赤い色は死の匂い
昔から【赤い色は注意して】と何かにつけて色々なものに書かれていた。
私はそんなものの中で暮らしてきたので当たり前だと思っていた。それが違うと知ったのは高校生になってから。市外に通うようになり、友人が出来て知ったこと…。
そして信号機を見て驚いていた。赤色があるからだ。
【赤い色は注意して】
この事なのかと思ったが、別段気にはしていなかった。当たり前の信号機だったからだ。
じゃあ何についての色なのかは不安が残る…。
友達はからかってくるが、私は真剣に考えていた。
両親もはじめは戸惑ったようだが、すぐに慣れてあまり気にしないようにしていた。
普通の高校生活は楽しく、みんなとはしゃいで登下校した。途中コンビニに寄ることもある。そんな中、夏の暑さもあって怪談話に話が逸れていった。
「そういえばさー。あんた田舎から出てきたんだよね。なんかそういうの聞いたことない?座敷童子とかさ…。」
「ううん、そう言うのは聞いたことないよ。あ、でも一つだけなら…【赤い色は気をつけて】っていうのは聞いたことあるけど……。」
「何?それ。分かんないし、つまんない。何かこうわーってのがないの?」
「そーなんだけどさー、ないんだわ。学校の怪談とか、よくあるありきたりのくらいかな?」
「あんたは?」
そう言われて小突かれたのは仲のいい男子の一人。
「モゴモゴモゴ。」はっきりとは聞こえない。「はっきり言いなよ。」と言われるとこう言った。「こういうのはどう?」
そう言って話し始めたのが赤に関係する話だった。
その町ではお祭りに赤色の狐の銅像を祀っている。赤は神聖な色として…。
毎年赤く塗りたくった狐の銅像を皆が担ぎ、神社に奉納している。そして拝むのが習わしだ。間違っても触ってはいけない。触るとその年の不幸を一身に背負うことになる。
一度間違って触ってしまった四十代の男性が触った翌日謎の事故死を遂げた。部屋のガスが漏れて爆発したのだ。事故後の現場検証の結果、死亡理由はガス中毒だった。ただ漏れた形跡がなく、鑑識も頭を悩ませた。
その後、噂が立った。狐様の祟りだと…。
触ったのは彼だけだったからだ。指紋も検出された。その鑑識も謎の死を迎えた。
首吊り自殺だった。家族には理由がわからず、遺書もなかった。
立て続けに2人も死者が出ると呪われているとしか思えなかった。
その町がどこにあるかというと……この町だった。私たちがいる町が舞台だったのだ。
「まったまたぁ〜。冗談がうまいわ。」
「冗談じゃないよ。現にその神社があるのはこのすぐ近くだし…。」
「なら行ってみようよ。面白そうじゃん。」
「面白半分でいくような場所じゃないよ。呪われちゃうよ。」
「なに言ってんの。行くよ。」
そう言うと強気な彼女はグングンと早歩きしていく。私達は追っかけるように慌てて走っていった。
神社が見えてきた。建物は少し古くなっていかにも出そうな雰囲気を出している。
「で、何処にあるの?その狐の銅像。」
彼女が見回してみると囲いがしてある場所に狐の銅像を見つけた。確かに真っ赤に染まっていて気持ちが悪くなるくらいだ。
「ねぇ〜これがそうなの?」
「そうだよ。あっ、でも触っちゃダメだよ。呪われちゃうからね。」
「分かってるって。触んないよ。」そう言いながら囲いの紐を触った。
「何してるの?」
「狐には触んないよ。でも近づいても大丈夫っしょ。」しかし近づいたと同時に紐がちぎれた。ブチッと言う音と同時に。
「えっ?何?」
分からなかった。ほんの一瞬の出来事だった。そしてそのまま近づいていき、指先が狐に触れた。
「あっ、やばっ。触っちゃったよ。どうしよう……。」
「まずいよ。、呪われちゃうよ。近寄らないで。」
「何言ってんの?友達でしょ〜。」
「なら、今から友達やめる。」それだけ言って男子は逃げていった。
「どうしよう。マズイよね。やっぱり…。」
「とりあえずお祓いしてもらおうよ。」
私の言葉に友人は早速神社の境内に入っていった。神主に事情を説明すると、神主は真っ青になっていたが、一応お祓いをしてくれることに…。
私も一緒にお祓いをしてもらったが、男子は逃げてしまってお祓いを済ませていない。そして、神主にこっぴどく怒られたが、今後は近づかないということで了解してもらえた。しかし、男子のことが気になる。
携帯にかけても繋がらなかった。
【お客様がかけられた番号は電波が届かない場所か、電源が入っていないためかかりません。】不安になった私達は男子生徒が向かうであろう場所へと急いだ。
すると踏切で電車の事故が起こっていた。なんでも学生が飛び込んできたらしい。運転手が気づいた時には間に合わなかったということだそう。周りの人混みをかき分け前列に行くとあたりは血だらけになっていた。
学生証が見つかったので確認すると例の逃げた男子生徒だと分かった。お祓いをしていなかったので呪われたのだと私達は瞬時に悟った。
それ以降あの神社に行くこともなくなり、静かな日々を送っている。