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止まるべき場所(とどまるべきばしょ)

作者: BloodyBishop

愛する者を奪われた苦しみと、理不尽に奪われた者の苦しみを味わうが良い。

 夜勤が明け、スクーターに乗り家路に着く。

 途中いつものコンビニに寄り、発泡酒とノリ弁を買う。

 これも毎日の日課だ。

 東京に出てきて、早4年になる。

 A県で一番の進学校を卒業し、進学のため上京したものの。

 2年間浪人した後、結局、志望大学はおろか 、滑り止めで受かった私立大学にも、親の経済的理由で進学を諦めるしかなかった。

 2年間、予備校に通う余裕がまだ親に有ったなら、最初の年に受かった私立大学に通っていればよかったのだ。

 国立で無くとも十分有名大学だったはずが、自分のプライドが許さなかった。

 同級生達は皆、国立に受かり、自分は 彼らよりも優れた人間なのだと見返すつもりだった。

 今更ながら自分のタイミングの悪さに嫌気が挿してくる。

まさか母親がパチンコに狂い、借金を抱えているなど……。

 父が定年退職を向かえ、そのことに気がついたのは3回目の試験が終わった時だった。

 退職金と進学のために準備していた貯金は消費者金融3社に支払た後もかなり残っているらしく、父は地元で夜勤の警備員をしているらしい。

 結婚の遅かった両親にとって自分は一人息子で、母にとって自慢の息子だったが、その息子が2度も志望大学を失敗している事で、かなりストレスを感じていたのだそうだ。

 たまに家へ帰るごとに、どこから情報提供されているのか、同級生の誰々は大学の近くでバイトしているので今年の夏は帰って来ないだとか、国立大の誰々はどうだとか、浪人生にとって、いたたまれない会話が多く、2年目は盆正月も東京で過ごすようになるほど、母親に会うことが嫌になっていた。

 そんな理由も有り受験生をやめ、予備校時代からアルバイトをしていた運送会社に、未だアルバイトとして働き東京に留まる事は自然と言えば自然で有る。

 アパートの鍵を開け、買い置きのカップラーメンにお湯を入れるため、電気ポットの電源を差込み、デスクトップパソコンの電源を入れる。

 青い画面に”ようこそ”と表示されるまで、5分待ち、エンターキーを押すと、画面一杯にメイド服、ねこ耳のアニメ少女が”お帰りなさいご主人様”という吹き出しを出して表示された。

 「少し遅くなって来たな……」

とパソコンにつぶやきながらデスクトップに貼り付けられたアイコンを、いくつか立ち上げ「ははは……みんなそろってるな、愚民共」と独り言を言い「チ、消してやがるな!昨日の力作を!」そう唸ると、”北の神”と入力しゲームサイトの交流チャットに書込みを始める。 

仕事の有る日も休みの日もこのゲームをしながら、未だ正社員に採用されない仕事と、今の境遇にズタズタになったプライドの捌け口をネットを通じて解消する事がここ1年の日課だった。

 いくつかのゲームサイトでは自分は神であり、有名大学の学生であり自分の言葉(書込み)に何百と言う人間が反応する。

 現実はトラックの助手席に座り自分より年下で高卒の社員になじられる生活でも、この世界では、誰よりも強くそして頼られる12賢者の一人なのだ。

 しかし、ここ2ヶ月ほどサイトに異変が起きていた。

 12賢者の自分を除く11人全員から批判を受けているのだ。

 他のサイトでも、アップすると蜘蛛の子を散らすように参加者が落ちて行く。

 「……クソ」今日も又、昨日の長文書込みにクレームの山がスレされている。

 自国の幹部達に酷い文面で中傷をしていると言うのが事の発端だが、愚民相手に何を指示し、書き込もうが「当方の勝手だろ。他国に指図するな」と書込みをした後、嫌がらせに今日も力作の特大絵文字をチャット画面いっぱいにアップした。

 日曜の早朝にもかかわらず徹夜でゲームをする者も多いようで、かなりの人数がアップしていた。

 即座に管理者からの通報で、強制的に退席落ちを余儀なくされた。

 「仕方ない……今日は少し寝てから秋葉にでも行くか」

 誰も聞くはずの無い一人暮らしの部屋で、最近、独り言が多くなったと思いながら服をその辺に脱ぎ散らかしワンルームに置かれたベットの湿った布団に潜り込む。

 天井を見上げながら「いつからこうムシャクシャする事ばかりになったんだ?」又、独り言を言って目をつぶる 。

 (そういえば、高校の同窓会から変な事になってるナ・・)

 思い返すと3ヶ月前、成人式に合わせて同窓会をしようと幹事から携帯に電話が有った。

滅多に出ない未登録者の着信に、たまたま出てしまった。

 「はい」名前は名乗らず、むっとした声で 「どなたですか?」

すると女性の声で、「久しぶり。元気してた?」思わず「はぃ?」と変な声で返答してしまった。

 最近は母親以外、滅多に女性と会話していなかったので一瞬思考が混乱し顔が赤くなった。

 向こうは笑いながら「ごめんごめん同じクラスだった佐藤だよ」

 職場の更衣室で帰り支度をしながら受けたので、周りを見るとシフト明けのトラック運転手達がニヤついてこちらを注目している。

 同じ車両の先輩が小指を立てて(彼女か?)と言うしぐさをしている。

 思わず携帯を耳に当てたまま更衣室を飛び出し「おぉぉぅ……久しぶり、何で携帯番号知ってるんだよ……」地元で医者を目指すためA県H市の国立大に通っている佐藤真央からの電話だった。

 「実家に電話してお母さんから聞いたョ」相変わらず舌足らずの声で応答してくる、だが真央の顔を思い返そうとしたが声の特徴以外、思い返せない……。

 会社の更衣室前の廊下で10分程小声で話、今の近況等を話した後、会場の場所と日時、時間を確認して「分かった、俺も……俺も大学休みだし行くわ」そうつげて携帯を切った。

 どうやら実家の母は、今大学をあきらめフリーターをしている等とは伝えられなかったらしい。

 逆にそれで良かったと思った。

 今の生活はとても皆の前では恥ずかしくて言えた物ではない。

 そう思い”大学が休み”などと、ウソを言ってしまった。

 更衣室に戻ると高卒の年下で事実上、上司がからんで来た。

 「彼女から?彼女いるんだ職業フリーターでも。ネ、ネ どんな彼女ョ、スリーサイズは?もう何回ヤッタ?」

 (クソ!高卒の愚民め、女と聞けばヤル事しか考えねーのかよ)

 自分も結局、高卒だと思うと無性にはらが立った。

 なによりも、コイツは社員で自分はアルバイトなのだ。

 「いやぁ……ただの同級生ですよ……勘弁してくださいョ」心の中とは裏腹に吐いて出た。


                  * * *

 

