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詩*祈りのようなもの*

渇望

作者: a i o

私は

ギリシャへ行きたかったのだ

パスポートと僅かなお金

着替えと化粧品を詰め込んで

小さなボストンバッグひとつ

携帯電話を置いて

誰にも告げず

地中海の風に触れたかったのだ


シンクの中には

朝ごはんの食器が水に浸され

乾燥機はまだごうごうと唸り

テレビのワイドショーは

けたたましい色で騒いでいる


私はいっそのこと

旅に出たかったのだ

父と母が新婚旅行で訪れたギリシャへ

幼い頃見た若かりし母の写真

愛と喜びに満ちた

うら若き乙女の微笑と

深く青い海


憧れの地で

白い神殿にひとり

我儘で偉大な神に

祈りを捧げたかったのだ


皺の残るワイシャツ

濡れている布巾

チラシの裏の買い物のメモ

息苦しいほどの

生活の匂い



窓を開けて



海へ行こう

地中海とは程遠いけれど

今日はもう行ってしまおう

ボストンバッグひとつ

後部座席にほうり投げて


帰ってくる

帰ってくる

帰らなければ、いけないから


この身ひとつ

簡単には飛び立てなくて

しがらみの中

私はギリシャに行きたかったのだ

地中海の風に触れたかったのだ

だから今は

祈りひとつ

海に連ねて

想いひとつ

海へ流して


またいつか寄せるように















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