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これが僕の嘘。  作者: 公太郎-はむたろう-
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二度目の自己紹介

今日は高校生活二日目。ちなみに放課後だ。


「くふふ…、戸惑ってる戸惑ってる。」


そう、僕は嘘をついている。

嘘をついたという嘘を…。


僕の趣味は嘘をつくこと。自分でも良くない趣味だとは思っている。

まぁ、癖のようなものだと思って楽しんでいるのだけど。

なぜ、こんな訳のわからないことが趣味なのかは自分でもわからない。

わかることは“とても楽しい”ということ。


今は隣の席の級友に僕が嘘をついたという嘘をついたとこだ。

僕はこういう他人からは意味がわからないと思われる嘘が好きだ。

その曖昧さが好きなのだ。これについては理解してもらおうとは思っていない。

まぁそんなことはどうでもいい。


まずは僕の自己紹介でもしよう。


僕は、こんな趣味を持っているが友人は多い方だ。自分で言うのもなんだが、顔の造りも悪くはない。女の子からの人気もあると思う、たぶん…。


いや、こんなにもミステリアスな雰囲気を醸し出す青少年を世の女の子達が放っておくわけがな…


「げ、またあいつニヤニヤしてるし。」


…放っておくわけがないのだ。



ああ、そうだそうだ。名前を言っていなかったかな?

僕の名前は“鏑木 崩(つみき なだれ)”ここ、正直学園(しょうじきがくえん)の1年だ。


ちなみにこの学園は2年前に出来た全寮制の高校だ。

僕がこの学園に入学したのは両親の判断だ。


「正直学園って言うくらいなんだから、この子の悪い癖も治るかもしれないわ!それに、全寮制でしょ?もし嘘をついても、嘘がばれて嫌われて無視されたりして、嫌でもなおりそうだわ!!」


と、僕の母が目を輝かせて言っていた。


だが残念だったな母上。

僕は肉親以外に一度も嘘がばれたことがないのが自慢なのだ!!


「うわ、さらにドヤ顔までしてるし。」


どうやら、今はこんなことを話している場合ではないようだ。


「おい、僕に何か用か?」


僕は今、とても不機嫌な顔をしているだろう。


「あら?聞こえちゃったー?ごめんなさいねー?気持ち悪い程に自分に酔っていそうな奴がいたから、ついつい声に出ちゃったのかしらー?」


「その口調はなんだ!その口調は!お前みたいな平凡顔がそんな話し方をしても、ちっとも優雅には聞こえないぞ!!だいたい、なんでお前がここに居るんだ!!」


「はぁ?誰が平凡顔だって?」


「お前だ!ライチ!いつもいつも僕にちょっかい出してきやがって!僕の質問に答えろ!な・ん・で!お前がこの学園に居るんだ!」


この女、実に残念なことながら僕の知り合いなのだ。

浅葱莱薙(あさぎらいち)。実家は浅葱流古武術道場を経営している。

もちろんこの女も古武術の使い手だ。しかも師範代。


「あーもう!煩いわね!そんなにギャーギャー叫ばなくても聞こえてるわよ!だいたい私のどこが平凡顔って言うのよ!言ってみなさいよ!」


「だから、僕の質問に答えろと…」


「私のどこが平凡顔なのよ!」


「全部だよ!あぁ、でも顔は平凡でもすっげー怪力の化け物女だけどな!これでいいだろ!いいから早く僕の質問に…」


「今、なんて言った…?」


「は?だから僕の質問に…」


「私は怪力の化け物じゃなーい!!!」



鈍い打撃音。打ち上げられる僕。怒涛の連撃を繰り出すライチ。地に足を着けられない僕。状況についていけずに尻もちをつく女生徒。目ざとくパンチラを目撃する僕。格闘ゲームのような見事なコンボに目を疑う男子生徒。大丈夫、これは現実だと目で訴える僕。目をそらす教師。チラリと目線を寄越す僕。


おい、教師。目をそらすんじゃない。お前の仕事場で人が殺されかけてんだぞ?

いや、何チラ見してんの?いいから助けに来いよ。早くしないと新学期早々に学校閉鎖しちまうぞ?いいの?仕事なくなっちゃうよ?こんな時期に雇ってくれる学校なんてないと思うぞ?それでもいいの?


お?こっち見たな。そうだそうだ。そのままこっちにきてこの女の暴走を止めて…まて!なんでそこで躊躇する!今、覚悟を決めたような目をしたではないか!

あ、やばい。視界が途切れてきた。限界が…。


「うおっ!なんだこれ!?」


む?この声は先ほど知り合った、マジちょろ男君では「そんな名前じゃねーよ!」


ふむ?違ったかね?

まぁ、それはいいとしてそろそろ限界なので助けてくれると嬉しいなぁ?