 同窓会当日、A県A市の洒落た中華料理店の広い1室で2年ぶりに同級生達と会った。

 35人のクラスにもかかわらず、出席は自分を含め12人しか来ないと言う。

 そして、おかしな事に集まった同級生11人に会っても、懐かしさや思い出といった記憶がまったく無く、会話の内容も今となっては思い出せない程、つまらない同窓会だった。

 確かに当時、親友と呼べる友人は無く、同年代の連中は受験戦争のライバルで、ましてや自分と同じハイレベルな人間などここには居ないと思っていたので上辺だけの付き合いの数人とたまに遊ぶ程度だったが……

 (こんなに、クラスで知らない奴がいたんだ)

 その時は、皆、大人になり容貌も変わったのだろう、ぐらいで余り気にしなかった。

 むしろ気になったのは、終始、会話の内容が大学を卒業したらこうしたいとか、結婚はいつしたいとか、将来の話が多く今が楽しいと言う会話が少ない事だった。

 大学生は普通、大学ではこうしている、サークルに入って何をしている等の話が有るはずと思っていたが、ここではあまり会話に出てこない。

 一昨日、会社には成人式のため実家に帰るので休ませてほしいと伝え、夜行バスの時間まで自分の部屋のパソコンで大学生の多いチャットへ行き、話題と普段の生活状況等を今日の為に調べ、自分は、東京の三流大学だけれども弁護士になるため頑張っていると言う嘘のシナリオをまで準備して来たと言うのに……。

 ただ、何人かとはそういった話を取り混ぜながら会話をしたが、名前を名乗られても、やはり”懐かしい”と思える会話は出なかった。

 そのうち、最近飲み始めたなれない酒も入り、皆の言動が 酒飲みから酔っ払いになって来たころ、幹事の佐藤真央がガチャガチャと机の上に置かれた食器等を鳴らしながら立ち上がり突然切り出した。

 「ねぇ皆!もしサ!もしだョ…… 普段歩いている街の歩道とか、学校の教室とかにサ、突然ナイフとか持った人が乱入してきて、家族とか恋人を殺したら……どう思う!?」 舌足らずの声だがハッキリと響く声で彼女は叫んだ。

 その時、会話もつまらなくなったので一番隅の机に座り、窓から見える懐かしい繁華街を眺めていたので、何事かと声の方向を振り返る。

 すると出席者全員が酔いの醒めたまじめな顔で一斉に俺を注目している。

 「な・なんだョ……俺に聞いてるの?」ビックリして出た言葉がそれだった。

 立ったまま、佐藤真央は涙を流して下を向いていた。

 と、隣に座る女子が「真央……待って、ここでは……その話はしないって約束じゃない・・トイレ行こう。ネ?」そう言うと佐藤真央と隣の女子が席を立ち部屋を出て行った。

 その瞬間、周りはガヤガヤと何事も無かったように呑みはじめた。

 面食らっているのは自分だけで、何ともバツが悪く動揺をごまかすため隣の見知らぬ同級生に声を掛けた。

 「どうしたんだろうネ あいつ……何か有ったのかナ?」

 すると、エ?知らないの?と言わんばかりに顔を歪ませて「あぁ、彼女の両親が二人とも刃物で刺されて…… 新聞やニュースにもなって・・あ!ごめん君は知らないか、そうだよね、うん、ごめんごめん……その時、私も姉を無くしたんだ……。」

 妙に年寄りめいた口調だが、ガヤガヤ聞こえる周りの会話と同様に酔いで少しロレツが回っていない。

 「マーノ呑めよ、さあ」

 そいつはそういってタンブラーに入った紹興酒を飲み乾した。

 (何だ?俺だけ知らないのか……?。)

 何か訳でもありそうだったが、これ以上この話題に突っ込んで聞いても触れてはいけない何かが有り、空気が読めないヤツと言われるのも嫌だったので、その話はこれ以上触れない事にした。

 (普段つまらんニュースは見ないしな、ゲームが忙しいし、低脳な奴らが作る事件など、ましてや誰が死のうと殺されようと自分には興味も無いし自分以外の奴らはどうでも良いのだ)と考えて、注がれたグラスの甘い紹興酒を煽った。

 幸い、10分程して佐藤真央は笑顔で戻って来た。

 さっきと同じ席に着くと、ごめんごめんと周りにゼスチャーし、その後30分程でお開きとなった。

 「2次会はカラオケ屋でーす」

 元気を取り戻した佐藤真央の呼びかけに、俺を除く全員が二次会へ行く事になった。

 お前も来いと皆が誘ったが、自分の嘘の大学話がばれるのもいやだったし、これ以上思い出せないクラスメイトと苦手なカラオケをする気にもなれず、中華料理店の入り口の前で 「又来年も会おう」と手を振るクラスメート達と別れた。

 (そうだ……あの時からだ……)

 ベットの中で当時を思い返しながら、しかし夜勤明けと言う事と半分口を付けた発泡酒の力も有ったので、それ以上考える事は出来なくなって来た。

 ゆっくりと襲い掛かる眠気に身を委ね、そのまま深い眠りへと落ちていった。

 

                  * * *

 

 ブンブンと音が聞こえる。

 そしてとても蒸し暑い。

 (何か飲まなければ……)

 ガバッとベットの上に起き上がる。

 見ると、消し忘れたパソコンが、締め切った部屋の温度の上昇で、フリーズしながらフル稼働で冷却のためファンを回しているのだ。

 周りの空気も高温のため,むだにかき回しさらに蒸し暑くしている。

 まずい、と思い急いでパソコンまで行き、マウスを動かすが、反応は無い。

 「クソ……。動かない……。しかし暑いな……」

 主電源を押しっぱなしにして三秒ほどすると、ピューン、カタ…… まるで生き物がとどめを刺されたように、パソコンは悲鳴も上げず落ちた。

 シーンとなった部屋の窓を思い切り開け放つと、新しい外の空気と喧騒が流れ込んで来る。

 汗で体がベトベトしているが、入り込む風が汗のおかげで 気持ちよかった。

 「シャワー浴びて行くか……」

 眠ってから6時間、もう午後1時、夜勤明けの次の2日間は休み。

 調子の悪いパソコンのパーツを、秋葉原で安く調達するために、今日は出かける計画だ。

 メモリーを増設する事で、動きが格段に良くなると、 ゲームサイトで知り合った“ベルファイア” が言っていた。

 秋葉原のPCショップの店員で、安く譲ってくれると言うのだ。

 サイトで、交流の有る人間と会うのはこれが初めてで、オフ会等にも誘われた事は有るが、人と合うのが妙に面倒くさく、何を話していいのかも判らない。

 ともかく面倒くさいという理由で、今まで断って来たのだが……。

 どうしても会いたいと向こうから誘って来た事と、新型格安パソコンを知り合い価格で譲ってもよいと言う条件付きで会う事を決めた。

 シャワーを浴び、冷たいミネラルウォーターを半分飲み、ショルダーバックに詰め、その辺に有るまだ着れそうな服を着て思い切り外に飛び出した。

 眠ったせいか、体が軽く、晴天のため心もウキウキしていた。

[[改ページ:ここで行う]]

