに着替えを手伝ってもらうのはな。
「私が手伝いますから早く中に入って下さい」
えーーなにこの嬉しいような恥ずかしい展開。俺はシスイに言われるがまま道場の中に入った。
「えーっとまず上着とズボンを脱いでください」
意外と恥ずかしがらないんだ。兄弟だと恥ずかしくないのか?おれは一人っ子だからそういうのよく分からないんだよな。
「わかったよ」
俺がズボンに手をかけるとヒスイは手で顔を覆った。どうやら恥ずかしいのは俺だけでは無いようだ。
ここで俺は朝失敗したいたずらをここで決行しようと思った。実は俺はズボンの下に体操着を着ている。たまーに体育のあとめんどくさくてそのまま履いてしまうことがある。プールに行くときに水着を着ていくのと一緒だ。
だがシスイは俺が短パンを履いているとは知らない。
ここで今回の作戦はこうだ。
上から脱ぐことをアピールしてシスイの顔から手を排除する。
そして今回はここで一気にスパートをかける上を脱ぐと見せかけて一気に下を脱ぐ。そこでシスイをびっくりさせる。
今回は完璧だ。
「悪かったな。上からぬぐよ」
シスイは俺の言葉を聞いてから手を下におろしてあ、ありがとうございますと言った。
だんだん申し訳なくおもってきたが俺は止まらない。
そしてシスイが完全に油断したところで俺は勢いよくズボンを下げた。
今度こそ成功した。
俺はそう思ってシスイの顔を見るとシスイは顔を真っ赤にしたまま動かない。
俺はシスイの視線の先を追ってみた。シスイの視線の先にあったのは俺の短パンの下の下にあるものだった。どうやら勢い余って三枚下ろしてしまったらしい。体から一気に冷汗が噴き出してきた。俺はとりあえず何事も無かったかのように静かにパンツと短パンをあげた。
あー終わった。
トウヤをかばう前にここで死んだわ。
俺は死を覚悟してシスイの言葉を待っていたがシスイの口から出た言葉は予想外のものだった。
「さあ、はやく着替えてトウヤ君探しに行きますよ」
どうやら俺と同じくなかったことにしたいらしい。ほんとにできた妹を持っておれは嬉しいよ。
「おう。頼む」
それからヒスイはもくもくと俺の着付けを済ませ俺に真剣を一本渡した。たしか雨宮家には代々受け継がれてる刀が二本あってそのうちの一本がこれ。名前は龍風そしてシスイが背中に背負ってるシスイと同じくらいの背丈がある刀が魔剣虎波我ながら中二病感満載の名前だ。
「これで準備完了です。」
シスイの表情は硬く緊張しているようだった。
「心配すんなよ。なんかあれば俺が助けるさ」
俺はそういってシスイの癖のない艶やかな髪を撫でた。
「なに言ってるんですか。お兄ちゃんが守るんじゃなくて私がお兄ちゃんを守るんです。あと戻ってきたら素振り百何回ですからね」
聞いたことのない単位の素振りの回数に俺は思わず聞き直した。
「えっ。なんで?」
シスイは顔を赤くしながら言った。
「さっきのことは忘れたんですか。あんなひどいことしたのに」
あー事故なんだけどなー。言い訳してもどうにもならなそうなので俺は甘んじて素振り百万回を受けることにした。もってくれよ俺の体。
「わかったよ。とりあえずいくぞ」
「はいっ」
さっきのつまらないやり取りで緊張がとれたのかシスイの表情は柔らかくなっていた。
そして俺たち二人は山へ向かった。トウヤ大丈夫かな。