「俺に“ソレ”をどうにかしろと?」


うむ。君はなかなかの美形だから優しくこいつに話しかければ止まるはずだ。


「いや、別に俺は美形なんかじゃ…。」


いいから早くしたまえ!いや、もうマジでお願いします!限界なんです!僕、昇天しちゃいます!あぁ!あれは去年の夏に亡くなったお爺ちゃんではないか!お爺ちゃん!なんで足が透けているんだい?え?まだお前が来るには早すぎる?そうなの?ん?あぁ、お婆ちゃんは元気だよ。うん。うん。へー、お爺ちゃんへそくりしてたんだ!え?くれるの?マジで!?やったー!!で、どこにあるの?へ?俺の部屋?箪笥の上から2番目の引出しの裏?…って、それ俺のエロ本の隠し場所やないかーい!!なんで知ってるの!?は?ワシのエロエロセンサーが反応した?なにその無駄なセンサー!何!?そのセンサーってラッキースケベにも反応するの!?俺にもその能力くれ!!


「な、なんかよくわからんがあいつがやばそうだな。と、とりあえず助けよう。」


ゆっくりと後ろから近づき優しげな声で語りかけるちょろ男君(仮)。


「あ、あのー?ちょっといいでしょうk…ぐばらぁっ!!」


「ん?あ、またやっちゃった…。」


吹き飛ぶちょろ男君(仮)。グッジョブです!


いやー、流石に今回は死を垣間見たな。うむ、これからは気を付けよう。

流石は浅葱流古武術道場の師範代。侮れん。


「いやー助かったよ。ありがとう。」


「…………。」


返事がない。ただの屍のようd…「死んでねーよ!?」


おお!生きていたのか!あの怪力おんn…。

ふむ、何か殺気を感じる。

あのライチの一撃、しかも不意打ちの裏拳を受けて起き上れるとは…。


「くっー!いってぇー!なんつう破壊力!」


「あの…、その…、ごめんなさい!わざとじゃないから許して!」


「いや、俺は別にたいしたことはないからいいんだけどよ…。あいつは大丈夫なのか?」


「ああ、あいつは…。」


「やぁ!どうもありがとう!ん?僕かい?僕は大丈夫さ!なんでって?なんでだろうね!」


「いや、なんで平気なんだよ…。さっきまで死にかけてたじゃねぇかよ。」


「気にしたら負けよ。こいつは昔からそうだったんだから。」


「そうそう、気にしたら負けだよ?」


「なんだろう、俺は今とても理不尽な気分だ…。どうして俺はこんなにも苦しんでるのにお前は大丈夫なんだ?」


「だーかーらー。気にしたら負けだって言ってるじゃない!」


「はぁ…。」


「それはいいとしてちょろ男君(仮)。」


「なんだ?てか、俺はそんな名前じゃねぇぞ?」


「君の名前を教えてくれないか?」


「は?」


「君の名前を教えてくれないか?」


「いや、聞こえなかったわけじゃない。さっき自己紹介したよな?」


「したねぇ。で?君の名前は?」


「いやいやいや、なんで覚えてねぇの?」


「んー?なんでだろうね?」


「いや、なんでって…。お前、さっきの殺人コンボで記憶飛んだんじゃね?」


「失礼ねぇ。あんなんじゃこいつは殺せないわよ。まぁ、記憶は飛ぶかもしれないけれど。」


「いや、飛ぶのかよ…。」


「じゃあ、飛んじゃったんだろうね。」


「…………。」


「…………。」


「はぁ…。俺はサカキ、柊 栄喜(ひいらぎさかき)だ。」


「うん、サカキ!よろしくね!僕の名前は…」


「鏑木…だろ?」


「な、なんで知っているんだ!?ま、まさか!」


「いや、まさかも何もねぇから!さっき自己紹介済ませてるから!お前が記憶飛ばしちゃっただけだから!!」


「あ、そうだったね。まぁ、ともかく僕は鏑木 崩。ナダレって呼んでよ!」


「おう!よろしくな!」


「じゃあ、次は私ね!」


なんと、厚かましくもこのかいりk・・・この古武術女は自己紹介し始めた。


「私は浅葱莱薙。実家は古武術の道場をやってるわ。非常に残念なことだけどそこにいるナダレとは知り合いね。気軽にライチって呼んでちょうだい。」


「失敬な。僕はお前の家のスポンサーみたいなもんだぞ!」


「ええ、そうね。非常に残念なことにね!」


「スポンサー?」


「そ、スポンサー。まぁ、古武術なんて今時やる人は少ないのよ。だから私の家は裕福とは言えないんだけど…。どこにそんなお金があるのか知らないけど、こいつが毎月のように稽古代とか言って大金を持って来てくれるおかげでどうにかやっていってるってわけ。」


「すごいな、お前。金持ちだったのか。」


「ふふーん。すごいだろー。」


そんな話をしているうちに周囲にいた野次馬もいなくなったようだ。


「ふむ、どうやら話しているうちに皆、帰ったようだな。僕たちも帰るか。」


「そうね、帰りましょう。」


「だな!」












校門に差し掛かったところでふと思い出す。




「で、ライチ…。なんでここにいるんだ?」








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