 階段を駆け下り、スクーターのキーを回し、ヘルメットをかぶった時だ。

 3メートル先の電柱の前に、リールに繋がった室内犬とその先を握った女の子が、ジッとこちらを見ている事に気がついた。

 (おや?見かけない子だな)白いワンピースに帽子、顔は血の気が無く、

不気味な感じの子だった。

 犬も白い毛にところどころ、茶色い斑点のような模様の染みがあり、死んだように舌をダラリと出したまま、濁った目でこちらを見ている。

 (気持ち悪いな……)そう思って目をそらそうとした時だ。

 電柱の後ろからニュッと青白い手が女の子の背中へ回り、「だめじゃない真央、出ちゃダメよ」そう聞こえた。

 女の子は「うん、ごめん」と舌足らずの声で答えながら電柱の影の誰かを見上た。

 次の瞬間、女の子と犬が一緒に電柱の陰に消えた。

 (エ?……)

 おかしな事に、この路地は曲がり角も無く、2m程の高さでコンクリート塀に囲まれた狭い路地なのだ。

 (ドアも窓も無いのに……)

 恐る恐るスクーターに乗りながら、ゆっくりと電柱の裏側をのぞく。

 「……!!」

 電柱の黒い影がコンクリート塀にベッタリ張り付いている以外、そこには誰もいなかった。

 「ウワー!!」

 言い様の無い恐怖が湧いて来て思わず声を上げ、そのまま人通りの多い大通りまでスロットを一杯に絞りスクーターで飛び出した。

 近くの駅まで無我夢中で飛ばし、何処をどう走ったか検討も付かないほど激しく動揺していた。

 電車の座席に座って、人が居る事でやっと平静を取り戻した。

 まだ、少しパニックに成った脳を落ち着かせ、何事が起こったのか反復しようとしたが、駅の駐輪場にスクーターを止めた事や改札で定期券を提示したかなども殆ど記憶から飛んでおり、思い返す事は出来なかったが、気になるのは、さっきのあれは何だったのだろう?

 (幽霊……?)

 そう思うと、さっきの恐怖がぶり返し、むしょうに誰かに知らせたかったが、考えて見ればこのような事を話せる友人などいなかった。

 とても虚しい気分に成ったが、あえて話すとすればこれから会う“ベルファイア”。

 しかし、ゲーム内では毎日のように会話していても、リアルで会う初対面の人間に幽霊らしきものを見たとは言えない。

 (いや、そもそもあれは……あれは幽霊だったのだろうか?)

 真昼間だと言うのに、あんなにも鮮明に見えるものなのだろうか……?

 (いや落ち着け、落ち着け俺、落ち着くんだ)自分を諭すように反復して正気を取り戻そうと顔を上げた。

 その時、前に座る初老の夫婦がこちらをじっと見ている事に気が付いた。

 気が付くと妙な事にこの車両に乗る全ての人が監視するような視線でこちらを見ている。

 日曜日だと言うのに車両には11人程しか乗っていないが、その全員がこちらを見ているのだ。

 その時、電車がスピードを落とし、ちょうど目的の駅に着いたので、逃げるようにホームへ降りた。

 ドアが閉まり発車する電車の窓にこちらを見送るように、さっきの車両の全員が見ている。

 (何だよこれ!!)

 そう思った時、携帯のバイブが「ぐぐ、ぐぐ」とクモゴッタ音を出して鳴り出した。

 “佐藤真央” 着信窓に表示されたのは高校の同級生、佐藤真央からだった。


                  * * *


 外の蒸し暑い空気と、ホームのむせ返るような独特の臭いに、理解できない事が立て続けに起きている中で、不安で誰でも良いから話相手が欲しかった。

 佐藤真央からの電話だと知りホームのベンチに歩きながら着信スイッチを押す。

 独特の声で佐藤真央の声が聞こえた。

 「あ……出た。この間はお疲れー」

 その時、何故か佐藤の明るい声に心の底からホットした。

 「あ・ああ……この間はどうも……」何を言って良いのか判らないので、取りあえず頭に浮かんだ返答がこれだった。

 「あの後、一人で遠距離恋愛の彼女の所にでも行ったの?皆んな盛り上がったのに。

4次会まで行ってサ、最後なんか私の家で、女子皆で雑魚寝しちゃったョ」

 妙にテンションが高く、まるでいつも話している友達と会話するように、自然に話しをしてくる。

 「ああ……そうかスマン、て言うか、彼女なんて居ませんから俺」

 「そうなの?でもサ、 そそくさ帰ったから、皆が・・」他愛も無い会話だが、何を話して良いのか混乱していたので、思わず「あ。で何の用なノョ俺に?」

 照れ臭いのも有ったが、女子と話なれしていないと言う事も有り本題に入るよう促した。

 「コワ……何か有ったでしょ?」

 ドキッとした。

 まるで今起きている事を見透かされているような、そんな気分になった。

 そんな訳はないなと思っていたが、真央は気にせずグイグイ話しをしてくる。

 「実はさ、今東京に居るの、渋谷にネ。 それで一週間こっちの姉妹大学で実習なわけ、で、折角だから飲みにでも、どうかなーとか……」何故か下心の有るような、まるですり寄る猫のような。

 そうか猫撫声とはこう言う声なのかと考えながら、しばらく「うーん」と返事を考えていたが「ああ、良いけど。でも俺の他にも東京にいる奴はいっぱい居るだろ?ホントに俺で良いの?」厄介な事に、同窓会での嘘のシナリオを丸呑みしたらしく、俺を大学生だと思っているのは間違い無かった。

 ここで断るだろうと思っていたが「あ……いいの? 本当に良いのね?」

 思わず「エ?」と声に出してしまった。

 まさか高校時代にそんな親しい訳でも無い女子から、こんなに一方的にアプローチされるとは……。おかしな方向にドンドンと転がって行く。

 「ジャ、夕方又電話するネ、行く所は任せるョ、楽しみにしてるから」そういって佐藤真央は電話を一方的に切った。

 (何だ……? 勧誘か? 金でも貸してくれとか、そんな感じの誘いなのか? おかしな事になったぞ……)

 しかし、そう思いながらも、人と話せた事でさっきからの不快な出来事から開放された気分になった。

 (佐藤に話してみよう)駅の改札に向いながらそう考え中心街へ向かい歩き始めた。


 広い通りを抜け、大型家電店の横にある狭い路地から裏道に抜けた所にベルファイアのいる店”ラジオジャンク”が有った。

 そういえば本名を聞き忘れたなと考えながら、まさか「ベルファイアさんいますか?」と聞くわけにもいかないしと思いながら店内に入る。

 かなり狭い店だが、所せましと並べられた部品は、パーツ別にキチンと陳列してある。

 奥のほうまで細長い店内の、更に奥にカウンターが見え、そちらに向かって歩き出した。

 カウンター近づくにつれ、聞きなれた音楽が流れてきた。

 そして、カウンターの周りの陳列された商品を見て息を呑んだ。

 「す……すげー!!」 思わず声に出るほど感動した。

 目の前には、普段ベルファイアと共に北の神として参加(参戦)している”ブリッツソルトライン”と言うゲーム一色の空間が広がった。

 店内の音楽はゲーム内でプレイ中に流れるBGM。 気分が高揚した。

 すると、カウンターの中かから誰かが「北の神か?」と声をかけて来た。

 見ると背の高い40前後の”オッサン”が胸の認識章に”ベルファイア”とカタカナで書かれた軍服を着て立っている。

 (う……)思わず若い店員をイメージしていたので返答に詰まった。

 相手も察したようで、「ヤー、よく来たな。同志、ビックリしただろう。こんなオッサンで。」

 「いやー本当ですね」考えていた事を見ぬかれ、そう言って笑うのがやっとだった。

 「すごいだろう。ここで売ってるのは実際にゲームで使う武器と装備。 まァライフル、手榴弾、ATMなんかは勿論エアガンだけどネ。」

 「そ、そうですか……」ゲームでは捨て駒として前線に強行突入させているベルファイア少佐を目の前にして恥ずかしさで顔が真っ赤になった。

 「らしく無いな、いつもの暴君とは思えないネ」

 そう言われて、思わず「いつもお世話になってます」と頭を下げてしまった。

 (来るんじゃ無かった。)

 そう思ったが、顔を上げお互い目を合わせた時、思わず二人ともあまりのギャップに大笑いした。

 そこで二人は急速に打ち解けた。

 しばらく所狭しと陳列された商品を手に取り、今まで幾度となく統一したシーズンの戦歴話と過酷な展開の中、絶妙なゲーム展開で11の敵国を翻弄した話で盛り上がった。

 ”ブリッツソルトライン”は戦争をテーマにした成人ゲームで、12の国に別れ、戦術を駆使して戦うゲームだ。

 実践さながらにライフル、ナイフ、戦闘兵器で戦うゲームで鮮血が飛び散り、肉が裂ける場面等、リアルすぎる描写に酷評も有るが世界中にプレーヤーがいる人気のゲームで、日本サーバーでは、北の神率いる”ノースガーディアン”が、開設から8連勝の無敵を誇るチームとして、世界中のプレーヤーが注目し尊敬する者さえいる。

 運営ゲーム会社ですらも俺達のチームには一目置いており、最近では所属する事はゲームに参加するプレーヤーの憧れで余りの多さにチームの新規入隊を制限している程だ。

 その伝説のチームメンバーは年齢差や性別、現実に抱える生活の環境等は関係なく、純粋に勝利に向かってプレイする物同士、こうして会って見れば遊びとはいえ、普段は顔が見えないだけで同じ志の人間なのだ。

 アッと言う間に1時間が経ち、パソコンのパーツも安くしてもらい、そろそろ帰ろうかと思っていた時。

 「ところで、こんな物も有るのだが、見るかい?」ベルファイヤがカウンターから銀色のBOXを持って来た。

 「それは……」

  出された箱にはP3P と書かれて有る。

 「そうさ。10人連続でナイフ系でクリアするとこれが戦利品として出て来る」

 中にはククリナイフ2丁、マチェット刀1本、折りたたみ式のクロスボウガンと矢が10本スポンジクッションに収まり、スパイ映画に出てくるような収まり方で、ゲームと全く同じ装備が入っていた。

 「これさえ有れば無敵になれる。リアルでも強くなった気分になるだろう?」

 そういってベルファイアのおっさんはそのケースと新品のノートパソコンの箱を俺に渡した。

 「こいつと、傷物の最新ノートパソコン。アンタにやるよ。」

 即座に欲しいと思ったが「いや悪いですよ、そこまでしてもらっては……。」

 「いいんだ。こいつは伝説の神に捧げる俺からの贈り物だ。変わりと言っては何だが、もし俺の言う事を聞いてくれるなら」少し躊躇していたので俺は見返りを促した。

「何でしょう?」

「ああ、こう言う事だ。もう少しゲームとは言え、”ねぎらい”を持って人と接したらどうだい?」。

 (そうきたか……)一瞬そう思ったが、何故か普段と違い生身の自分を理解し、尊敬してくれる人間に面と向かってそう言われると自然に言葉が出た。

 「はい、そう……判りました。」長い間、心の何処かでカチカチに氷付いた何かがジワリと融けた気がした。

 「それじゃ戦場で」

 「はい、有難うございます。戦場で」

 お互い携帯のメールと電話番号を交換し店を出ると辺りは薄暗くなっていた。

 (もう6時か……)

 太陽が傾き晴天の空と陸地の境目が紫色に染まりトワイライトゾーンになっている。

 今まで頑なに対人関係を敵味方で判断し生きて来た自分に気が付いた、気がした。

 同級生達は、受験戦争の敵だと思っていたし会社でもいつまでも自分から打ち解けてこない変人と見られているのに違い無かった。

 (生身の友人を作るのも良いかもな……)

 そう思い携帯の着信履歴を見ると今までナンバーだけが表示されている履歴に、ベルファイアと佐藤真央の着信者が載っている事を嬉しく思った。


                  * * *


 大型家電店の有る大道りに出て歩行者天国の真ん中を歩いている時だった。

 人ごみの中に秋葉原では珍しくないメイド服の女がこちらを見て歩いてくる。

 ゴシック調のメイド服で、顔は青白い。

 (最近は吸血鬼ブームだよな)と思いながら広い通りのその女の反対側へ向かい歩いて行った。

 だが、彼女の歩き方は遠目に見ても変だった。

 ヒョコヒョコと足を引きずり、大きめの襟には真っ赤な血がついている。

 (リアルだけれど、どこの店のメイドだろう)

だが、近づくにつれ彼女の顔が死んだ人間のように見え、引きずる足のズルズルと言う音が不気味だった。良く見ると下半身はグチャグチャに潰れており、右足以外は引き裂かれた肉の塊で地面には血がボタボタと落ち痕が付いている。

 (コイツおかし……)

 だが周りは誰も気にする者は無く、反射的に近寄ら無い方がいいと思い反対側へ歩いた時、携帯のバイブが鳴った。

 「はい……はい」一瞬目を離して着信窓を見ると佐藤からだった。

 「今、何処?」

 「ああ……秋葉原だな。お前は何処よ」

 「私も秋葉原……かな……」不安そうな答えが返って来た。

 「え? じゃ駅は解るか?」解りやすい場所を指定してやろうとそう伝えた。

 「うん、今居る所がそうかなァ」

 「よし、そこにいろよ、改札の出口で。15分ぐらいで行く」

 ふと先ほどの女が居た場所に目をやると、もうそこには彼女の姿は無かった。


 駅構内に行くと改札外の柱に寄り掛かり、迷子になった少女のように、近くを通り過ぎる人をチラチラと上目使いしながら佐藤真央はそこに立って居た。

 小走りに近づくと今にも泣きそうな顔をしていた。

 「どうした佐藤、待たせてごめんな、大丈夫か?」思わずそう声をかけた。

 「待ったョ……パパとママに、はぐれた時みたいに怖かった……」

 「は?……お前小学1年生か?」そう言うと、

 「怖かったんだもん」と本当に小学生のように頬を膨らませた。

 改めて見ると童顔で背は小さく、前回会った時は気が付かなかったが、袖の無いワンピースを着ているせいか胸が強調され大きく見えた。

 本人は気が付いていないようだが、通り過ぎる男の視線がチラチラと真央の胸を見ながらすれ違って行く。

 何となく自分の持ち物を視犯されているようでバックからジャケットを取り出し、「これ着ろ、寒いだろまだ」と渡した。

 「え、やさしーぃ、ありがとっ」そうゆうと、あどけない笑顔に戻りジャケットに袖を通しながら、

 「でも……くさいョォこれェ」

 「は?……いいから着てろ」

 とても恥ずかしかったが、気さくに話しをしてくれる真央にどんどん気持ちが開放されていく。

 人をこんなにも可愛いらしいと思ったのは初めてだった。

 「ホントズケズケ言うよなお前」思わずこちらも思った事がスラスラ口に出る。

 「そう?じゃ臭いけど……よし行くか。 ホントこれじゃぁ彼女出来ないよネェ……フフ」 とこちらに笑いかけてくるが、自分でもビックリするほど隣を歩く佐藤真央を意識してしまいどうも目をそらしてしまう。

 だが、笑って人と会話が出来る事が、妙に気持ち良かった。

 「ちょっと待て、このケース、コインロッカーに入れてくる。」

 アタッシュケースを持っている事に気が付き、このまま持ち歩くのはマズいと思った。

  携帯しているとケースの中身は銃刀法に引っかかる武器なのだ。

 「うん、私も行く」

 奥の方にコインロッカーの案内サインを見つけて小走りに歩くと、はぐれまいと真剣な顔で真央もチョコチョコ後ろに付いて来る。

 大きなトランク用のロッカーにP3パックを入れ、料金を投入し、カギを抜き取る。

 そのカギについている丸い輪を人指し指に通し、西部劇のガンマンがピースメイカー銃をくるくる廻すようにして歩きだそうとした時、真央が「昔からそれ癖だよネェ」と言って来た。

 (ん?……そうかもナ……)と思い歩きだした時、思った。

 (前にも、ここのロッカーに来たな……あれ?何で俺の癖、知ってるんだ?)

 そう思った瞬間、目眩がした。

 グルグルと辺りが回り、視界がかすみ真っ暗になった。

 そして耳の奥で誰かが何か叫んでいる。


 (真央!!真央!!誰かっ!!誰か助けて!!早く早く!!)

 女の声だった……目の前にへたり込んで、何かを抱える女が周りの逃げ惑う人だかりに向かい叫んでいる。

 抱きかかえているのは人?小さな手をした腕がだらんと人形のように垂れ下がっている。 少し向こうには、室内犬が白い毛に模様のように血を流し、地面に顔を擦り付けそこを中心に円を書きグルグル回っている。

 じきに、半分顔の無い無残な姿で路上にパタリ倒れるが、まだピクピクしている。 

 自分の手に視線を戻すと大きなククリナイフが握られている。

 反射的に、後ろを向く彼女の細く白い首の中央に、そのナイフを突きつける。

 思ったより簡単に首の奥へとすべり込むものだなと考えていると、ナイフを伝いびくびくと振動が伝わり、女は座ったまま声を出そうとしているようだが、ゲフゲフと擬音にしかならない。

 さて次にと、女の背中に左足をかけてナイフをひっこ抜くと、まるで噴水のように血が噴出し、顔に生暖かい鮮血を浴びる。

 だが気にしてはいられない。

 頭の中で”ジュリアスシーザー”の一説が響き渡る。

 (サイは振られた、皆殺しの雄叫びをあげ戦いの犬を野に放て!)

 目の前にタクシーから飛び出した中年男と二人の警察官がホルスターから拳銃を取り出そうとしながら、こちらに向かい走って来る。

 「ウワー」

 叫びながら左手でナイフの柄を握り、右手を柄の後ろに沿え勢い良く中腰で走る。(下から突き上げるように、下から突き上げるように)頭の中で反復する。

 タクシー運転手が途中まで向かって来たが、手に握るククリナイフに気づき、腰を抜かして尻餅を付きながら後ずさり背中を向けた所に、又ナイフを突きつけると綺麗に柄の部分まで入って行く。片足を掛けて引き抜こうとするが今度は抜けない。  肋骨に引っかかっているようだ。ナイフをあきらめリュックに手を伸ばし、矢と腰に下げたボウガンを手に取り……


 「ねえ……ねえってば……ねえ!!」気が付くと目の前に真央の顔が有った。

 「うわ……何だ?なんなんだ今の」

 大きな声を出したので、真央は驚いて後ろに少し飛びのいた。

 「こっちが聞きたいわヨゥ……突然尻餅付いて、何かブツブツ ボウガンがどうとか、下から上にとか……大丈夫?」

 「ああ……目眩がしたみたいだけど……」

 手には切れ味の良いナイフが、ズブズブと吸い込まれて行く感触と全身に浴びた生暖かい鮮血の感触がまだ残っていた……。

 「うぐ……」胃がひっくり返ったようになってその場に胃液を撒き散らした。

 「キャー!!大丈夫?」駆け寄った真央が背中をさすっている。

 改札から駅員が異常に気づき走って来る。人だかりが出来、目がグルグル回りだす。

 (あの時と同じ……同じだ……やめろ……やめてくれ……まだ足りない……足りないんだ俺は……俺はまだ……まだ)

 そのまま体がしびれ目の前は真っ暗になった。


 目を覚ますと佐藤真央が心配そうにこちら見ている。

 「あ……気が付いた!大丈夫?気分は?水もって来たからのんで、ビックリしたョ……それで……」

 相変わらず一方的な調子で話しかけてくる。

 「ああ……大丈夫ごめん」

 ベットに起き上がり、差し出すペットボトルを受け取りながら、「ここは?」と真央に聞く。

 「駅の医務室だョ」

 又泣きそうな顔をしながらハンカチで額を拭こうと近寄って来る。

 辺りを見渡すと保険室のようだが、消毒液の匂いに混じって、駅の構内独特の匂いと、ゴーと言う列車の通り過ぎる音が聞こえる。

 そこに、割腹のよい女性看護士がドアを開け入って来た。

 「気が付きましたね?大丈夫ですか?」優しそうな笑顔で話しかけて来る。

 「もしかして、何も食べて無いでしょう吐き出した物は胃液だけでしたよ?」

 そういえば、夜勤明けにビールとノリ便も半分食べて、寝てしまった。あれから水しか飲んでいない。

 「あ・・ええ、そうですね、すいません」

 そう言うと看護士は、「だめですよ、ちゃんと食べないと……、ほら、そこの大切な彼女が泣いてましたよ」

 思わず真央の顔を見ると顔を赤くして下を向いていた。


 なんとか歩けそうなので、真央と一緒に「ご迷惑をお掛けしました」と挨拶し駅の通用口から外に出た。

 「ねェ大丈夫?少しどこかで休んだ方が良いんじゃない?」

 歩きながら、車通りの多い交差点で信号待ちをしながら心配そうに声を掛けてくる。

 すると、自分の腹が「グー」と鳴った。

 真央は「なんだァ元気じゃない。どこかで何か食べて行きましょ。結構若い人は居るんだって。ご飯食べないで駅で倒れる人。看護士のおばさん言ってたョ。心配して損しちゃったネ。それでね……」

 歩きながら午後からの一連の出来事を頭で整理していたので真央の話は上の空だった。

 (真央に相談してみよう……)

 「ねェ……!人の話聞いて無いでしょう。」

 「ああ……悪い、あの心配掛けてごめんナ,それじゃどっかで飯食って行こう。今日はおごるよ。 佐藤には世話になったしな。」

 「えへへぇー、そりゃ、もし真央がいなかったら大変だったんだからね。後、真央でいいよ真央て呼んで。で何たべよっかなッ……」

 急に機嫌がよくなったようで、先ほどまで泣きそうな顔をしていた真央は、愛くるしい笑顔で接して来る。

 真央といると他人と一緒に居て、今まで感じた事の無い充実感を味わっていた。

 何故、高校の時、彼女とこうして話た記憶が無いのだろう。

 自分がもっと打ち解けていれば、こんな満ちたりた高校生活を送っていたのだろうかと考えながら、彼女の止まらない話しにあいづちを打ち飲食店街へと向かった。

改ページ

第6章愛する人

 消化の良い物で、歩いて行ける距離に有る店、と言う事で飲食店街の入り口に有った中華料理屋で、おかゆを注文した。

 真央は中華料理が好きで前回の同窓会もやはり地元の中華料理屋だったのもうなずけた。

 こういう場合は中国粥が一番と真央が選んでくれたお粥を食べると、本当にさっきまでとは一転、元気が回復して来た。

 そこで、「真央ビール飲もうぜ、もう大丈夫、それにちょっと相談が……飲みながら聞いて欲しい事が有ってさ……。」

 カップルでの来店と言う事で店のほうで、4人用の半個室に案内されていたので、ここで回りを気にせず午後からの出来事を相談しようと決意した。

 だが真央が真剣に聞いてくれるか、ドン引きされるかが不安だった。

 酒が入れば”酔っ払っていて”と弁解も出来ると思った。

 ビールを二杯飲み、又喋りつづける真央の話に付き合い、少し酔いが回って来たかなと思った時に話を始めた。

 アパートを出る時の室内犬を連れた女の子の事、電車内であった事、さっき駅のロッカー前で有った事。

 「気持ち悪い話ね……」真央は思いの他、真剣に聞いてくれた。

 「でェもゥ、きっと疲れていたのよ。寝不足してると普段より見える物が不快に感じたり不気味に見えたりするらしいョ、最近睡眠取ってるのぉ? こう見えて医者の卵だョ真央、へへへ」

 舌足らずでトーンの高いアニメ声の女医師に、この調子で診察される患者はどうなのだろうと考たが確かに最近、夜勤シフトだったので昼夜逆転の生活が3日続いている。

 それに仮にも医者の卵である真央が言うのだから、(そうかも知れないな……)と納得した。

 真央は納得した俺の顔を見るなり、さらに得意げに話しだした。

 「専門的、見地からするとォ大脳が眠りを感知するとォ……」

 専門用語をスラスラと並べ、空になった中ジョッキの替わりに紹興酒とバンバンジーを注文しながら10分ほど講釈が続いた。

 彼女の得意げな顔を見ながら、(そうだ気のせいだ)と考えながら、時計を見るともう11時を回っていた。

 バンバンジーと紹興酒を運んで来たチャイナドレスの店員がラストオーダーを告げ、紹興酒で最後の乾杯をした後、真央を送って行こうと「ところで、宿は何処?」と聞いた。

 すると、真央は突然下を向き両手はダラリと椅子の下に垂らし、よく聞こえない声でゴモゴモと小学生が怒られて、言い訳するように何事かを言い始めた。

 「え?何?聞こえネー」

 「……ゴモゴモ」

 「なに?……は?」

 突然顔を上げた真央は、開き直ったように「止まる所無いの!実は研修も嘘。会いたくて着ちゃったの。だから泊めて!」

  思わず頭が真っ白になった……。


 グスグスと半べそをかきながら、Tシャツの端をつまんで付いて来る真央は、家には東京の女友達の所へ行くと出て来たらしい。

 この時間ではホテルはもう取れない。

 俺も自分の部屋へ連れて行くにしても、とても女子を泊める環境では無いのである。

 「真央……ラブホで良いんだな?本当に?」

 コクリと頭を動かすだけで、何も言わない。

 ラブホテルの多い通りをすれ違う人達をチラチラ気にしながら歩くと、向こうもソソクサとしているのだが、さすがにグスグスと半泣きの女が男の後を歩く連れは、かなり目立ってはずかしかった。

 日曜日と言う事も有り何処も満室で、やっとの事チェックイン出来たのは、既に休憩料金は終わり0時を回た宿泊料金に変る時間帯だった。

 取れた部屋はどうしようも無いほど、女の子が喜びそうなお姫様チックな部屋だったが、さっきまで半ベソの真央は、その部屋を見た瞬間気に入ったようで、目に星がキラキラ輝き機嫌がよくなていた。

 二人共、酒は抜け、しらふに近いほど酔いは醒めていた。

 真央はベットに飛び乗りはしゃいでいる。 

 初めて入るラブホテル、初めて女性と一夜を共にする。

 理性を保つ事はもう限界だった。

 ベットではしゃぐ真央を後ろから抱きしめた。

 真央も「ビクン」と一瞬、体を硬直させたが、回した腕をそっと取り、俺の手を、胸に持って行った。「今日は有難う」と言うとこちらに向き直りキスをして来た。

 今まで、これほど人を愛おしく思い、そして求めた事が無かった。

 この人を独占し、何が有っても守ってやりたいと思った。

 女性とは、か細く、はかなげで、それでいて自分を優しく包み込むようで切な気に自分に答えてくれる。

 今その事に初めて気付かせてくれた女性、それが真央で本当に良かったと心から思った。

 何度目かの絶頂の後、二人はお互いのぬくもりを感じながら抱き合い、深い眠りに落ちていった。


                  * * *


 午前11時、二人はチェックアウトした後、秋葉原の近くで遅いモーニングセットを食べていた。

  恥ずかしいのか、真央は目が合うと照れた顔で笑ってくれた。

 今日も休みなので、真央を秋葉原の有名スポットに案内する事になった。

 だが、どのタイミングで、実は大学生では無いと告げようかと、機会をうかがっていたのだが、なかなか言い出せないでいた。

 喫茶店を出て、本屋で秋葉原のガイドブックを買い反対側の商店街から、人があふれる歩行者天国に向う。

 相変わらずアニメ声の真央は歩きながら、取り留めの無い事を喋りながら「そうでしょ?そうだよね?」と連発するが、こちらの意見を聞くひまもなく次の話題へ行ってしまう。

 よく回る口だと関心していると、秋葉原通りの入り口に差しかかった。

 突然、真央の携帯が鳴った。 真央は発信者を確認すると「あ、ママからだ」と言って横断歩道の真ん中で立ち止まった。

 (あれ?両親は亡くなったんじゃなかったっけ?)

 そう思いながら、真央を見つめていると後ろから声を掛けられた。

 「よう、北の神じゃねーか」振り向くと、ベルファイアのオッサンが室内犬を小脇に抱え立っていた。

 「ああ、昨日はどうも。」後に、軽く会釈をする割腹のよい女性が立っている。

 「あれ?昨日の看護士さん?」

 「ああ、昨日の若いカップルの」

 そういってベルファイアのオッサンに昨日の説明をする。

 「ほぉ……ちゃんと飯は食わネーと……だめだぜ。ああ……こっちは俺の姉さん。今日はアイドルのステージが見たいってんで、駅まで向かえに行ってこれから行く所だ。」

 看護士さんはニコニコしながら「あら、あそこで携帯してるの彼女じゃない?」そういって真央に小さく手を振る。

 真央も気が付いたらしく手を振り、会話が終わったのか携帯をバックにしまい、こちらに小走りで駆け寄って来た。

 四人で歩行者天国で閉鎖になった通りの横断歩道の上で自己紹介をし真央が犬を見て大はしゃぎしている。

 「そういや昨日、サイトには来なかったな……。危うく重要ポイント無くすとこだったぜ。やっぱり伝説の英雄様が、汚い言葉でケツ叩かネーと……」

 ふと、歩行者天国の向こうの通りを、PR用のポケットテッィシュを入れた籠を持ち、ゴシック調のメイド服を着た若い女が、凄い勢いでこちらに向かって駆けて来るのが見えた。

 その時、閉鎖された歩行者天国の反対側の通りからディーゼルエンジンの「ゴー」と言う音をさせながら、青いパネルトラックがものすごい勢いでこちらに突進してくる。

一瞬の出来事だった。

 メイド服の女を「ドン」という音と共に跳ねた。

 そのままトラックは彼女をバンパーに飲み込み、上半身が飛び出した状態で引きずりながらこちらに向かって来る。 「うわ!」と飛びのくと、犬を抱いている真央とベルファイアのオッサン、その姉の看護士さんが目の前から消えた。

 「ドカドカ、ザザー」と言う音が視界を遮ったトラックの左で聞こえ、そちらを振り向くと三人が、壊れた人形のように、手足をあり得ない方向を向かせ歩行者天国の車道に転がっていた。

 その上を飛び跳ね、トラックから飛び降りた者が「わーーーー!!」と叫びながら走って行く。

 「真央!!」そう叫んで真央に駆け寄り抱き起こす。

 だが、愛くるしい真央の顔は左半分が引きずられてように真っ赤にタダレ、ドス黒い血を恐怖で見開かれた目から垂らし、何度呼んでも返事が無い。

 首に手を当てると脈は無く、すでに絶命していた。

 言いようの無い熱いドロドロした感情が込み上げて来た……。

 少し先に警官が二人倒れている。

  手には警棒らしき物を握って、二人を中心に赤い血ダマリがどんどん広がって行く。

 かわいそうなので、真央をゆっくりアスファルトに寝かせ、ジャケットを上半身に掛けてやった。

 頬を熱いものが溢れ止まらなかった。

 心の底から怒りが込み上げ、鳥肌が立ち、髪が逆立つのがわかった。

 とっさに倒れた警官に駆け寄り、手に握る警棒を奪うと思い切り叫んでいた。

 「殺してやる!」 

 警棒を握り締め、叫びながら走る男の後ろ姿を目で追う。まだそこに見えている。

 「うらーーーーーーーー!!」

 10m程先を走る男は、腰に下げた物を手に持ち替え、こちらの雄たけびに気が付いたのか、ライフルを撃つような仕草でそれを構えた。

 「シュッ」と言う音が左耳をかすめ、そこが焼けるように熱い。 男は動揺しているようで持ていた物をこちらに投げつると、脇の路地裏に叫びながら走って行った。 辺りには老人や中年の人が倒れ、居合せた買い物客が応急手当を始めていた。 自分の向かい側から、警官が「止まりなさい!!止まれ!!」と叫んでこちらに向かって来る。 だがそれに答える訳には行かない、二人を振り切り路地を曲がると袋小路。

 逃げ場を失った男は長い物を振り回しこちらに突進してくる。左肩に男が持つ物が食い込んで来た。 又火が点くように左肩が熱くなった。 構わず右手で持った警棒を振り上げ、男の顔めがけて振り下ろした。

 警棒は逃げようとする男の後頭部を直撃し、前のめりに倒れた。

 怒りに任せ、何度も警棒を男の後頭部に振り下ろした。

 「ゴツゴツ」と鈍い音を発し辺りに男の鮮血が飛び散る。男は「ひゃぁ、ひゃぁ」と振り下ろされる度に声を上げる。 その時、後ろから何者かに取り押さえられた。

 「やめろ!!離せ!!俺は!!俺はこいつを!!」警官がバラバラと男に襲いかかり取り押さえられた。

 「落ち着け!!、落ち着け!!」と怒鳴り散らす警官に、俺も押さえ付けられたが、まだ精神が高揚し、行き場の無い怒りを男にぶつけようともがいた。

 「お前!!よくも真央を!!」

 そう叫んだ時、警官が男の髪を掴み確認のため男の顔を上げた。

 「よくも……」男の顔を見て言葉につまった……。

 頭から血を流し、目から、鼻穴から開いたままの口から、唾液と鼻水と泡を吹き失神している男。

 その男は俺だった……。

 目の前が又グラグラ歪み真っ暗になり俺は気を失った。


                  * * *

 

 辺りが明るくなり気付くと、4帖半程の部屋に居た。

 周りは白い壁で、畳の上に膝を折って座っていた。

 目の前には机が有り、文房具がキチンと揃えられ右に置かれ、目の前には、懐かしい匂いのする卵焼きがタッパーに入り置いて有る。

 しばらくすると後ろで声がした。

 「20151番、入る!!後ろ!向け!」号令に従い後ろを向き座りなおす。

 「おや、お母さんの差し入れ、食べなかったのか?」

 「はい……。このまま行かせてください」おれは晴れ晴れした気分で言った。

 「そうか、では行こうか」

 畳を降り、ドアまで行って後ろを振り返り、深く例をして長い廊下をぺたぺたとスリッパの音を響かせ歩いて行くと、保険室のような部屋へ付いた。

 鉄の扉を開け、中に入ると拘束ベットがある。

 制服警官のような格好の者が時計を気にしながら立っている。

 「では、そこに、あお向けに寝て下さい。」

 「……はい」

 仰向けに寝ると他の医者のような者に拘束帯で縛られ、「少しチクットしますよ」という。

 点滴のような針を腕の血管に差し込まれる。

 壁に取り付けられた電話が鳴る。

 「は、かしこまりました。」

 そう言うと、「では刑を執行する。前文、被告は憲法第……」

 頭がボーとなり声が水の中にいるように聞こえる。

 深く暗い湖に沈んでいくようにゆっくり辺りが暗くなる。

 妙に清々しく、全てを償えると思うと、開放間さえ感じる(母さん、親父すまん、これで死ぬのだな)そう思っていた……


 「ネェ!ネェッたら!!聞こえるでしょ!!」

 周りのゴモゴモした音に混じってはっきりと聞こえた。

 「真央!真央なのか?」

 俺は暖かい物を胸に感じながら叫んだ。

 「そうだヨ真央」頭の中からモヤが晴れたように、鮮明に意識が戻っている。

 だが、相変わらず拘束ベットの上で身動きが取れない。

 意識だけがはっきりし、だが回りは止まったように感じたがゆっくり動いているようだ。

 「どうなっているんだ真央。おれは何故ここに居るんだ。何をされているんだ。」

 そう叫ぶと、意識の中に真央の姿が見えて来た。

 「あなたは今死刑の執行を受けているのよ」

 いつもの声だが、冷たく攻めるような感じに聞こえた。

 少し間を置き真央は続けた。

 「あなたの目の前で、私達を殺した男は、あなた自身よ。」

 「……?」

 「今、貴方は全身麻酔と睡眠薬を注入した後、致死量の激毒を注入され、体が硬直して死のうとしている所なの。

 そうね……、この世界で言う走馬灯のように、貴方は色々な事を思いだしている。

 いえ、本当は貴方から抜け出そうとしている物に、貴方の経験や記憶をインプトするため、リピートされているの。 1秒を何年間のように感じる人もいるわ。」

 そう言いながら、真央の体はどんどん縮み始めた。

 「少し記憶を戻してあげましょう」そう言うと目の前に、法廷での光景が広がった。

 「被告に死刑を言い渡す。」

 そうだ……俺は大学入試に失敗し、こっちで運送会社で働いた。だが、社内でいじめに会い、そして俺の唯一の存在を許したネットのサイトが、ぐちゃぐちゃになり、失意で1週間会社を無断欠勤して、解雇されたんだ。

 それで俺は、世の中に復習するために……

 「そうよ、貴方は私とパパ、ママと私のベティ、女の人をトラックで跳ね飛ばし、それから、ナイフでボーガンで他の人達を8人も殺したのよ。」真央は少女にまで小さくなっていた。

 そして傍らには室内犬が真央に寄り添い座っていた。 後ろには、母親と父親らしき人が立ち、その後ろには、警察官やメイド服の女、老夫婦そしてベルファイアと看護士さん 。

 「そうよ、私達は貴方に、私達の感情を伝えるため、ここに(とど)まっているの。 人にはそれぞれ寿命が有るけれども、他の者に干渉された場合、つまり貴方の場合、私達を殺した罪で、同じ思いを貴方から離れる物に植えつけなければならないのよ。」

 「ちょっと待て……俺はもう死刑を執行されてる。多分地獄に行く事は覚悟してる。 だからもう償っているじゃないか……それに君は俺を……」

 「待って……。貴方が今受けてる罰は生きてる人間が、生きてる人間を裁いたと言う事であって、私達死者が行なう罰、これは別物よ!!

 生前にどんなに罪を謝罪し、悔い改めても、厚生されたと判断されても、それとこれとは違うわ!!

 自然に迎える事以外で下された、人為的死はそれを行なった者に、受けた者が、納得するまで、そう貴方が経験したように、厚生させる権利を与えられるの。

 最初、貴方は殺された人間の理不尽さや残された愛する人達の無念さを全く感じて無かったわ。

 他人の手で自分の死を迎えられる。厚生してるのでは無い。自己満足しているのよ。 

他人は殺せても自分では死ねない貴方はね。 そして私達には、謝罪をしているように上辺だけ、見せている!!」捲くし立てるように彼女は叫んだ。 

そして少し微笑みながら小さな声で「でも私達、貴方に殺された私達にはもう関係ないの……。 生きてる人のルールは今受けている。 次は私達の番。

 死刑判決が下される1年前、貴方は刑務所で反省文に「俺が死ねば全てが収まる。俺はでも死なない。ここから開放される。何故なら俺は神だから。」

 私達は貴方が書いている横で、ずっと貴方を見ていた。 ずっと11人で貴方を監視していた」

 「……許してくれ……俺は、もうお前なしでは……」

 「ダメよ!まだ私で3回目、貴方は今、徐々に人の愛する人を、愛する人と過ごす幸福を奪われる事の痛みを、感じてきている。

 でも後、7人居るの……私達が納得するまで、死者が感じる孤独と恐怖を貴方の離れて行く物に深く刻まれるまで、何度でも何回でも……それでは始めましょう。」

 そういって、白いワンピースの少女と小さな犬は背を向け、漆黒の暗闇に向かい歩き始めた。

 が、ふと振り返り「そうだわ、もう一つ。 貴方はこれが終わればやらなければいけない事が有るわ。 貴方を追い詰めた人達。 貴方が納得するまで厚生させる事。分かる? ふふ……」

 又目の前が真っ暗になる。意識は暗闇に飲まれて行く……。


                  * * *


 「昨日、秋葉原通り魔殺人の……」

 食堂のTVから流れるニュースを見ているのは3人のトラック運転手。

 「ああ……あいつ死刑で死んだってよ。」

 向かいに座ってカツどんを食べていた若者は丼を置いて

 「あの人ですよね、うちの会社を首になって事件起こしたの。ザマー無いスネ。フン」

 「ああ……気持ち悪いやつだったから、俺あいつの制服を隠してやったらさ……次の日から来なくなったんだよ。

 そんでお前、なんかあいつのやってる何だっけ……?」

 「ブログでしょ……まさかあの人、俺のやってたゲームの伝説の人だったって判ったら、こんな人が?って思っちゃって、無償に腹立って、ブログメチャメチャにしてやったッス」

「酷いなおまえら……それで、あいつはあんな事をやったんじゃねーのか?」

 「いやァ……人殺すほどの事じゃないでしょ……ネェ?それで人殺せるんなら俺100人やっちゃってると思いますョ……」

 「おいおい、人それぞれな、感じる事は違うんだよ……それで……」

 「まぁまぁ……飯食いながら説教やめてくださいよ……へへ……それより、今度行きましょうよ新しい店……」

 彼らは気が付いていない。

 彼らの横に、彼らの寿命が尽きる日を心待ちにしている者がいる。

 もちろん彼らは気が付かない。

 どんなに懺悔しようと、悔い改めようと、寿命が尽きるその瞬間を待つ。

 罪を犯したと自覚が無くとも、人の愛する者を奪った事に自覚が無くとも、 奪われた者は奪った者の傍らにいる。

 止まる者として。

終わり

 

 最近無差別に車に乗り人を引いたり、刃物で殺傷したりと言う事件が多発しています。

 他人を傷つければ、自分に返って来る。

 目には目、歯に歯を。

 批判、酷評、感想よろしくお願いします。


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[良い点] はじめまして。生吹と申します。 最近では確かにそんな事件が多いですね。改めてハッとさせられるような内容でした。
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